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訂正:復活賭ける日の丸半導体構想、成否の鍵はグローバル戦略

[東京 20日 ロイター] ルネサスエレクトロニクス6723.Tと富士通6702.T、パナソニック6752.T3社が、苦境に陥っている半導体のシステムLSI(大規模集積回路)事業を切り出し、統合する交渉に踏み出した。現在、浮上している有力案は、設計・開発と製造のそれぞれ専門会社に分けるスキームだが、それだけでは新会社の生き残りは難しく、その場しのぎの弱者連合になってしまうとの懸念も出ている。「日の丸半導体」構想が成功するためには、世界を見据えた戦略が作れるのかどうかが鍵になりそうだ。

2月20日、ルネサスエレクトロニクスと富士通、パナソニック3社が、苦境に陥っている半導体のシステムLSI事業を切り出し、統合する交渉に踏み出した。写真は2010年9月、都内の港湾施設で撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

<対症療法に過ぎない設計と製造の分離>

「東日本大震災のせいで、重い腰を上げざるをえなくなった」――。3社のある幹部はこう打ち明ける。2011年の日本勢の半導体市場のシェアは18.9%(米IHSアイサプライ調べ、速報暫定値)と20%を割り込んだ。ここ10年間はなんとか20%台を維持してきただけに、「ショックは大きかった」(同幹部)。

ルネサスエレクトロニクスは震災で自動車産業の巨大なサプライチェーン(部品調達網)の要を担っていることが浮き彫りになったが、その震災が響き今期は連結営業赤字に転落する見込み。同社は10年にルネサステクノロジとNECエレクトロニクスが統合して生まれた会社だが、システムLSI事業は統合前から引き継いできた負の遺産で、震災前から赤字が続いている。ルネサスは非中核事業の整理を進めており、システムLSIもその筆頭候補。

富士通も同事業を手がける子会社の富士通セミコンダクター(横浜市)が発足3年目の11年3月期に黒字化したものの、今期は再び赤字の見通し。パナソニックはすでにシステムLSIを縮小して画像センサー分野に特化する方針を示している。各社とも震災前からあらゆる選択肢を検討してきたが、なかなか踏み出せずにいた。

今回の統合・再編案の特徴の一つは、設計・開発と製造のそれぞれ専門会社に分けるスキームだ。関係筋によると、2つの専門会社には官民ファンドの産業革新機構も出資。製造専門会社にはファウンドリー2位の米グローバル・ファウンドリーズも共同出資する。製造拠点には、DRAM(記憶半導体)専業メーカーのエルピーダメモリ6665.Tの広島工場(広島県東広島市)を買い取り、システムLSIに転用する案も浮上している。エルピーダは売却後も工場の一部を借りて生産を続ける方向だ。3社のシステムLSI事業を足し合わせると、同事業でトップクラスの米インテルINTC.Oや米ブロードコムBRCM.Oに匹敵する。

世界では設計・開発、製造それぞれの専業会社として運営する「水平分業型」が台頭。設計専門会社で携帯電話用半導体最大手の米クアルコムQCOM.Oや受託生産最大手の台湾TSMC2330.TWTSM.Nがその代表例だ。今回は、その潮流に乗ったスキームとも評価できる。これまで日本勢は設計から生産まで一貫して自ら手がける「垂直統合型」が主流だった。このため、業績が低迷しても「最先端製品を生産するための巨額投資は継続的に負わねばならず、収益力を落としてきた」(半導体業界アナリスト)。

しかし、垂直統合型から水平分業型に転換するだけで生き残れるのか。IHSアイサプライの南川明主席アナリストは「統合しないよりはしたほうがいい」と一定の評価をする。国内企業同士の体力消耗戦がなくなり、コスト削減ができて重複投資も避けられるからだ。だが、「設計と製造の分離だけでは対症療法に過ぎない。世界で勝つための戦略がなければ新会社に未来はない」と警鐘を鳴らす。

