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コラム

コラム:米金利低下の裏に「潜在成長率低下」説、ドル上値を圧迫

[東京 29日 ロイター] - 今年の東京市場では、ドル高/円安と株高が進むという予想が年初の多数派だった。だが、ドルは101円台、日経平均.N225は1万4700円の手前で一進一退となっている。

 5月29日、円安・株高が進むという年初の市場予想がが外れた最大の要因は、米長期金利の予想外の低下だろう。台北で2010年11月撮影(2014年 ロイター/Nicky Loh)

見通しが外れた最大の要因は、米長期金利の予想外の低下だろう。CONUMDRUM(謎)とも言えるこの現象の背景には、米潜在成長率の低下を指摘する声もある。もし、そうであれば、米金利カーブは全体として下方にシフトし、対円でドルの上値を圧迫することになる。

<円安/株高進まず、米長期金利が障害に>

外為市場では、ドルは年末に110円を目指すという予想が、今年初めの多数説だった。米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)による資産購入額の減額(テーパーリング)を進め、日銀が量的質的金融緩和(QQE)を維持すれば、日米金利差の拡大(主に日米の10年国債利回りの差)を材料に、ドルは買われるはずだ──と多くの市場関係者が確信していた。

ところが、いつまでたってもドル/円は105円に接近しない。日経平均はようやく28日まで5連騰を記録するところまで盛り返してきたものの、29日も1万4700円の手前で推移。上値を力強く追っていくエネルギーが明らかに欠けている。

<株高でも上がらない謎>

市場関係者の一部は「いずれ105円を目指す」「年末の110円は動かない」と述べ、年初のポジション(自説)をロスカットする素ぶりさえ見せていないが、わたくしは大きな構造が変化しているのではないかと考えている。

その「地殻構造の変化」の兆しを端的に示しているのが、米長期金利の動向だ。10年米長期国債利回りUS10YT=RRは28日の取引終盤に2.43%台と約11カ月ぶりの低水準となった。

米株が最高値圏で推移しているのに、米国債に資金が入り続けるのは、教科書的には「首をかしげる」現象だ。ましてFRBのテーパーリングが粛々と進む中での米長期金利の低下は、CONUMDRUM(謎)と言えるだろう。

<潜在成長率の低下ほのめかしたNY連銀総裁>

この謎を解くカギとして、米国内で浮上しているのが「潜在成長率低下」説だ。一部の機関投資家は、潜在成長率が低下しているため、FF金利はFRBが金融政策を中立に戻した時に、従来の想定の4%から2%へと大幅に下がるとの見通しを示している。

そこまで大幅に低下しなくても、潜在成長率が下がっているため、FFレートだけでなく、米市場における金利曲線が全般に下方シフトしているのではないか、との推論が従来になく力を得ている。

FRBは公式見解としては、潜在成長率の低下を認めていない。だが、米市場では、20日にダドリーニューヨーク連銀総裁が、今後予想される利上げのペースは比較的緩やかであり、短期金利の長期的な均衡金利に関して見直しが進んでいるとの見解を示したことに注目が集まっている。

また、バーナンキ氏がFRB議長退任後、ヘッジファンド主催のイベントであいさつし、FF金利はかなり長い期間にわたって4%に届かないと発言したという情報が流れ、市場関係者の関心を集めていたという。

三菱東京UFJ銀行・シニアエコノミスト、鈴木敏之氏は「ダドリー総裁の発言を受け、FF金利の中立水準の低下や、その背景にある潜在成長率の低下に関し、やはりそのことは否定できなくなってきている、との見方が強まった」と指摘している。

もし、潜在成長率の低下仮説が現実を説明していることになれば、米国の成長率は上下の波を伴いながら下降トレンドを形成し、米長期金利も上がりづらい地合いが長期化する可能性が高まる。

その結果、対円でのドルは上値が抑えられ、長期間にわたって105円が事実上の天井を形成する可能性が高まるだろう。2013年中に高まった円安を期待した海外勢の日本株買いというルートは、円安が進展しないため、機能しないことになると予想される。

足元で展開されている101-102円台でのドルこう着や、1万5000円をなかなか回復できない日経平均の足踏みも、米潜在成長率の低下仮説で一応の説明はできる。

<日中でも起きている潜在成長率の低下>

ただ、潜在成長率を低下させている大きな要因は何か、という問題に関しては、諸説あって今のところ、明確な見方はないようだ。三菱東京UFJ銀の鈴木氏は、米国のベビーブーマー世代の引退など人口問題を挙げる見方があると指摘する。

この潜在成長率の低下問題は、米国にとどまらないのが現下の世界経済の特徴ではないか、と私は指摘したい。中国でも成長率の伸び悩みが指摘されているが、工業化の過程で農業部門の余剰人口がなくなる「ルイスの転換点」を迎え、潜在成長率が非連続に低下しているとの見方が出ている。

もし、中国の成長率が政府目標の7.5%を大幅に割り込むようになれば、中国国内の諸問題が表面化するだけでなく、中国需要に依存してきた世界経済にも大きな影響を与えることになる。

日本でも潜在成長率は低下の一途をたどり、直近では0.2%を切っている可能性があり、それが急速な需給ギャップの改善と予想よりも早い物価上昇となって表れ出している。

米中日の経済が、構造的に変化しているのであれば、これまでの前提が大きく崩れることを想定せざるを得ない。足元での為替や長期金利の動向は、そのような懸念が現実化しつつある「予兆」であると考える。

●背景となるニュース

・米金融・債券市場=指標10年債利回り11カ月ぶり低水準、独連邦債に追随

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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