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コラム

コラム:ECB、デフレの恐怖前に政策手段の限界露呈=サフト氏

James Saft

4月3日、ドラギECB総裁が最も恐れたことが現実となったにもかかわらず、何も手を打たないとすれば、総裁は打てる手段が乏しいと考えているのかもしれない。写真はECB本部(右)。昨年9月撮影(2014年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[3日 ロイター] -ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が最も恐れたことが現実となったにもかかわらず、何も手を打たないとすれば、総裁は打てる手段が乏しいと考えているのかもしれない。

あるいはECBの行動がもたらすコストとリスクが、潜在的な便益に見合わないと感じているのかもしれない。

そうでなければ以下のような発言と、金融政策の現状維持を決定することとの折り合いをどう付ければ良いのだろう。

「私が最も恐れたことが、ある程度現実となった。われわれの基本シナリオよりも停滞が長引くということだ」。総裁は3日のECB理事会後の記者会見でこう述べた。

停滞の長期化は、ユーロ圏全体の失業率が過去最悪だった昨年から0.2%ポイントしか下がらず、なお11.9%で高止まりしていることから一目瞭然だ。

誤解のないように言えば、ドラギ総裁が最も恐れているのは恐らくデフレだろう。デフレは経済停滞の深刻化と長期化を招く。実際、景気減速がたやすく景気後退に転じてしまう恐れもある。

さはさりながら、現実は直視する必要がある。ドラギ総裁は3月の前年比インフレ率が0.5%にとどまるという事実に直面しながら、一時的あるいは無害な要因に帰する部分が大きいと主張したがった。

総裁はインフレ率低下の原因としてエネルギー価格の下落を挙げた。おっしゃる通り。将来のエネルギー価格は予見できないとはいえ、同価格の下落がもたらし得る副作用を軽減するために金融政策を使うのは、おそまつなやり方に見える。とはいえECBのこの姿勢は過去の行動と整合的でない。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのマーク・チャンドラー氏は顧客向けリポートで次のように記した。「エネルギー価格の低下が物価下落にいかに拍車を掛けているか、あるいは物価下落を実態より大きく見せているかについて、当局者は好きなように言うことができる。ECBがコアインフレ率を目標に定めていないという事実はこの際置くとする。ECBが2008年、エネルギー価格の上昇が広範な二次的影響を及ぼし得るという理由で利上げを正当化したことにも目をつぶろう。問題は、8月末以来、コアインフレ率が一度も1%を上回っていないという事実だ。2月の生産者物価は前年比1.7%低下し、2009年末以来で最も大幅な下落率となった」

総裁は復活祭が例年よりも遅いことが、前年比での比較をゆがめてインフレ率を人為的に押し下げたとも強調した。これには一理ある。インフレ的な需要の一定程度が数週間先送りされたのだから。とはいえ、予想外のインフレ率低下の原因を、復活祭ほど知れ渡った移動祝祭日に帰するのは難しい。

<量的緩和の効果は>

ドラギ総裁はインフレ率の低下について、ある程度までは予想外かつ良くない現象であると認めた。しかしECBの見解は、インフレ率低下は一時的で無害な現象であり、そして恐らくより重要なことに、ユーロ圏経済が必要とする改革の帰結に過ぎないというもののようだ。

確かに一部は真実だが、行動を起こさないことの論拠には必ずしもならない。競争の激しいサービス分野で賃金と生活水準が下がるのはある程度避けられないのかもしれないが、その動きを少し和らげることは人道的かつ賢明な措置といえるだろう。通常の賃金と物価がマイナスに転じてしまえば、数多くの潜在的難題が持ち上がる。ユーロ圏の一部諸国では実質賃金の低下が免れないという事実を受け入れるとしてもだ。

難題の1つは、ドラギ総裁がアンカー(固定)されていると主張する予想インフレ率にある。5年後の予想インフレ率を見るなら総裁の主張は事実かもしれないが、今後数年間についてはさほど正しくない。

必要とされるデレバレッジ(債務圧縮)も、インフレ率がここまで低いと難しくなる。総裁自身もそれは認めているようだ。膨大な債務の返済を円滑化する上で、小幅なインフレほど役立つものはない。

結局、問題はデフレという病ではなく、ECBが手持ちの道具でデフレと闘えるかどうか、疑問を抱いていることかもしれない。

総裁は、量的緩和(QE)は米国の方がうまく機能すると指摘した。米経済は資本市場を土台としているため、資産価格を上昇させることが欧州よりずっと大きな効果を発揮する。銀行貸し出しへの依存度が高いユーロ圏のような経済では、社債や株価のバブルを醸成しやすく、有用性が低いだろうと説明したのだ。

ドラギ総裁は年末までに、今よりさらに大きい新たな恐怖を抱えているかもしれない。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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