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アングル:設備投資にも動意の兆し、非製造業に投資余地

[東京 12日 ロイター] - 長らく凍り付いていた国内設備投資にようやく動意が見え始めた。12日発表の4月機械受注や前日公表の法人企業景気予測調査から、今年度の設備投資計画が企業のマインド好転を反映し、自動車や小売りを中心に持ち直している姿が浮かび上がった。

6月12日、長らく凍り付いていた国内設備投資にようやく動意が見え始めた。写真は東京都内で4月撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

中でも高齢化需要の取り込み投資拡大などで、非製造業が設備投資のけん引役になるとの期待が大きい。規制緩和で成長分野を創出できれば、安倍晋三首相が掲げる年間70兆円の設備投資復活も、あながち遠い夢ではなくなるとの見方が出ている。

<株式活況や消費好調、投資にも解凍効果>

4月機械受注(民需)は前月の大型受注反動減もさほど大きくなく、月7000億円台を維持でき、内閣府関係者もほっとした表情を浮かべていた。みずほ証券では、今回の反動減が限定的だったことから、4─6月には機械受注が増加に転じるとみている。

設備投資もタイムラグをもって今年秋には増加基調となる可能性が出てきた。昨日公表の4─6月期法人企業予測調査でも、今年度設備投資計画が7.2%と大幅に上方修正され、財務省も企業マインド好転を映したものとみている。

アベノミクスの目玉である期待への働きかけが、出遅れていた設備投資でもその効果が波及しつつあると言えそうだ。BNPパリバ証券では「円安や株価の上昇で設備投資意欲は徐々に持ち直している」と、金融市場を介した効果が出ていると分析している。

4─6月期の法人企業景気予測調査では、昨年凍結していた更新投資を再開させただけでなく、新規投資もある程度実施していることがうかがえる。けん引しているのはコンビニなど小売チェーンの新規出店やそれに伴う惣菜など食料品製造設備、自動車業界による新車対応の生産ライン増設や研究開発投資、株式取引の活況に対応した金融機関のシステム投資だった。

<投資需要は国内非製造業にあり>

ただ、こうした経済指標の調査時点は、5月半ば過ぎの金融市場のボラティリティ拡大直前だった。その後、5月末調査の景気ウォッチャー調査では、消費関連企業で先行きを懸念する声があるほか、雇用関連でも企業の求人動向への影響を心配する見方があったが、企業自体からは直接のコメントは少なかった。

金融市場の乱高下があっても「企業の設備投資姿勢にすぐに変化を与えるわけではない」(BNPパリバ証券)と見られ、むしろ内外の需要動向と企業の中長期の戦略が大きな要因となる。

そうした視点で眺めると今後、国内投資が活発化しそうな非製造業への期待が大きそうだ。製造業に関しては「これまで企業は着実に生産の海外シフトを進めてきた。企業センチメントを短期間で転換させるハードルは高いとみられる」(みずほ証券)ためだ。

最近の円高是正で多少は海外移転を思いとどまる企業があるとはいえ、製造業は為替動向に翻弄されずに需要地での生産体制を整える方向にあり、海外投資の比率を高めている。法人企業景気予測調査でみると、製造業はリーマン前と比較して4─6月の投資額は6割強にとどまる。

一方で、非製造業は投資額自体が製造業の2倍弱にのぼり、すでにリーマンショック前の8割程度まで投資額が戻っている。伊藤忠経済研究所では「これからは高齢化社会で医療や小売りなどでの需要が伸びることから、成長戦略としてこれを取り込む非製造業の設備投資に期待できそうだ」と見ている。機械受注統計でも底堅く伸びているのは、運輸業や卸・小売業やその他製造業といった非製造業だ。

従来、設備投資の波は製造業から始まり、非製造業へと波及してきたが、製造業の国内投資回帰に大きな期待が持てない現在、けん引役は変化しつつあるようだ。

<70兆円投資目標、規制緩和で成長分野創出で可能性も>

安倍首相が掲げる年70兆円の設備投資の目標も、成長分野が創出できれば無理ではなさそうだ。設備投資に動意が表れつつある中で、この目標額について専門家からは「投資集中期間の3年間での達成は難しいとしても、無理な数字ではない」(伊藤忠経済研究所)との声がある。12年度の設備投資は名目GDPベースで約63兆円。物価が上昇に転じ年1%ずつ上がっていくことを前提にすれば、あと7兆円の上積みは視野に入りそうだ。

企業サイドでは、設備投資を促進するためには法人減税が必要との声が圧倒的に多い。ロイター調査でも成長戦略への期待は半数が法人減税を挙げている。「新規事業分野へのトライを促すための余裕を生み出せる」(サービス業)といった声が寄せられた。

ただ、政策当局者や民間専門家からは、必ずしも法人減税が設備投資に使われるとは見ていない。内部留保は高水準に積み上がっているにも関わらず、設備投資は減価償却の範囲内にとどまってきたのは、需要そのものが国内で見当たらなかったためと分析している。

BNPパリバ証券では「70兆円という目標が自己目的化して財政支援策を出すよりも、規制緩和で新たな成長分野を創出して企業が投資した結果として、70兆円が達成できるという本来の姿を作りだすべき」と指摘する。

東京大学経済学部の福田慎一教授は「企業は円安・株高で経営にプラス効果があったことは間違いない。しかし少子高齢化など構造問題が解決していない中で、様々な意味でまだ慎重だ。設備投資が本格的に出てくるのもこれからにかかっている」とみている。

ロイターニュース:中川 泉 編集:田巻 一彦

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