<世界に通用する製品企画力・マーケティング力が必要>

垂直統合型もそれ自体が悪いわけではない。半導体最大手のインテルINTC.Oは垂直統合型だが、パソコン用演算半導体という特定分野での世界市場を独占することで利益を稼ぎ出している。同じように半導体2位のサムスン電子もシステムLSI事業での量産品が米アップルAAPL.Oのスマートフォン(多機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」やタブレット型端末「iPad(アイパッド)」に使われており、特定顧客に入り込むことで急成長を遂げている。

システムLSIは本来、分野や顧客ごとに細かく仕様を分けた特注品が多い。特に日本勢は国内の家電・自動車メーカーの要求に応じて技術を擦り合わせ、カスタマイズすることで完成品の差別化にもつなげてきた。こうした多品種少量生産が経営効率を低下させ、「国内メーカーの言われるままに製品を作ってきたことが、独自の製品企画力も弱めてきた」(南川氏)。その国内メーカーもテレビなどの家電を中心に製品販売は不振。日本勢失速の背景がここにある。

垂直統合型と水平分業型のどちらにせよ、「生き残るために必要なのは、世界に売り込むための製品企画力やマーケティング力、人材だ」と、ハイテク業界のシンクタンク「アーキテクトグランドデザイン」のチーフアーキテクト、豊崎禎久氏は強調する。

さらに豊崎氏が具体的に重要だと指摘するのは、「中長期的にどんなアプリケーション(自動車、携帯端末など半導体を搭載するハードウエア)が世界で伸びるかの見極め」だ。例えば、携帯電話用でクアルコムや台湾メディアテック2454.TWなどは強い競争力を持つ。世界の競合相手は特定用途向けの汎用品を開発し、価格競争力のある製品を大量生産して成功している。特化する分野を見定め、自ら新たな市場を創造することが必要とされている。

<統合は外資の参入機会にも>

一方、統合はもろ刃の剣にもなりかねない。国際競争力のある日本の自動車向けなら、擦り合わせ技術やカスタマイズ生産が十分生かせるとの声もある。今後も世界での需要拡大が見込まれ、先端技術を駆使したハイブリッド車や電気自動車なら、システムLSIが活躍する場面も多いはずだ。

だが、部品は複数購買が基本だ。特に震災でサプライチェーンが寸断し、減産を余儀なくされた自動車メーカーにはその志向が強まっており、統合が外資の呼び水になる可能性もある。実際、ルネサスエレクトロニクスが誕生した時、米フリースケールなどに参入の機会を与えることになった。

<統合の連続だった日本の半導体業界>

日本勢が世界を席巻していた80年代のピーク時はシェアが50%を超えていたが、その後は下がり続け、もはやその勢いは見る影もない。苦境を脱するため、これまでも日本の半導体業界は統合を繰り返してきた。03年に日立製作所6501.Tと三菱電機6503.Tが半導体事業を統合してルネサステクノロジになり、10年4月にNECエレクトロニクスが合流、ルネサスエレクトロニクスが誕生した。そのルネサスは今も統合の連続で膨らんだ過剰な人員と設備の整理に追われている。

エルピーダは2000年にNEC6701.Tと日立のDRAM事業の統合により設立、03年には三菱電機のDRAM事業を吸収した。円高や市況悪化でエルピーダの11年(訂正)4―12月期は989億円の連結最終赤字。リーマン・ショックの影響で業績が落ち込み、09年に公的資金による支援を受けたものの、業績低迷から抜け出せていない。

過去にも各社の生産部門を集約する「日の丸半導体」構想は何度か浮上したが、頓挫した。今回も曲折が予想され、「再編劇」で終わる可能性もある。「デジタル社会はいす取りゲームで、勝者は1人。今の日本勢は場外から眺めているだけで、ゲームに参加すらできていない」(豊崎氏)中で、日本勢に残されたチャンスは限りなく少ない。

(ロイターニュース 白木真紀、編集:布施太郎)

*第2段落目の半導体市場シェアに関する表現を差し替えました。

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