for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

物価上昇モメンタム維持のため予防的に追加緩和=黒田日銀総裁

[東京 31日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は、昨年4月の量的・質的緩和(QQE)導入後初の政策変更を決めた31日の金融政策決定会合後の記者会見で、原油価格下落による物価下押しが人々の物価観に影響を与えかねず、物価上昇の「モメンタムを維持するため」、追加緩和に踏み切ったと説明した。

 10月31日、日銀の黒田総裁は、追加緩和を決定した金融政策決定会合後の記者会見で、物価安定目標の早期実現を確かなものにするため、量的・質的金融緩和の拡大を決定したことを明らかにした(2014年 ロイター/Issei Kato)

追加緩和は「予防的」なもので、9人の政策委員の議論の中で提案されたと述べた。

今回の追加緩和は、多くの市場関係者にとって想定外のサプライズだった。黒田総裁は、このタイミングで追加緩和を決めた理由として、日本は米国のように人々の物価観が安定しておらず、「実際の物価上昇率が伸び悩めば、予想物価上昇率(物価観)が好転するモメンタムも弱まる可能性」があるためと説明。「企業の価格設定行動の変化の兆しを止めてはならない」、「今がデフレ脱却の正念場、クリティカル・モーメント」と強調した。

「物価が将来(目標の)2%になると言うだけでは、デフレマインド転換に良い影響を与えない」と指摘、 2%実現のため「できることは何でもやる」と強調した。

<サプライズ意図していない>

想定外であった理由の背景として、黒田総裁が国会答弁などで、繰り返し物価が想定通りに上昇していくとの「強気」の答弁を繰り返したのも一因。さらに、9人の政策委員中4人が反対を表明したのも今回の追加緩和の特徴だ。

市場へのサプライズについて総裁は「意図していない」とし、「市場とのコミュニケーションに問題があるとは思っていない」と述べた。

追加緩和は総裁提案か、との質問に対して、黒田総裁は議事要旨公表までコメントできないと述べたうえで、同日公表した2016年度までの経済・物価見通しを示す「展望リポート(経済・物価情勢の展望)の議論のなかで、委員から提案され執行部が提案、議論した」と述べるにとどめた。追加緩和の是非については「必要か、適切かで意見が分かれた」が、「基本的に、物価の下押しリスクがありうるとの認識は広く共有されたのではないか」との見方を示した。

<2年程度「幅のある概念」>

物価上昇率が目標である2%に達成する時期は、追加緩和の効果を織り込んだうえで、従来通り2015年度を中心とする時期とした。昨年4月の量的・質的緩和導入時に打ち出した「2年程度を念頭にできるだけ早期に達成する考えは変わらない」とした。

もっとも、達成時期について昨年4月時点では14─15年度の後半としていたが、今はやや後ずれしていることを認め、「2年程度とは幅のある概念」と説明した。

会見では、追加緩和による長期国債とETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)の増額を「30兆」、「3倍」と強調されたフリップが使われたが、「3という字は特に意識していない。プレゼンテーションが目的」とした。

物価が見通しより下振れれば「ちゅうちょなく政策を調整する、そうした余地は依然としてある」としたが、「今のところ、さらに何かしないといけないとは思っていない」とも述べた。また、さらなる追加緩和を迫られる際、「今の時点でどのような政策の選択肢があるか申し上げる段階にない」とした。

<円安と商品市況下落、相殺される>

米金融緩和の縮小でドル高/円安が進みやすい基調での追加緩和が、過度な円安をもたらす懸念に対しては「これまでの円安は日本経済全体にはマイナスでなかった」と指摘。円安が「輸出企業などにはプラスだが、非製造業や中小企業にはマイナスの影響が及びうる」ものの、「円安と商品市況の下落が、かなりの程度相殺される」と述べた。

今週、米連邦準備理事会(FRB)がリーマン・ショック以来の量的緩和の事実上の終了を決めたことは、追加緩和を決めるうえで「まったく意識していない」とした

その上で「一般論として金融政策の違いは、他の条件が一定なら為替に影響する」ものの、日銀は「為替を目標に政策運営していない」と公式見解を述べた。

今回の政策変更では、足元マイナス金利が定着していた短期国債の買い入れが減少するが、「マイナス金利は強力な緩和効果の表れ、特に問題ない」とした。

買い入れる長期国債の平均年限を7年から最長10年に延ばしたのは「利回り曲線(イールドカーブ)全体の低下を促すため」と説明した。

<GPIF関係ない、消費増税「政府が決定すること」>

31日は、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用比率に占める国債の引き下げと株式の引き上げを柱とする運用改革を発表。これに平仄(ひょうそく)を合わせて日銀が国債買い入れの増額を柱とする追加緩和に踏み切ったとの観測があるが、黒田総裁は「GPIFの投資政策と直接関係はない」とした。

安倍晋三首相が12月にも決定する来年10月の消費再増税と今回の追加緩和の関連について「消費増税は政府が決定すること、私どもが関与するところでない」と答えた。これまで総裁は政府に対して予定通りの消費増税を期待すると解釈可能な発言を繰り返していたが、トーンダウンした。

*内容を追加します。

竹本能文、伊藤純夫 編集:田中志保

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up