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コラム

コラム:欧州版シェールガス革命、ドイツビールが障壁に

現代のドイツ人は柔軟かつ懐も深い方だが、ことビールの話になると一転、頑固さが顔を見せる。ビールは8度の冷たさでなくてはならず、原材料は最高品質の水と麦芽、ホップ、酵母しか使ってはならない──。

5月24日、欧州では、英国の田園風景の美しさや、ドイツ人のビールに対するこだわりなど、いわゆる「文化遺産」が本格的なシェールガス開発の大きな障壁となるだろう。写真はビールを飲むメルケル独首相。ミュンヘンで15日撮影(2013年 ロイター/Michaela Rehle)

しかし、欧州でシェールガス採掘の可能性に熱い視線を送る政治家や企業は、厳格なビール造りを求めた1516年制定の「ビール純粋令」には構っていられないのが実情だ。

ドイツの醸造業者協会は、シェールガスを採掘する際に用いられる水圧破砕法(フラッキング)が水質を汚染し、ビールの生産を危険にさらす恐れがあると警告している。ビール業界が反発するフラッキングだが、シェールガス先進国の米国ではすでに広く使われており、脱原発にかじを切ったドイツ政府もエネルギー多角化の一環として、シェールガス開発を見据えた法案を検討している。

環境意識の高いドイツでは、フラッキングが議論を呼びやすい問題であることは間違いない。しかし、ビール業界からの抵抗は、シェールガス開発に向けた政治的なハードルをかなり引き上げることになる。

ビールはドイツにとって、単に80億ユーロ(約1兆0500億円)規模の産業というだけではない。国家のアイデンティティーの一部でもある。多くのドイツ人にとって、1980年代に経験したビール市場への外資参入は、通貨マルクの放棄より傷の深い文化的トラウマにさえなっている。

米国では、フラッキングによる環境への懸念は、シェールガスがもたらす経済的恩恵を前に脇に追いやられている。ただ欧州の採掘業者の前には、米国に比べて高い人口密度が立ちはだかっており、それがフラッキングに対する地元住民の抗議運動を招きやすくし、シェールガス開発の妨げにもなる。

欧州では、英国の田園風景の美しさや、ドイツ人のビールに対するこだわりなど、いわゆる「文化遺産」が本格的なシェールガス開発の大きな障壁となるだろう。ドイツ人は安価なガスが欲しいなら、ビールへの頑固さを脇に置く必要がある。

(24日 ロイター)

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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