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コラム:「米利上げ開始は来年3月」の現実味=嶋津洋樹氏

[東京 15日] - 2014年の米国景気は1―3月期こそ悪天候の影響で大きく落ち込んだものの、その後は力強い回復を続けている。当初は低成長を構造要因と結びつける見方もあったが、やや大げさだったと言えるだろう。

 10月15日、SMBC日興証券・シニア債券エコノミストの嶋津洋樹氏は、今回と前回の政策転換局面におけるFRBのコミュニケーション方法の類似点を考えると、米利上げは来年3月にも始まる可能性が高いと指摘。提供写真(2014年 ロイター)

直近では9月の雇用統計が労働市場の改善継続を裏付け、米連邦準備理事会(FRB)が次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で現行の資産購入の規模縮小(いわゆるテーパリング)を完了させる可能性が高まった。市場参加者の視線はすでにその後の金融政策に向かっている。

FOMC参加者もそうした市場参加者の視線を感じているのだろう。前回のFOMCに絡むブラックアウト(発言自粛)期間の終了後、政策金利の引き上げ時期に関する発言が相次いでいる。たとえば、フィッシャーFRB副議長は9日、利上げの開始時期について「15年半ばになる」と表明。イエレンFRB議長に近く、市場参加者からハト派と評価されるダドリー・ニューヨーク地区連銀総裁やウィリアムズ・サンフランシスコ地区連銀総裁も同じ見立てでほぼ足並みをそろえている。

一方、ブラード・セントルイス地区連銀総裁は9日、最新の雇用統計を受けて、15年1―3月期の終盤に利上げを開始するという自身の見方が裏付けられたと指摘。また、プロッサー・フィラデルフィア地区連銀総裁やジョージ・カンザスシティー地区連銀総裁らを筆頭に、FOMC内のタカ派は依然として15年半ばよりも早い段階での利上げを主張している。

では、肝心の利上げはいつ始まるのだろうか。筆者の見立ては、タカ派のそれに近く、15年3月にも実行される可能性が高いと考えている。レバレッジドローンなど一部の市場での行き過ぎが警戒されていることも踏まえると、おそらくFOMC内のハト派の中ですら、15年半ばでは遅すぎるとの懸念があるはずだ。

こうした見立ての信ぴょう性を高めてくれるのが、今回と前回の利上げ局面前でのFRBのコミュニケーションにみられる共通点だ。FRBがテーパリングを織り込ませ始めた昨年以降のコミュニケーション方法と、03―04年当時のそれとを比べると、重なる点が多いのだ。

たとえば、14年3月19日に公表された声明文には、「(低金利政策を)相当の時間(a considerable time)」維持するというメッセージがあった。これは03年8月12日の声明文に盛り込まれた「(緩和的な政策を)相当の期間(a considerable period)」維持するとほぼ同じ役割を果たしていると考えられる。

しかも、その4カ月後のFOMC(前回は04年12月9日、今回は14年7月30日)では、いずれもそれまでの低インフレへの警戒感を緩和。同時に資源稼働率の低さ(04年12月9日)や、労働力の活用不足(14年7月30日)といった需給ギャップの大きさを持ち出すことで、低インフレへの警戒感を後退させても緩和的な金融政策が正当化できると主張した。

筆者が、最近のダドリー総裁やエバンス総裁の「忍耐強く」との言葉を聞いて、04年1月28日のFOMC声明文を思い出すのは自然なことだろう。FRBは、その3カ月後の5月4日の声明文で「(緩和的な政策を)慎重なペースで解除できる」と表明。6月30日のFOMCで政策金利の引き上げに踏み切った。

当時のスケジュールを今回に当てはめると、FRBは次回10月29日のFOMC声明文で「相当の時間」との文言を削除するとともに、「(緩和的な政策の解除には)忍耐強くなれる」と表明することだろう。そして、15年1月28日の声明文で「慎重なペースで政策金利を引き上げることができる」としたうえで、3月18日に最初の利上げに踏み切るのではないか。このことは、イエレン議長が3月に行った最初のFOMC後の議長会見で「相当の時間」を「6カ月程度」と回答したのが本音だったことも示すだろう。

<ブラード総裁発言の重み>

もちろん、日本や中国、欧州など米国以外で景気の下振れリスクが高まっていることや、そうした状況を受けてドルが上昇し商品市況が軟化していることも踏まえると、最初の利上げが15年後半へ後ずれするリスクもゼロではない。

そもそも、ダドリー総裁やエバンス・シカゴ地区連銀総裁が金融緩和の解除や政策金利の引き上げまで「忍耐強く(なれる)」との言葉を繰り返しているのは、個人消費支出(PCE)価格指数がFRBの「物価安定」の目標と整合的な2%を下回るなか、米国経済を取り巻く環境に必ずしも自信を持てていないからだろう。

加えて、前回と今回の利上げへの転換点では、金融政策が伝統的か非伝統的かの違いもある。さらに、ITバブル崩壊と「100年に1度」ともいわれた金融危機が経済に与えた影響にも差があろう。前回のコミュニケーションが今回もそのまま当てはまるというのは、さすがに出来過ぎとの声も聞こえてきそうだ。

しかし、前回の政策転換局面において、イエレン議長はサンフランシスコ地区連銀総裁として、エバンス総裁はシカゴ地区連銀の副総裁兼調査部長としてFOMCに参加。その経験に基づいて行動している可能性は小さくない。

さらに、ブラード総裁がリーマンショック以降、FRBの決定に大きな影響を与えてきたことも勘案すると、最初の利上げが15年1―3月期の終盤との主張を無視することはできないだろう。

*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントを経て2010年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネージャーとして、日米欧の経済、金融市場の分析に携わる。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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