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コラム:明るさ増す世界経済に残る「ディスインフレ」懸念=加藤隆俊氏

2014年の世界経済は全体としては13年に比べて、景気回復への歩みをより確認しやすい年になるのではなかろうか。日本を含め先進国においては非伝統的な金融緩和が寄与する資産価格の継続的な上昇が景気を支えてきている。

12月30日、国際金融情報センター理事長で元財務官の加藤隆俊氏は、2014年は米国を中心に世界経済に明るさが増すが、ディスインフレ懸念の払しょくには至らないだろうと指摘。提供写真(2013年 ロイター)

14年については、一番の好材料は米国である。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は最近、議会の予算合意や経済指標動向などを踏まえ、米国の成長率は改善するとの予想を示している。IMFが10月に発表した世界経済見通しでは、14年の米国の成長率は2.6%と予想されているが、1月公表の最新見通しでは上方修正される可能性が高い。

米国と並ぶ世界の成長エンジンである中国も、景気の底割れ懸念はだいぶ払しょくされた。一次産品の輸入も、モノによっては拡大傾向にある。シャドーバンキングや地方政府の債務問題など課題は横たわったままだが、11月の「三中全会」(中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)では、投資・輸出主導から消費中心の経済構造への改革方針が明確に打ち出された。既得権益との調整を進めつつ諸政策が具体的にどのように、どれくらいのスピードで実行に移されるか注視したいが、「三中全会」の決定にみられる課題解決に向けた同国当局の意気込みには期待が持てそうだ。

一方、ユーロ圏も、欧州委員会の秋季経済見通しによれば、14年の成長率はプラス1.1%と、13年のマイナス0.4%と異なり、水面下から浮上することが予想されている。他方、中国以外の新興国の中には、巨額の経常赤字や財政赤字、高インフレ問題を抱え、経済の先行きが懸念される主要国もあり、日本経済にとってのリスク要因として意識しておくべきであろう。

振り返れば、世界の金融資本市場は、量的緩和(QE)の出口戦略をめぐる5月のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長発言に前後して、新興国市場を中心に一時的に大きな動揺をみせたが、結局、危機的な状況に陥ることなく、1月のQE縮小開始のストレスも大過なく乗り越えられそうな気配である。

当局者の肩を持つわけではないが、日本を含め13年の主要国の政策運営は世界景気の腰折れを回避するのに寄与したと言えるのではないか。中でも、FRBによるQE縮小開始の決断は、5月や9月に世界の金融市場に波乱を招いた経験の上に立ち、その後発表された成長率や生産などの統計数値が強めに出ていることをみると、早すぎも遅すぎもしない適切なタイミングだったと評価して良いだろう。

また、FRBが秋口から年末にかけて、数量的な金融緩和の縮小と短期金利据え置きは別問題であるとのメッセージを繰り返し発信したことで、市場の理解が進み、12月のQE縮小決定後に相場が混乱に陥らなかった点は評価される。むろん、今後、モーゲージ金利の推移や住宅市場への影響を注意深く見守る必要はあるが、米国の消費・企業活動は堅調であり、財政面からの景気の足かせが14年に後退することは現在のモメンタム持続の追い風となろう。

<懸念されるTPP交渉の難航>

ただ、米国を中心に明るさが増す一方で、中長期的にはディスインフレ懸念が引き続き世界経済の足かせとなりそうだ。

「日本化現象」とも呼ばれる、こうした物価上昇率の鈍化傾向は、特に先進国に共通する問題なのかもしれない。高齢化が進み、消費が盛り上がらず、賃金がなかなか上がってこないのは何も日本だけではない。ベビーブーム世代の引退を迎えている米国も同じだ。

バーナンキFRB議長は12月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で「ヘルスケアコストなど異例に低かった一部要因が反転する可能性がある」としてインフレ率が段階的に目標の2%水準に戻るとの考えを示したが、その一方で「FOMCはインフレが継続的に目標を下回り続けることは経済動向へのリスクとなる可能性があると認識している」と語っており、慎重なスタンスをにじませている。

成長率が上がっても、インフレ率が2%に近づかない状況が続くならば、短期金利の引き上げ時期がさらに後ろにずれる可能性は十分あるだろう。その間に、資産価格の過度な上昇、バブルが生成されるリスクにも引き続き注意が必要だ。

翻って日本は、米国をはじめとする世界経済の中長期の懸念材料に鑑み、目先の株高や円安に甘えることなく、潜在成長率のかさ上げに必要な長年の命題たる構造改革を進めていくことが肝要だ。14年4月の消費増税後、需要不足が顕在化し、インフレ2%目標の達成が危うくなるならば、日銀の追加緩和が求められる局面もあろう。

必要な構造改革との関連において、環太平洋連携協定(TPP)交渉が思うように進んでいない現状はやや心配だ。TPPは、安倍政権の「第三の矢」にとって大きなモメンタムを与えるものである。秋に中間選挙を控える米国が保護貿易色を強めることのないよう、対話をきちんと図り、TPP交渉の今後の進展を期待したい。

*加藤隆俊氏は、元財務官(1995─97年)。米プリンストン大学客員教授などを経て、2004─09年国際通貨基金(IMF)副専務理事。10年から公益財団法人国際金融情報センター理事長。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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