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日本にも米国の「モメンタム株」売り波及、ヘッジファンドが背後に

[東京 8日 ロイター] -日本株が大幅続落となっている背景にはヘッジファンドの売りがあるとみられている。一部のバイオ株やSNS(交流サイト)株など、米国で「モメンタム株」と呼ばれる銘柄への売りが日本にも波及しているという。

4月8日、日本株が大幅続落となっている背景にはヘッジファンドの売りがあるとみられている。写真は東京証券取引所近くで1月撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

一部の新興国株が買われるなど、世界中がリスクオフに傾いているわけではないが、海外短期筋が5月の中間決算を前に利益確定を進めているとの見方が多い。

<勢いを失ったモメンタム株>

「モメンタム株」とは文字通り、値動きに「勢い」がある銘柄群を指す。業績拡大期待などを材料に、投資家の人気が集中。予想株価収益率(PER)などバリュエーション面は二の次となり、割高な水準までに買われることが多い。日本で言えば「材料株」にあたる。米株市場ではバイオや交流サイト(SNS)など一部銘柄が前月までダウなど指数を大きく上回る上昇を続けていたが、足元で株価が急落。米株の変調につながっている。

ネットフリックスNFLX.Oは米国のオンライン動画配信大手。刑務所を舞台にしたドラマ「オレンジ・イズ・ザ・ニュー・ブラック」などヒットを飛ばし、加入者が増加している。2013年初めごろは100ドル以下だった株価は、業績拡大期待を背景に今年3月6日に458ドルを付けるなど4倍以上も上昇したが、7日の市場では338ドルまで急落した。

2012年5月に上場したSNS大手のフェイスブックFB.Oの株価は2013年8月ごろから上昇基調に入った。20ドル台だった株価は今年3月11日に72ドルまで上昇したが、足元は56ドル台まで落ち込んでいる。米オンライン旅行代理店大手のプライスラインPCLN.Oや電気自動車大手テスラ・モーターズTSLA.Oなども、これまでの上昇基調に変調を来している銘柄だ。

1990年代後半から2000年代初頭にかけて米株市場で発生したITバブルやバイオ株バブルでは、「バイオ」や「ドットコム」という名前さえ会社名に付いていれば、買いが殺到するケースが散見されるなど業績や財務内容を無視する展開だった。しかし、今回はビジネスモデルがしっかりしている銘柄が多く、成長期待も大きい。売り材料と指摘されるニュースもあるが、株価下落を正当化する後付け的な材料とみられている。

足元で起きているのは、バリュエーションの調整だ。ネットフリックスの株価は下がったとはいえ、PERは182倍。フェイスブックのPERもまだ86倍ある。業績拡大期待が大きく、成長段階の企業なので利益は小さく、バリュエーションは大きくなりがちだ。しかし、182年分、86年分の利益を現時点の株価に織り込めると楽観するには、株価に「勢い」がないと難しい。

<日本株は昨年の急上昇で「モメンタム」化>

そのバリュエーションの調整が起きた理由については、見方が分かれている。米国のテーパリング(量的緩和縮小)開始で過剰流動性が縮小することを見越して、ヘッジファンドなどがポジションを巻き戻している可能性もある。ただ、テーパリングが継続されている背景には米経済の回復があり、マクロ面ではポジティブな側面もあるため、「テーパリングきっかけ説」を疑問視する声もある。

有力なのは中間決算を控えたヘッジファンドによる「利益確定説」だ。一部のヘッジファンドは5月に中間決算を迎える。時期的にはやや早いが、「勢い」を失ったモメンタム株を売って利益を確保している可能性があるという。市場では「株価が下落したとはいえ、2年近く上昇を続けてきたモメンタム株にはまだ利益が乗っている。株価に勢いがなくなったことで中間決算に向けてポジションを閉じ始めているようだ」(準大手証券)との指摘が聞かれている。

足元の日本株の下落は、このモメンタム株への売りが日本株にも波及している可能性が大きい。バリュエーションでは、日経平均のPERは14倍台と、歴史的に見て割高感どころか割安感さえ漂う水準だ。ただ、昨年、日経平均は57%と先進国で断トツの上昇率を記録。その「勢い」が今年に入ってなくなったことで、利益確定の対象としてみられやすくなっているという。

昨年、海外投資家は現物株と先物合計で約15兆6500億円を買い越した。今年に入って約3兆2000億円売り越しているが、まだ昨年の5分の1にすぎない。昨年の買い越しの内訳は明らかになっていないが、半分以上がヘッジファンドなど短期筋の買いとみられている。長期投資家はいったん買いに転じれば、3─5年のタームで買ってくれるが、短期筋の変わり身は速い。

「ITバブル崩壊などを経験したファンドマネージャーはモメンタム(勢い)を失った株がどうなるかを知っている。持ち高を縮小する動きが一斉に広がり、それが日本株にも波及している。海外投資家の昨年の買いが大きかっただけに警戒が必要だ」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は指摘している。

<世界的なリスクオフには至らず>

ただ、世界的にリスクオフの波が広がっているわけではない。欧州株は、7日は米国株のあおりを受け下落したが、前週4日の市場ではしっかりだった。金価格は上昇せず、ブラジルや中国など一部の新興国の株価や通貨も堅調だ。投資家の不安心理の度合いを示すVIX指数.VIXが上昇したといっても15ポイント程度と2月以降のレンジ内におさまっている。

ダウやS&Pなど過去最高値圏にあった米株は、いったんピークアウトの可能性がある。ただ、モメンタム株はやや異常なバリュエーションを示していたとはいえ、S&P500の予想PERは15倍程度と、歴史的にみて米株全体がそれほど割高な水準にあるわけではない。

3月米雇用統計でみられたように米経済は寒波の影響を脱し、着実な回復をみせている。早期の米利上げには警戒感もあるが、経済の順調な成長との引き換えだ。米企業業績見通しもやや慎重だが、米景気が上向いて来れば、徐々に改善していくことが見込まれる。

日本には政策期待もある。「消費増税の影響をカバーするため、また来年の10%への消費税引き上げのためにも、景気が腰折れそうになれば後押しするような政策が打ち出されるとの期待が残っている」(大手証券トレーダー)という。日銀追加緩和など政策の後押しがあれば、足の速い短期筋はすぐに戻ってくるとの見方も多い。

(伊賀大記 編集:北松克朗)

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