[ニューヨーク 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] 米ソーシャルネットワーク(SNS)企業、フェイスブックによる写真共有アプリ企業、インスタグラムの防衛的買収は警戒を要する。オンラインの写真サービスはフェイスブックが提供するサービスの中で中核を占めるはずだ。
10億ドルを支払って人気の写真共有アプリを手に入れることで、フェイスブックはモバイル端末上でも勢力を広げられるかもしれない。しかし、まだ収入のない競合他社に予想以上の資金を投じるのは通常、将来に焦りを抱いた成熟企業の印であり、1000億ドル規模の新規株式公開(IPO)を目論む成長企業のすることではない。
ケビン・シストロム、マイク・クリーガー両氏が創立してわずか2年のインスタグラムを、多額の現金・株式と引き換えに手に入れることで、フェイスブックが得るものをずばり言い当てるのは不可能だ。伝統的な図式は当てはまらない。インスタグラムは現実的な事業計画に着手したばかりで、1年前の企業価値はわずか2000万ドルだった。同社が持っているのは3000万人を超える利用者と、超急スピードの成長だ。先週にはアンドロイド向けの新たなアプリに12時間で100万人以上のユーザーが登録した。
フェイスブックがインスタグラムを買収するのは、明らかに別の理由によるものだ。人々がスマートフォンを通じ、互いにつながって過ごす時間は増えている。かつてデスクトップパソコンに焦点を絞っていたフェイスブックにとって、この変化は懸念を誘う。同社自体、株式公開目論見書の中で、インターネットのモバイル化がもたらす事業リスクを指摘している。
大半のスマートフォンはアップルAAPL.OかグーグルGOOG.Oの基本ソフト(OS)を使っている。フェイスブックがこれらのスマートフォン上でうまく機能しないなら、「グーグル+(プラス)」など競合するSNSが優位に立ちかねない。
インスタグラム買収によりフェイスブックが市場の支配権を手にできる可能性はある。フェイスブックは「当社の商品が持つ類似の特徴を伸ばす」という、これまでの経験を生かしたい意向だ。インスタグラムはウェブ上に写真を載せる最も簡単な方法を編み出し、モバイルユーザーの関心を引き付けることに成功した。これらはフェイスブックが他のSNSと競う上で価値ある技術だ。
フェイスブックの潜在的投資家にとって気掛かりなのは、コンピューター技術に強いマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)と愉快な仲間たちがなぜ、自社版インスタグラムを開発できなかったのかということだ。ザッカーバーグ氏は、今回の買収は単発だと言う。「これほど大勢の人々がフェイスブックを愛しているのは、当社が最高の写真共有体験を提供しているのが理由の1つであり、2社が一緒になることには価値があるはずだと考えた」
しかし、こうした前例を作ったことは心配の種だ。フェイスブックが強みと考える分野をベンチャー企業が浸食する度に、財布を取り出して防衛を迫られることを意味するのであれば。そんなことでは、途方もなく高い公開価格は正当化できない。
<背景となるニュース>
●フェイスブックは9日、写真共有アプリのインスタグラムを現金と株式交換を併せて10億ドルで買収すると発表した。フェイスブックとして過去最大の買収となる(here)。
●インスタグラムのアプリには「iPhone(アイフォーン)」ユーザー3000万人以上が登録している。先週はアンドロイド向けのアプリも公開し、12時間で100万人を超えるユーザーが登録した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています--
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイター Breakingviewsのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。