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コラム:円は実り多い「資金調達通貨」、1年後ドル115円も=田中泰輔氏

2014年、為替市場の基本テーマは「強いドル」、そしてその対極のテーマとして「円キャリー」が広く定着するだろう。

12月20日、ドイツ証券・チーフ為替ストラテジストの田中泰輔氏は、2014年の為替相場動向について、ユーロが本来の下落基調に戻る一方、ドルは強さを継続し、年末には115円への円安進展もあり得ると予想。提供写真(2013年 ロイター)

米国の国内総生産(GDP)成長率は14年プラス3.2%、15年プラス3.8%と、市場の中心予想より強気に見ている。08年以来のバランスシート調整を乗り越え、自律回復メカニズムが作動し始めると、経済成長はペースを速め、持続性を発揮するものだ。

米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和(QE)縮小開始も決まった。これもドル高・円安見通しの実現にとって重要なステップである。QE縮小の前進が米国経済の回復持続の証である以上、ドル/円の一層の上昇を伴いやすい。また、FRBはQE縮小の過程で、市場の不安を鎮めるべく、ハト派的配慮を手厚く続けよう。株式・新興国市場が底固いことを確認すれば、市場は何かとリスクオンへ傾斜しやすくなる。それもドル/円の強気派を元気づける。

<円キャリーが広がる事情>

FRBはハト派的配慮の一環で、インフレ率が2%を下回る場合、失業率が6.5%を大きく下回っても、フェデラルファンド(FF)金利を現行0.0―0.25%に維持するとした。日米短期金利差は15年でもあまり広がりそうもない。ならば05―07年のように円キャリー取引は活発化せず、円安も進まないとの指摘がある。しかし、来年の円キャリーには異なる背景事情を考えている。

米国経済の回復にけん引され、世界がリスクオンに傾くとはいえ、「強いドル」をベースとする国際投資家にとって、精彩を欠く新興国通貨のどれをロング(買い持ち)にすべきか選別が難しいだろう。新興国の多くは、近年の高成長過程で広がった不均衡、高インフレ、経常赤字、社会不安がめぐり合わせ悪く、景気回復の足かせになっている。

しかし、米国経済の堅調が新興国を下支え、多少でも明るくなる時は、円安に弾みがつきやすい。リスクオンで何らかの通貨ロングを作る時、円ショート(売り持ち)を組み合わせれば、投資の期待収益を安定的・効果的に改善できる。絶対リターンを追求する国際投資家の間で、円は実り多いファンディング(調達=売り)通貨として広く活用されるだろう。

<ユーロはなぜ高い>

一方、来年のユーロは本来の下落基調に戻ると見る。今年のユーロは売られそうで売られなかった。背景には「アンダーウェイト」と「リパトリ」という2つのキーワードがある。

世界の投資家は、11―12年に繰り返された南欧債務危機を経て、ユーロ資産を本来持つべき基準量より過少(アンダーウェイト)にした。また、一連の金融危機の結果、欧州の金融機関は経営健全化を迫られ、海外資産を整理してユーロ圏へ資金還収(リパトリ)した。

12年7月、スペイン危機の際、ユーロは大量に売られ、1.20ドル台へ下落した。しかし、8月に欧州中央銀行(ECB)が南欧国債の無制限買い入れ方針を示すと、ユーロは買い戻され、13年明けに1.37ドルまで反発した。ユーロ資産を過少にしか持たない国際投資家は、ユーロ相場の回復に乗れず、投資成績も劣後してしまった。

そうなると、彼らは過少保有のユーロ資産をそれ以上売るに売れず、ユーロ相場は悪材料への感度が鈍る。さらに欧州の金融機関のリパトリによってユーロの堅調が続くと、投資家の成績は一段と劣後していった。100持つべきユーロ資産を80まで減らして割りを食った投資家が90まで買い戻そうか逡巡している、ユーロ堅調の背景にはこうした事情がある。

ユーロ高の理由をユーロ圏の貿易黒字化やデフレ化に求めるのはピントがずれている。貿易黒字化は欧州の内需悪化による輸入減、デフレは割高なユーロ下で緊縮を迫られる南欧諸国の苦境を反映する部分が大きい。「アンダーウェイト」や「リパトリ」という特殊なポジション事情がなければ、欧州からの資金流出でユーロ安になるべきところだ。

<日経平均1万9000円の前提条件>

ユーロのアンダーウェイト投資家は相場に締め上げられたままで、ユーロは高止まっている。しかし、リパトリはすでにピークを過ぎたと見る。米欧景気格差は一層鮮明となってきた。米国が金融緩和を縮小し始めた一方、ECBは緩和拡充を模索し続けよう。こうしたファンダメンタルズを反映し、ユーロ/ドルは14年末1.25ドルへの下落基調に戻ると予想する。

ドル/円は米国経済が堅調である限り上値を志向しよう。いったん自律回復過程に入った米経済の拡大は15―16年まで持続しよう。日本の消費者物価(CPI)前年比は日銀目標のプラス2.0%に届かず、異次元緩和を続ける公算だ。14年中にドル/円の上昇サイクルの終わりを示唆する兆候は現れそうもない。円安が進むほど市場の円安観が強化されうる局面であり、14年末115円と想定する。

「強いドル」に対して、円もユーロも安くなるため、ユーロ/円は140円台で一見安定するかの軌道が計算上導かれる。しかし、現実には神経質で広めのレンジで上下動が生じると見る。なお、大幅なユーロ安は世界をリスクオフに突き落としかねない一方、円安は世界がリスクオンの時に進行しやすい。円こそがファンディング通貨としてポジティブに活用しやすい。

円安は対ドル110―115円程度まで日本株高を促そう。日本株価はある程度円安と米国株高に連動する。14年にドル/円がさらに10%上昇し、米国株価が10%上昇する時、日経平均株価は1万9000円を見込む。曇天の世界経済に薄明りがじわり広がる程度でも、円安と日本株のアウトパフォーマンスによって、日本は際立って明るく見えるだろう。

*田中泰輔氏は、ドイツ証券のグローバルマクロリサーチオフィサーでチーフ為替ストラテジスト。日本長期信用銀行、クレディ・スイス、野村証券などを経て、2011年11月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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