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コラム:個人注目の豪ドル投資は報われるか=村田雅志氏

[東京 10日] - ドル高基調の中でも底堅く推移していることから、豪ドルは日本の個人投資家を中心に注目を集めている。しかし、筆者は先行きを慎重にみており、たとえ多くの主要通貨に対して円安が進んだとしても、豪ドルは対円でも下落するリスクが高いと考えている。

 10月10日、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト、村田雅志氏は、割高感が強まる豪ドルは米ドル買いの有力な相手通貨候補であり、対円でも下落リスクに注意が必要だと指摘。提供写真(2014年 ロイター)

豪ドル円は、今年1月下旬に90円を割り込む場面もあったが、その後は底堅く推移。9月上旬には98円台後半と昨年5月以来の水準に上昇し、原稿執筆時点(10月10日午前)でも94円台半ば近辺と年初来プラスを維持している。年初から5%以上下落したユーロ円と対照的な動きである。

豪ドルは、対円だけでなく、対米ドル(以下、ドル)でも下値の堅い動きを示している。対ドルの年初来パフォーマンスをみると、円が2.3%、ユーロは7.6%とそれぞれ下落したのに対し、豪ドルの下落率は1.8%と小幅。為替市場では9月に入りドル高基調が強まったが、豪ドルは対ドルでも下値が堅い。

この背景として、格付けが最高水準にあるにもかかわらず、金利水準が高い点がある。オーストラリアの格付けは、大手格付け機関3社いずれもがAAA水準を付与。アジア・太平洋州で同水準にあるのはシンガポールだけである。

格付けが高ければ、金利水準も低くなるのが一般的だが、オーストラリア債利回りは、先進国の中で抜きん出ている。豪2年債利回りは原稿執筆時点で2.5%台後半。他の先進国をみると、日本が0.05%台、米国が0.44%台、英国が0.73%台と、いずれも1%に満たない水準だ。ドイツにいたってはマイナス0.06%台と、マイナス金利が続いている。

ドル高基調の中でも下値が堅く、高格付けで高金利という条件がそろっていることもあって、日本の投資家は個人を中心に豪ドルへの投資に強い興味を示しているようだ。日本の個人投資家向けを中心とした外債(いわゆる売出債)のうち外貨建てでの発行割合をみると、豪ドル建ての割合は28.5%と、より金利の高いブラジルレアル建てやトルコリラ建てを抑えトップとなっている。

<強まる豪ドルの割高感>

しかし、前述した通り、豪ドルの先行きに対しては慎重な見方を取るべきだ。オーストラリア景気の下振れリスクが高まるなか、豪ドルの割高感が強まっているためである。

緩やかな回復を続けてきた同国の景気は、転換点を迎えつつある。8月の小売売上高は前月比でわずか0.1%増と、2カ月連続の減速。9月の雇用者数は2.97万人減と、2011年4月以来の落ち込みとなり、労働参加率は06年2月以来の低水準である64.5%に低下した。

一方、外需に目を転じれば、8月の輸出は前年比4.7%減と2012年12月以来の落ち込みを記録。同国最大の輸出先である中国景気は先行き不透明感が強いほか、主要輸出品である鉄鉱石など原材料価格の低迷もあって、外需が景気をけん引する展開は期待しにくい。7―9月期の成長率は前年比3.0%増程度と2四半期連続で減速するとの見方が強まっており、10―12月期以降も減速基調が続くと見込まれている。

オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は7日の会合で政策金利を2.50%で据え置くと発表。RBAは声明で、労働市場は依然として過剰感が強く、賃金の下落も著しいと指摘。公共投資は抑制傾向が続く見込みで、今後、数四半期の成長率は長期平均を若干下回るとの見方を示した。その上で、当面、金利を安定させるのが最善だろうと、政策金利を据え置き続ける意向も示した。

興味深いのは、9月に入ってから豪ドルが大きく下落したにもかかわらず、RBAは、前回会合と同様に豪ドルは歴史的な水準からみて「依然として高い」との見方を維持したことだ。声明では豪ドルについて、最近の為替相場は主にドル高を反映して下落しているが、特にここ数カ月間に主要商品価格が一段安となったことを考慮すれば、過去の基準でなお高止まりしていると指摘。バランスの取れた経済成長を達成する上で通常予想されるよりも為替の支援は少ないと説明した。

足元の豪ドル/ドルは0.87ドル台半ばと、2011年夏場に記録した1985年以降の最高値(1.10ドル台)からみれば、すでに2割以上も下落している。高くないとも言えそうだが、RBAの判断は、物価の観点から考えても、さほど不思議なものではない。経済協力開発機構(OECD)が購買力平価から算出した通貨の割高度をみると、円が4.5%、ユーロが1.1%の割安であるのに対し、豪ドルは対ドルで25%の割高となっている。

国際決済銀行(BIS)が公表する実質実効為替レート(物価変動や他国との貿易額の割合から算出された通貨の水準)をみても、豪ドルはリーマンショック前の2006年、07年の水準を上回ったまま。1995年以降の最低水準を維持している円と対照的だ。

日本時間10月9日の早朝に公表された9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨をきっかけに米利上げ期待はやや後退。米10年債利回りは一時2.28%程度と昨年6月以来の低水準を記録したが、ドル円は107円台半ばで下げ止まり、為替市場でのドル高期待は継続している。

今後、時の経過とともに米利上げは近いとの見方が強まり、ドルは再び買い優勢の展開となるだろう。割高感の高い豪ドルは、割高感が解消された円やユーロに代わり、ドル買いの相手通貨として有力な候補となりうる。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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