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アングル:米企業「節税狙いの」海外買収ブーム、今後は鎮静化へ

[ニューヨーク 25日 ロイター] - 米国企業が税率の低い国のライバル企業を買収して本拠地を移す「インバージョン」と呼ばれる動きについて、企業合併・買収(M&A)に関する助言業務を手掛けている銀行家や法律家の間では、今後はブームが鎮静化する可能性があるという見方が出ている。

 8月25日、米バーガーキングが、カナダのティム・ホートンズの買収へ向け協議を行っていることが24日明らかになったが、銀行家や法律家は、同様のディールが今後も続くことを示す兆候だとみるべきではないと指摘する。ニューヨークで撮影(2014年 ロイター/Carlo Allegri)

今年はこれまでにインバージョンのディールが9件成立し、単年度の件数として過去最多となった。24日には米ファストフードチェーンのバーガーキング・ワールドワイドBKW.Nがコーヒー・ドーナツ・チェーンを展開するカナダのティム・ホートンズTHI.TOの買収へ向け協議を行っていることが明らかになった。

ただ銀行家や法律家はこの案件について、同様のディールが今後も多数続くことを示す兆候だとみるべきではないと指摘。彼らは、節税効果を主目的として外国のライバル企業買収を検討している企業は(1)買収価格の上昇(2)煩わしい管理業務(3)米政府の取り締まり強化をめぐる恐れ──によって買収への意欲が次第に低下すると予想している。

米国では11月の中間選挙を控え、インバージョンを厳しく取り締まる政治的圧力が強まっている。オバマ政権はここ数週間、インバージョンを従来より困難にするとともに、インバージョンの効果をより少なくする手法を探っていると表明している。

こうした米政界の反発によりインバージョンから身を引いた企業もあれば、買収の標的となる企業があまりにも割高となったために断念した企業もある。

グッドウィン・プロクター(ボストン)のパートナー、ジョー・ジョンソン氏は「インバージョンを見据えていた少数の顧客は、もはや検討していない」と指摘。「人々は実際、数字を一段と重視しており、案件が『道理にかなうものか。すべてひっくるめて見て本当にそれだけの価値があるものか』と問い掛けている」と話した。

米ドラッグストアチェーン大手ウォルグリーンWAG.Nはこの数週間で、本社を欧州へ移転させる計画を断念した。一方で米製薬大手メルクMRK.Nやバイオ医薬品大手バイオジェン・アイデックBIIB.Oはインバーションを主目的とするディールには反対する姿勢を示している。

投資銀行ピーター・J・ソロモンのマネジングディレクター、マーク・ボイドマン氏は「インバージョンを追い求める際の障壁が高くなった」と述べた。

<外国資金>

M&Aに携わる関係者の話では、多国籍企業は外国で稼ぎ出した利益を米内国歳入庁(IRS)の手が届かない所に温存しようとしているため、インバージョンの動きは減速しながらも、完全に止まってしまうことはなさそうだ。

例えば2013年の開示資料によると、英医薬品大手アストラゼネカAZN.L買収によるインバージョンを試みていた米ファイザーPFE.Nは、手元資金総額の80%に相当する約270億ドルの現金を外国で保有している。米医薬品大手アボット・ラボラトリーズABT.Nの欧州のジェネリック(後発医薬品)事業を53億ドルで買収することでオランダへの本社移転を進めている米マイランMYL.Oは、現金の93%を米国外で保有している。

米議会は2004年、多国籍企業が本国に送金した外国での利益への税率を一時的に5.25%に抑える法律を成立させた。2009年にも同様の法案が提出されたが、米財務省が多額の歳入を失ってしまうとの批判から、法案は上院を通過できなかった。

インバージョンを検討している企業は、外国の資金を本国に送金した場合に現行税率の35%が適用されずに済むような包括的な税制改革に米政府が踏み切るかどうかを見定めようとしている。このことが、インバージョンを検討する一部の企業に再考を迫っているのだ。

ある投資銀行の幹部は、インバージョンを行えば「国家の敵のようになってしまう」リスクを冒しながら、「効果を享受できる期間が2年しかなかったら、どうなるだろう」と問い掛けた。

<割高な買収標的>

一方、税率の低い国において買収の標的となる可能性のある企業は、いずれかの企業によって買収されることになるとの観測から株価が押し上げられており、買収価格は上昇している。

買収の標的になるとみられている欧州を拠点とする企業の株価は、ジャズ・ファーマシューティカルズJAZZ.Oが年初来で27%上昇、アストラゼネカAZN.Lは24%値上がりし、いずれも伸び率は医薬品株指数の11%を大きく上回っている。

この結果、インバージョンは割高となっている。トムソン・ロイターのデータによると、今年の企業買収では買い手側は平均で標的企業の利払い・税・償却前利益(EBITDA)の13倍弱の費用を支払っている。これに対しインバージョンの案件では米バイオ医薬品大手アブビーがアイルランドの同業シャイアーの買収でEBITDAの24倍を支払い、米医療機器大手メドトロニックはアイルランドの手術関連製品メーカー、コビディエンの買収にEBITDAの14.3倍を費やしている。

ある大手ヘルスケア関連企業の取締役は「これらの案件は大いにもてはやされたため、価格がそれに合わせて調整してしまった。大方の場合、それだけの価値はないのに」と話した。

一方、インバージョンを実施した場合、取締役会を外国で開くことに伴う問題を指摘する声も聞かれる。

法律事務所シンプソン・サッチャー・アンド・バートレットのパートナー、マリオ・ポンス氏は、どこかの外国で四半期ごとに取締役会の予定を立てるだけなら簡単なように聞こえるが、「仮にM&Aや物言う投資家への対応を迫られるような状況に陥れば、頻繁に取締役会を開かざるを得ない。これは管理理業務上の負担になる可能性がある」と述べた。

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