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コラム

コラム:米量的緩和縮小、勝利ではなく「退却」

[6日 ロイター] ジェームズ・サフト

8月6日、FRBが9月に資産買い入れ(量的緩和)の縮小を本当に始めるとすれば、それは「退却」としか解釈のしようがない。写真は2011年6月、ワシントンのFRB本部で撮影(2013年 ロイター/Jim Bourg)

米連邦準備理事会(FRB)が9月に資産買い入れ(量的緩和)の縮小を本当に始めるとすれば、それは「退却」としか解釈のしようがない。

量的緩和縮小は「勝利」ではない。なぜなら、先週発表された7月雇用統計で最も鮮明になったように、米労働市場は力強さに欠け、質の高い雇用を創出しておらず、賃金は実際に下がり続けている。

低金利の刺激効果は疑いようもないのにコア物価上昇率の最重要指標がFRBが望ましいと考える水準から大きく下振れ、伸び率が鈍化歩調にある点からも、勝利と呼べないのは一目瞭然だ。

それでも量的緩和の縮小開始を強く主張するのは、コストとリスクに関する問題があることにつきる。資産買い入れは価格を歪め、金融市場において既におかしくなっているリスクセンサーの感度をさらに鈍らせることで有効となり、最終的にはかなりの規模でコストが大きい不適切な資本配分をもたらす。

FRBはこの点について独自の間接的な表現ながらも率直な態度を示しており、それは先週の連邦公開市場委員会(FOMC)声明にも見受けられる。「資産購入の規模、ペースと構成を決める際、委員会は経済的な目標に向けた進展状況の程度と同様に、そのような購入に伴って予測される効果とコストを適切に考慮する」というのだ。

ほとんどの複雑な金融戦略と同様に、量的緩和の効果はこれまでのところ疑問の余地があるが、そのコストは当然のこととして存在している。

米経済がFRBの雇用面の目標に向かって進展しているという主張を展開することは可能だ。7月も結局は失業率が7.6%から7.4%に下がり、恐らく来年初めに資産買い入れ停止の目安とみられている7%になる可能性は十分にある。

ところがあいにく、失業率の低下はそのかなりの部分を人口動態要因に負っていて、毎月労働人口の年齢を超えた人たちが多数市場から退出している。日本で見られるように、人口の高齢化と低成長、低インフレの継続は容易に結びつく。

そして今の米景気回復局面で質の良い雇用が生み出されているかという点に思いをめぐらせれば、勝利を宣言して家路につくべき根拠はさらに薄弱化してしまう。7月に創出された雇用の65%はパートタイム雇用で、半分以上は賃金が低い小売り、飲食店セクターがもたらした。

<市場の歪み>

ここで質の低い雇用が創出された責任を金融政策に帰することにどれだけ妥当性があるのかとの声が聞こえてきそうだ。

確かに雇用主や企業による非合理的なパニックが存在しない状況では、金融政策がより良い職を生み出すためにできることは乏しい。政府は雇用の質改善を促す手段を持つが、そうした手段は主要金利との関係はあまりなく、株価がどれほど急速に上がるかとは一層無縁だ。

実際、前回のバブルの事例からは教訓を引き出せる。当時の住宅ブームは多くの高給職を作り出したが、残念ながら超低金利などで生まれた住宅需要は偽りで、最終的には住宅市場に誘引された資本や労働力があっさりと打ち捨てられたことにより、経済に多大な傷を与えてしまった。

この種のリスクこそが、まさにわれわれが緩和縮小が適切だと思いたくなるかもしれない理由といえる。資金が最適な形で利用されるのを手助けするゆえに存在している金融市場は、リスクテーカーの失敗を常に尻拭いするようなFRBの介入に依存するようになっている。

ダラス地区連銀のフィッシャー総裁は5日の講演で「一部の市場参加者はFRBが永遠に市場を浮揚させ続けてくれるとの期待を抱いている。これが金融資産の価格形成を歪め、怠惰な分析を奨励して、深刻な資源配分の誤りの素地を作りかねない」と語った。

緩和縮小は、投資すればだれもがもうかるはずはないという事実を思い出させてくれる点で歓迎できるばかりか、現在の住宅市場で蓄積がみられるさまざまな歪みを修正するのに役立つだろう。

フィッシャー総裁が指摘するように、FRBは今、流通する米国債のうち金額ベースで5分の1を保有し、新発債の4分の1強を購入している。住宅ローン担保証券(MBS)となると、流通高の4分の1を保有して、毎月の買い入れ額は満期償還や期限前償還を差し引いた組成額よりも大きい。

9月に緩和縮小が開始されれば痛みを伴うとみられ、それ自体は決して確実ではない。だがもし実現するなら、その理由について正直になるべきだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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