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ECB、期間3年までの国債買い入れで合意:識者こうみる

[フランクフルト 6日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)は6日の理事会で、困難に直面しているユーロ加盟国の借り入れコストの引き下げに向け、新たな国債買い入れプログラム(OMT)の実施で合意した。同プログラムの下、流通市場で償還期間が3年までの国債を量的な限度を設けずに買い入れる。

9月6日、欧州中央銀行(ECB)は理事会で、困難に直面しているユーロ加盟国の借り入れコストの引き下げに向け、新たな国債買い入れプログラム(OMT)の実施で合意した。写真はフランクフルトで記者会見に臨むドラギ総裁。同日撮影(2012年 ロイター/Alex Domanski)

専門家の見方は以下の通り。

●国債購入にはリスク多い、ユーロは1.26ドル台どまり

<三菱東京UFJ銀行 市場企画部 チーフアナリスト 内田稔氏>

ECB(欧州中央銀行)は流通市場で償還期間が3年までの国債を量的な限度を設けずに買い入れることを決めたが、3つのポイントから危機収束にはつながらないとみている。

まず、ギリシャの問題が浮上して債務危機がくすぶり始めたころ以降のドイツDAX指数とスペイン2年物の国債価格を比較すれば、明らかにDAX指数が上がっていてスペイン2年物は下がっており、リスク資産と安全資産の値動きが完全に逆転している。国債を買うと言うと安全資産だからいいのではないかとなるが、周辺国の国債は「危険資産」と言うことができる。そうした国債を中央銀行が制限つきとは言っても、1年から3年までのものを無制限に買うと宣言したことをプラスに捉えていいかと言うとそうではない。

国債自体は2010年から今年の春先までで2000億ユーロ購入している。LTROで金融機関に出した資金のうち、1兆ユーロくらいが国債購入に回っていると思われる。間接的に持っている分を含めれば1.2兆ユーロくらいで、ECBのバランスシートの4割くらいは国債のリスクを負っているということになる。値下がりリスクのあるものをすでに4割持っていて、さらにこれを上積みしてゆくのはどうなのか。

第3には、バランスシートがき損した場合にECBやユーロの信認が問われる場面が訪れないとも限らない。日銀の場合にはETFなどの買い取りに際して国庫の引き当てを積んでおり、バランスシートが傷めばそれが取り崩されて税金が投入された形になるが、こうした仕組みを持っていない中央銀行がECBだ。

こうした点を踏まえれば、一時的には多少楽観ムードになるかもしれないが、ECBの今回の決定をもって市場が安定化に向かうということにはならないと思うし、ユーロ/ドルも1.26ドル台どまりとみている。

●リスクオンは限定的、欧州経済悪化・財政改革遅れを懸念

<みずほ証券・金融市場調査部長 三浦哲也氏>

欧州中央銀行(ECB)理事会は、新たな国債買い入れプログラム(OMT)の実施に踏み切った。その中身は、事前にリーク報道されていた内容でそれほど違和感はない。ドラギ総裁会見が始まった時点で、独国債や米国債ともすでに軟調に推移。その後、NYダウが大きく買われたわりには、金利の上昇幅は限られた。注目されたECBだが、債券需給が一変した構図までは見受けられない。

米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和第3弾(QE3)の期待があるのかもしれない。また、このOMTが実行に移され、資金調達コストを下げることができたとしても、欧州経済の改善には懐疑的な見方が広がっているのだろう。支援要請には、財政再建など厳しい条件が前提であり、経済に相当な負荷がかかることは必至だ。実体経済の悪化、財政改革の遅れという悪循環に懸念が広がりやすい。リスクオンの流れは限定的になるのではないか。

きょうの円債市場は売りが先行しそうだ。米雇用統計への警戒感が出ていることも上値を重くする要因。ただ、経済先行きへの懸念を踏まえると、市場参加者は、売りながらどのタイミングで買うかを見極める展開になるのではないか。

●安心感与える、米追加緩和につながりやすい

<いちよしアセットマネジメント 執行役員 運用部長 秋野充成氏>

欧州中央銀行(ECB)理事会による無制限の国債買い入れ策は、事前に報じられていたことではあるが、明確に決定されたことが市場に安心感を与えた。まだ12日のドイツ憲法裁判所による欧州安定メカニズム(ESM)の合憲判断や、ESMの立ち上がり具合など見極める要素があるものの、欧州危機を封じ込めるまでの時間的な猶予ができたといえよう。ECBが動いたことで来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加的な金融緩和が出やすくなるのではないか。日本株にとっては売り込まれるリスクがひとまず後退しており、安値圏にある銘柄を中心に買い戻しが見込まれる。

●優先債権者待遇の不適用は重要、懐疑論消えず

<ナイト・キャピタルのストラテジスト、ヨアン・スミス氏>

優先債権者待遇を適用しない点は重要だ。ただ、民間債権者と同等の扱いは、これまで証券市場プログラム(SMP)を通じて買い入れた債券には適用されないため、ギリシャへの対応をめぐっては依然問題が残る。

先に実施されたギリシャの債務交換では、ECBはヘアカット(債務減免)を受け入れなかった。こうした前例を踏まえると、投資家は懐疑的な見方を崩さないだろう。

短期債の利回り押し下げ効果について見極める必要があるが、ユーロ圏周辺国に対する実需筋による投資を呼び戻す上で、魅力的な提案ではない。

●OMTのIMF関与、スペインの支援要請阻む可能性

<ラボバンクの金利ストラテジスト、リチャード・マグワイヤ氏>

ラホイ首相がスペインはすでに(国際支援の)必要条件を満たしていると表明していることを踏まえると、欧州中央銀行(ECB)の債券買い入れの条件設定や監視に国際通貨基金(IMF)が関与するというのは、スペインにとって受け入れることが難しい条件が待っている可能性がある。

新国債買い取りプログラム(OMT)に感じられる「トロイカ的な存在」がスペインに支援要請を踏みとどまらせるのか。そうなれば、スペインが支援合意を受け入れるには市場の圧力が必要になるだろう。

●新しい材料見当たらず、多くは支援要請国次第

<ライルの最高投資責任者、フランソワ・サバリー氏>

昨日から目新しい材料は見当たらない。欧州安定メカニズム(ESM)を通じて支援を要請する国次第の部分が大きいということであり、スペインは用意ができているようには見えない。政治家に任される部分が依然として大きいことを意味している。ドイツはスペイン支援計画に厳しい条件を付ける可能性があり、ラホイ首相による受け入れを難しくする恐れがある。

ドイツによる反対票はECB内部の溝が埋まっておらず、ドイツがなお納得していないことを示している。

●ユーロ圏経済、一段と縮小へ

<フォレックス・ドット・コムの首席通貨ストラテジスト、エリック・ビロリア氏>

ここ2─3日の間、(国債買い入れ)プログラムに関する情報が多く伝わっており、今回(の決定)は織り込まれていたというのが全般的な印象だ。また、今年と来年のGDP伸び率予想の下方修正は、ユーロ圏(経済)が今後さらに縮小するとともに、いまだ底を打っていないことを示す。これもユーロの重しだ。

*内容を追加して再送します。

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