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コラム:ドル下落は「円売り・外貨買い」の好機か=亀岡裕次氏

[東京 30日] - 3月17―18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)直後に為替市場では二つの変化が起きた。一つはドル高からドル安への転換、もう一つは円高から円安への転換である。

 3月30日、大和証券・チーフ為替アナリストの亀岡裕次氏は、米利上げ期待が後退してドル高の勢いが衰えたときこそ、幅広い通貨に対する円安進行をにらんだ「円売り・外貨買い」の好機だと分析。提供写真(2015年 ロイター)

FOMC声明から「(低金利政策に)忍耐強くいられる」との文言が削除されて6月利上げへの道が開かれたことよりも、米国の景況判断、先行きの成長率、インフレ率、政策金利見通しがいずれも下方修正されたことが、早期利上げ期待の後退とドル安を招いた。また、そのことが米国や新興国などの経済への懸念を和らげると同時に、世界的な株高、商品高や円安を招いた。

ただし、円安よりもドル安が優勢だったため、ドル円は121円程度から一時118.33円まで下落した(3月30日現在では119円台)。

<実効為替のドル安傾向は当面継続へ>

FOMC前は6月利上げと9月利上げの見方で、市場が二分された状態に近かったが、FOMC後は最初の利上げが9月に行われるとの見方が中心となった。当局者のフェデラルファンド(FF)金利見通しが2015年末時点で0.625%であったことから、年内に2回の利上げが行われる可能性が高いとみているからでもあろう。ひとまずは利上げ期待の後退が落ち着くことで、短めの金利は低下が止まり、長めの金利も下げにくくなるのではないか。

しかし、実効為替でみたドル相場は、今後もしばらくは下げ基調となる可能性が高い。その理由は、ドル高が進むと原油などの商品安を伴って米国のインフレ率やインフレ見通しが押し下げられ、利上げが遠のくことがわかったため、市場ではドルを買いにくくなったからだ。

米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、ドル高は純輸出を抑制し、原油安は原油の掘削活動を縮小させていると述べており、米国経済に逆風となる働きがあるとの見解を示している。インフレ見通しが高まり、利上げが近い将来に現実的なものとして視野に入るまでは、ドルが売られやすいだろう。ドルが下落すると商品価格は上昇しやすい。

しかも、米国では最近、ガソリンや留出油など石油製品の生産や在庫の増加に鈍化の兆しが出てきたので、原油の生産や在庫の増加も鈍化するタイミングは近いものとみられる。そうなれば、なおさら原油などの商品価格は上昇しやすくなる。ドル安と商品高が米国の期待インフレ率を押し上げることで、実質金利が押し下げられやすくなり、名目金利が低下しなくてもドルが売られることも考えられる。

<「ドル安=ドル円下落」にはならない>

ただし、実効為替でドル安が進むと必ずしもドル円が下落するわけではない。今のところは円安よりもドル安が優勢なためにドル円が下落しているが、次第にドル安よりも円安が優勢となってドル円が上昇するようになる可能性は十分にある。

現状で円安が勢いを欠く理由は、米金利低下やドル安が進んでも米国の株価が伸び悩むなど、リスクオンの高まりが鈍いことにある。その背景には、足元で米国景気の回復ペースがやや減速したために、先行きの景気見通しが悪化したことがあるだろう。

過去を振り返っても、米国のイールドスプレッド(国債利回り-株式益回り)は景気指標と連動しており、景気指標が改善方向にないと長期金利や予想1株当たり利益(EPS)との裁定関係において株価が上昇しにくい。しかし、ドル高が多少なりとも是正されたことで、今後の米国経済指標にはプラスの圧力がかかるはずである。

<ドル安による米景気回復とリスクオン>

S&P500種企業の予想EPSは2014年10月以降、減少が続いていたが、2015年3月には増加に転じている。原油安がエネルギー企業に与えていた悪影響が薄れつつあることに加え、ドル高がグローバル企業に与えていた悪影響も薄れることで、さらなる予想利益の増加が見込まれる。

今年に入り市場予想を下回る傾向が強まってきたマクロの米国経済指標も今後は改善に転じる可能性が高く、そうなれば、米国株価は上昇しやすくなるだろうし、リスクオンの高まりとともに円安が顕著に進むようになるだろう。リスクオンのドル安で実効為替のドル相場が下落しても、リスクオンの円安はドル安を上回り、ドル円は上昇することになるだろう。

3月FOMC直後の通貨先物(対ドル)は、豪ドル、円の売り越しにほぼ変化がなく、ユーロは売り越しが拡大するなど、ドル売りは強まっていない。ユーロは、欧州中央銀行(ECB)が国債買い入れなどによる量的緩和を進めることに起因した先安観があり、ユーロ高・ドル安が進んだところで先物のユーロ売り・ドル買いが増えたようだ。

ただし、主要6通貨に対するドル実効為替指数先物の買い越しはFOMC前に記録したピークに比べて縮小しており、やはりドルに先安観が浮上しつつあるものとみられる。今後、2012年10―12月のようにドルに対する円の売り越しが拡大し、他通貨の売り越しが縮小するリスクオンのパターンになるかが注目される。

FOMC直後は、米国の名目金利低下とドル安・商品高が進む一方で、米国景気への懸念からリスクオンの株高・円安は鈍く、ドル円は下落した。しかし、今後は緩やかな実質金利低下とドル安が進む一方で、ドル安による米国景気の回復期待からリスクオンの株高・円安が進みやすくなるだろう。

FRBのハト派的姿勢は、クロス円だけでなくドル円の上昇をもたらすと予想される。米利上げ期待が後退してドル高の勢いが衰えたときこそ、幅広い通貨に対する円安進行をにらんで「円売り・外貨買い」をすべきではなかろうか。

*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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