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コラム:円売り「主役」交代、ドル127円予想は健在=鈴木健吾氏

[東京 6日] - 約2年前の2012年末、筆者は為替相場に関する中長期の基本ビューとして、「円が売られやすい状況が続く」とのメインシナリオを提示し、その理由として、1)円売りフローの増加、2)政府・日銀の政策、3)米国をはじめとする海外経済の復活、の3点を挙げた。

 3月6日、みずほ証券・チーフFXストラテジストの鈴木健吾氏は、貿易赤字から年金基金への円売りフローの主役交代は今年後半の1ドル=127―130円シナリオの重要な根拠だと指摘。提供写真(2015年 ロイター)

実際、恒常的にフォローしている12通貨との比較のなかで、円は2013年に南アフリカランドに次いで弱い通貨となり、昨年は最も弱い通貨となっている。そして、前述した3つの理由は引き続き有効であり、今年も円が売られやすい状況が継続すると考えている。

2点目の政策に関しては、「2015年度を中心とした時期に消費者物価を2%にする」との公約を掲げる日銀が年後半にも追加緩和に追い込まれるとの見方が円安バイアスにつながると予想している。また、3点目に関しても景気回復を背景に米連邦準備理事会(FRB)が6月か9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み込むとの見方が市場のコンセンサスとなっており、実際にドル買いからの円売りを誘発している。

一方で、1点目のフローとしての円安圧力も継続中で、今後も円安の原動力となるだろう。だが、その内容に目を向けると、昨年後半以降、円売りフローの主役交代が進んでいる。

<貿易収支から年金基金へバトンタッチ>

そもそも、昨年半ばにかけて円売りを支えてきたフローの主役が貿易赤字だった。2010年まで30年以上にわたり円高要因として働いてきた大幅な貿易黒字が、11年の東日本大震災後の原発停止による化石燃料輸入の増加などをきっかけに赤字に転換。その後、赤字額は毎年増加の一途をたどり、昨年は12.8兆円に達するなど、3年連続で過去最大の赤字を更新した。

しかし、昨年6月には1バレル=105ドルを上回っていた原油価格が今年1月には一時45ドルを下回る水準に下落したことなどから、1月の貿易赤字は、金額こそ1兆円を上回ったものの、前年同月比では赤字額が57.9%減と昨年の4割程度の水準に激減した。

今後も原油価格が低位横ばいを続けるとみられることや、円安を背景とした輸出の増加などにより、単月ベースでの黒字化を含め、今年の貿易赤字額は昨年に比べ劇的に減少する可能性が高いとみている。年間のトータルでは赤字が継続する可能性が大きいと考えていることから、「円高要因」とまでは言えないものの「円安要因の減少」となるだろう。

こうしたなか、昨年終盤以降、貿易収支に代わり新たな円売りフローの主役として注目されているのが、昨年10月末に資産構成割合(ポートフォリオ)を変更した年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など年金のフローだ。

2月27日にGPIFが公表した2014年10―12月期の運用実績によれば、この間、ポートフォリオにおける国内債券の割合を5.26%減少させている。12月末時点の同基金の運用資産額は約137兆円であることから、7兆円ほど国内債券を売却した計算となる。その代わり、国内株式を約2%(約2.7兆円)、外国債券を約1.3%(約1.8兆円)、外国株式を約2.7%(約3.6兆円)増加させた。外国債券と外国株式合計で約5.4兆円の円売り圧力が生じた計算だ。

GPIFが最終的な目標とする基本ポートフォリオの中心値までには、国内債券をあと8%強(約11兆円)減少させ、外国債券を約1.9%(約2.5兆円)、外国株式を約5.4%(約7.3兆円)増加させる必要がある。昨年10―12月期とほぼ同様のペースでこれが進むのであれば、年内にもこのような調整が終わる可能性が高く、外国債券・株式合計で約10兆円の円売りフローが生み出される計算となる。

加えて、GPIFは公的年金資金運用の代表的存在であることから、その他の年金基金のポートフォリオもこれに追随すると考えられる。例えば、国家公務員共済組合連合会(KKR)や地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団のほか、地方自治体が独自に運用する各種年金などだ。これらは合計で50兆円を上回るとされており、実際にはこのような資金がGPIFの後追いをすることでプラスアルファの円売りフローが追加されるとみられる。GPIFとあわせて、その規模は15兆円程度を見込んでいる。

貿易赤字は2013年が約11.4兆円、昨年が約12.8兆円規模。前述の通り今年は原油安などによって大幅に減少する可能性があるが、年金を通じた円売りフローがこれに代わって円安圧力をかけ続けるだろう。

今年に入りドル円相場が116円台から120円台といったレンジでのもみ合いが続くなか、いつ相場がバイアスを持って動き始めるかを予想するうえで、「FRBの利上げ」や「日銀の追加緩和」といったイベントのタイミングに焦点が当たりやすい状況が続いている。

しかし一方で、GPIFなどを主役とする、淡々とした円売りフローの継続がドル円の下値を支える重要な要因となっており、年後半に1ドル=127―130円程度への円安が進むというメインシナリオの重要な根拠となっている。

*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。明治大学経営学修士。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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