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コラム:世界の投資新秩序を担う日本株の上値余地=武者陵司氏

日米欧3極の顕著な経済拡大の下、リスク資産投資の活発化が予想される2014年。新たな投資ポートフォリオ秩序の形成は必然であり、日本株はその大きな柱となるだろう。

12月30日、武者リサーチの武者陵司代表は、2014年中にドル円は110―115円、日経平均株価は2万2000円に到達すると予想。提供写真(2013年 ロイター)

結論から言えば、14年中にドル円レートは110―115円に達し、日経平均株価は2万2000円程度に届くとみている。何より日本株には、他の国にはないプラスアルファの上昇要因がいくつもあるからだ。

まず、アベノミクスによる円高デフレからの脱却だ。産業の弱体化を通じて日本経済の一人負けを招来した諸悪の根源が今、ようやく是正されつつある。次に、いまだに史上空前のレベルにある日本株の割安さだ。今、日本株の益回りはおよそ7%、つまり100円の株で7円の利益を上げているが、他方、100円で債券を買ったら利回りは0.8%(80銭)だ。両者には8倍もの開きがあるにもかかわらず、これまで日本では株にお金が向かわなかった。それが是正される大きなうねりが今、起きつつある。

そして、地政学だ。バブル崩壊後23年間に及ぶ長期停滞の背景には、米国による「日本封じ込め策」があった。しかし、中国の急速な台頭に伴い、米国は日本経済のプレゼンスの高まりを必要としている。言い換えれば、日本は世界新秩序の担い手へと昇華していくことが求められており、このことは長期的に見て、日本株のバックアップ要因となろう。

<世界の「嫌われ者」から「人気者」へ>

よく考えれば、「失われた20年」とは、逆風が吹きすさぶ中で、日本企業が再起に向けて力を蓄えた20年であるとも言える。実際、この間、以下の4つの点で、日本企業の基礎的収益要素が飛躍的に改善されている。

最も大きいのは単位労働コストの劇的な低下だ。日本ほど、1単位の付加価値生産にかかる労働経費が低下した国はない。血のにじむような現場の努力で労働生産性を向上させてきた成果でもある。

では、世界最高のスリム化・コスト削減を実現した日本企業の多くがなぜパフォーマンス悪化にあえいだのか。それは、端的に言えば、デフレによって売値が大幅に下がったからだ。したがって売値が正常な水準に戻れば、過去20年間の激烈なコストダウンの努力は利益になって戻ってくる。それが13年の円安転換から起こり始めているが、大きく花開くのは14年以降だ。

第2に、日本企業はこの20年で、世界の「嫌われ者」から「人気者」に変貌を遂げた。かつての日本は、集中豪雨的な輸出の張本人だった。安いコストで生産し輸出、その儲けを国内生産の増強に傾けた。他方、輸出先国では日本企業との戦いに敗れた企業が事業縮小や破綻を余儀なくされ、失業者が増えた。集中豪雨的なモノの輸出は、失業の輸出でもあったのだ。

ところが今や、この構図は大きく変わった。グローバリゼーションの要求に応えた日本企業は国内で雇用を減らす一方、海外では現地採用を増やしている。多くの日系グローバル企業で、国内就業者が占める割合は年々減少傾向をたどっている。つまり日本企業は、かつては海外で失業を生む主体だったが、今では海外で雇用を生む主体となっているのである。

第3は、技術的アドバンテージの維持・進化だ。確かに、半導体、スマートフォンなどのデジタル製品では台湾や韓国などのライバル企業に不覚をとったが、それ以外の多くの分野では日本企業は依然として優位に立つ。たとえば、中国の鉄鋼市場は供給過剰にあるが、質が劣るため日本の市場には満足に入ってこられない。規制ではなく、技術革新に基づく高い品質が参入障壁となっている。この状況は、日本で有効な先端技術開発やソリューション提供が行われている証左である。高機能鋼材だけでなく、その他のハイテク素材や機械・部品、言うまでもなく自動車分野全般などにおいて、日本企業は今もリーダー的存在だ。

最後の4点目は、膨大な資本蓄積だ。日本企業の自己資本比率は現在、約39%と過去最高水準にある。200兆円もの余剰キャッシュも積み上がっている。これは「守りの経営」が続いた結果ではあるが、ひとたび「攻めの経営」に打って出れば、グローバルな大型M&Aから大胆な事業構造改革まで何でもできる切り札を持っていることに等しい。

幸いにして、大企業や中小企業の価値創造能力がかろうじて温存されているうちに、日本は円安に転換できた。仮に円高デフレがより深刻化していたならば、企業の努力も限界に達し、結局、全部負けていたということもあり得ただろう。ようやく訪れた再生のチャンスを生かさない手はない。14年こそ、日本人のアニマルスピリッツに期待したい。

*武者陵司氏は、武者リサーチ代表。1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。87年まで企業調査アナリストとして、繊維・建設・不動産・自動車・電機エレクトロニクスなどを担当。その後、大和総研アメリカのチーフアナリスト、大和総研の企業調査第二部長などを経て、97年ドイツ証券入社。調査部長兼チーフストラテジスト、副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーを歴任。2009年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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