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アングル:粘る景気とインフレ、23年は居心地悪い「適温相場」か

[東京 29日 ロイター] - 2023年の金融市場は、居心地の悪い「ゴルディロックス(適温相場)」になるとの見方が出ている。インフレはピークアウトしても高止まりする可能性が大きい。景気は底堅いが減速方向だ。弱い景気と高いインフレが共存する中、金利低下が限定的であれば、株高局面が到来しても、その勢いは弱くなりやすいとみられている。

 11月29日、 2023年の金融市場は、居心地の悪い「ゴルディロックス(適温相場)」になるとの見方が出ている。都内で6月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

<だらだら続くインフレと景気減速>

世界的なインフレはピークアウトする可能性が出てきたが、高止まりリスクは依然大きい。脱炭素や新型コロナウイルスの影響、世界の「分断」に伴い最適地生産が難しくなってきたという環境変化に加え、米労働市場のひっ迫状況が長引くためだ。

米アトランタ連銀が発表している粘着価格(Sticky-price)CPIは、10月にようやく伸びの拡大が止まったが、依然として約40年ぶりの水準。国際通貨基金(IMF)が10月に公表した見通しでは、23年の世界のインフレ率は6.5%と、多くの国の政策金利を上回る水準となっている。

景気は減速する見通しだが、底堅さもみせている。経済協力開発機構(OECD)が11月22日に公表した世界経済の成長率は、今年の3.1%に対し来年は2.2%。米国では景気後退も懸念されている一方、財政政策効果で家計の貯蓄が積み上がっており、マイナス成長の時期は遅く期間も短い可能性がある。

利上げ停止と底堅い景気の組み合わせは「ゴルディロックス」的なリスク選好ムードを強める可能性がある。しかし、底堅いながらも景気は減速方向。高インフレ環境が続く中では利下げに転じても幅は限定的にならざるをえない。「だらだらと景気が減速する悪い感じのゴルディロックスが続く」と、BNPパリバ証券のチーフクレジットアナリスト、中空麻奈氏は予想している。

<くすぶる円高懸念>

海外に比べ低い金利と円安の組み合わせは日本株にとって悪くない環境だ。円安には功罪両面があるが、輸出企業のウエートが大きい日本株にとっては総じてみればプラスとの見方が多い。実際、TOPIXをS&P500で割ったTS倍率は今年、上昇傾向をたどっている。

市場では、来年4月に新日銀総裁が就任しても、すぐに金融引き締めに動くとの見方は少ない。しかし、世界的な高インフレ状況が続く中では、新総裁による政策修正観測は23年中もくすぶり続ける可能性がある。

日本では、消費者物価指数(CPI)の生鮮食品およびエネルギーを除くコアコア指数の伸びが低いことが、高インフレが持続しないとの見方につながっていたが、11月の東京都区部CPIコアコア指数が前年比2.5%上昇と2%を突破。1992年10月以来の伸びとなり、日銀政策修正観測が再び盛り上がるきっかけとなった。

海外中銀が利上げ停止に動けば、その後の利下げ幅が限定的であっても、円高材料とされやすい環境になる。円高リスクは日本株のネガティブ要因だと、JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、前川将吾氏は指摘する。「長期投資家は円高による為替評価益よりも、円高による企業業績悪化を懸念しやすい」という。

<ノンバンクにリスクか>

「23年のリスクはノンバンクにありそうだ」と、シティグループ証券のチーフエコノミスト、村嶋帰一氏は指摘する。「ノンバンクを通じた波乱が、逆資産効果などを通じて粘る景気を悪化させるおそれがある」という。

11月1─2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、スタッフの金融情勢報告として、ノンバンクの資金調達に不安定化がみられると指摘された。「国内銀行の資金調達リスクは依然として低いが、プライム・マネー・マーケット・ファンド、その他の現金投資ビークル、オープンエンド型投資信託、ステーブルコインはすべて、破壊的な償還の影響を受けやすい状態が続いている」という。

暗号資産(仮想通貨)市場では今年、交換業者FTXの破綻をきっかけに、大きな資金流出がみられた。破綻は同社固有の要因との見方もあるが、インフレがなかなか下がらず、金利が高止まりする中で、これまで低金利環境の下で拡大してきたマーケットには縮小圧力がかかりやすくなっている。

市場センチメントを冷やしてきた利上げが止まれば、株式投資などは盛り上がりやすい。景気も減速方向ながら底堅さを今のところ保っている。しかし、複雑に絡み合ったマネーの流れの全貌を把握できる投資家は多くはない。2年目に入る高金利環境がもたらすリスクへの警戒が、投資家の居心地を悪くさせそうだ。

(伊賀大記編集:久保信博グラフ作成:田中志保)

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