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コラム:ドル円は秋に「こう着相場」脱却か=熊野英生氏

[東京 7日] - ドル円レートはずっとこう着状態である。これまでは「今からは円安だ」「いや円高だ」と予想を立てても、結果的に狭いレンジで横ばいを続けていた。だから、先行きの為替予想に対して、なかなか説得力を感じてもらえなかったのが実情である。

 8月7日、第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は、ドル円相場の均衡が崩れるとすれば、11月初めに米中間選挙が行われる前後の可能性があると指摘。提供写真(2014年 ロイター)

そこで、本稿では「円安か、円高か」という議論はやめて、いつ今のこう着状態が変化するのかを検討してみることとする。

<こう着相場をめぐる「3つの仮説」>

まず、なぜドル円レートはこう着状態なのかという仮説を3つほど示してみる。

ひとつの仮説は、米長期金利が大きく動かずに低位安定していることである。目先、10月に米連邦準備理事会(FRB)のテーパリング(量的緩和縮小)が完了するとして、その次の一手は利上げになる。ただし、インフレ懸念が台頭しない限りは、FRBは2015年前半の早期利上げには動かないだろう。見通しとしては、15年8月以降に利上げを開始して、極めて緩慢なペースでフェデラルファンド(FF)レートを0.25%ずつ上げていくとみられる。

そうした慎重姿勢を反映して、米長期金利は上がらず、2―5年のイールドカーブも低位にあるのだろう。米金利が低位安定しているので、日米金利差も動かず、ドル円レートも横ばいなのだろう。仮に、これからインフレ懸念が強まって、FRBがそれに強い関心を示すようになったとき、こう着状態は崩れるだろう。

次の仮説は、消費税のせいである。日本経済の成長率が、駆け込み需要と反動減によって変動するとき、目先の景気変動は消費税要因によって説明されやすい。つまり、消費税以外の景気実勢は、反動減が収まるまではみえにくいと万人が思うから、それまでは様子見ということになる。

消費税増税の影響力が減衰していくのは、7―9月の国内総生産(GDP)一次速報値が発表される10月中旬頃である。それ以降は、日本のファンダメンタルズは見通しやすくなって、指標の変化がより機敏に為替変動に織り込まれることになろう。

三番目は、日銀が追加緩和に動かないことである。これまで日銀の黒田総裁が、14年4月以降のどこかで追加緩和に打って出るのではないかという観測が強かった。しかし、そうした観測を抱いていた人にとって、黒田総裁の金融政策は予想を裏切るものになった。

13年4月のような金融緩和が行われないことで、円安予想に歯止めがかかった。消費税の影響が想定の範囲内だという見方が強まると、円安予想が後退し、米経済が拡大しているにもかかわらず、ドル円は101―104円の狭いレンジで推移したと考えられる。

<早期に均衡が崩れるシナリオ>

早期に崩れるとすれば、11月初めに米中間選挙が行われる前後ではないか。オバマ大統領は、中間選挙を終えれば、もう少し自分なりの裁量を政策運営に働かせることができるのではないか(それまでTPP交渉もこう着か)。

この時期は10月末にFRBがテーパリングを完了させて、多くの人が15年のどこでゼロ金利解除があるかを強く気にすることになる。過去のドル円の動きを振り返ると、11月前後に動くことが多かった。大統領選挙のあった12年は円安に振れた。10年の中間選挙もいくらか円安に動いた。

日本の要因に注目すると、安倍政権が15年10月の消費税増税を最終判断するのが14年12月初めだとみられている。11月末は、消費税に関わる政府関係者の発言が相次ぐと予想される。もちろん、この時期に消費税要因が一巡して、経済指標の実勢が見極めやすくなるということも重要だ。

なお、今のところ、景気動向は消費税の反動減が尾を引くと同時に、日本企業の輸出が不振である。このまま低迷が続くとはみていないが、消費税増税に消極的な人々が増税反対論を強調しやすい情勢である。万一、15年の消費税増税が先送り・中止になる場合には、ドル円は円高となろう。日本の長期金利上昇が予想され、日米金利差が縮小するという観測が強まるからだ。

目先は、8月上旬から3カ月先までは、ドル101―104円のレンジで推移するとしても、3カ月以降には日米の双方で、さらに先の経済政策の流れを決めるようなイベントが待ち構えている。長いこう着状態は、永遠に続くわけではない。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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