for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

焦点:中国を警戒するASEAN、インドの役割拡大を期待

[ニューデリー 19日 ロイター] インドネシアから今週、隊列を組んだ自動車の一団がごう音を響かせてインド北東部に到着した。経済成長を続けるインドとASEANの結びつき強化を象徴する動きだが、8000キロに及ぶ道程には悪路も多く、関係強化には課題が多いことも暗示している。

12月19日、南シナ海での領有権問題は地域で最も大きな火種になっているが、ASEAN加盟国の一部には、アジアのもう1つの大国インドを巻き込もうとする動きがある。写真はニューデリーで2010年12月撮影(2012年 ロイター/B Mathur)

インドネシアからのキャラバン隊は、密林や山岳地帯を抜け、ミャンマーと国境を接するインド東部マニプールに入った。ニューデリーでは20日からインドとASEANの通商担当の閣僚級会合や首脳会合が開催されるが、それに先立って行われるイベントに参加するためだ。

インドのクルシード外相はロイターの取材に対し、ニューデリーでの会合はASEANとの協力20周年を祝う儀式的なものだと説明した。しかしその背景には、南シナ海で領有権主張を強めている中国の存在も見え隠れする。

ASEAN加盟国の一部は中国の主張に真っ向から対立しており、領有権問題は地域で最も大きな火種になっている。米国は冷静な対応を呼び掛けているが、ASEANの一部には、アジアのもう1つの大国インドを巻き込もうとする動きがある。

インドにとっては、ASEANとの関係強化は、世界の成長センターの1つである東南アジア市場への参入や、自国の経済成長に必要な原材料の確保という意味合いがある。

インドとASEAN加盟10カ国の間の貿易額は、2008年の470億ドルから、2011年は800億ドルに拡大した。今回のニューデリーの会合では、投資やサービスの自由化を進める協定も締結される可能性がある。

インドの格安航空のスパイスジェットSPJT.BOは、向こう数週間以内にミャンマーへの直行便を開設する計画だ。

しかし、東南アジアにおけるインドの存在感は、中国に比べると格段に小さい。中国とASEANはすでに自由貿易協定(FTA)を結んでおり、貿易額は昨年に史上最高となる3630億ドルに達した。

クルシード外相は「(ASEANとの間で)我々に必要なのは、接続性の大幅な向上だ」と指摘。陸路・空路ともに整備が必要だとの考えを示した。

<米中とのバランス>

インドで初めて開催されるASEAN首脳との会合は、インドが東南アジアとの関係を進めていく上での分水嶺となる。会合には、シンガポール、カンボジア、マレーシア、ベトナムからは首相が、ミャンマーとインドネシアからは大統領が、フィリピンからは副大統領が出席を予定している。

インドは中国と国境を接する一方、アジア重視に舵を切ったオバマ米政権とは緊密な協力関係を深めており、両国とバランスを取らざるを得ない難しい立ち位置にいる。

クルシード外相は、中印間の関係が緊張化する可能性を否定し、インドは南シナ海で領有権の主張はないと強調。「(南シナ海の領有権争いは)解決できない種類の問題ではなく、我々が直接関与する問題でももちろんない。海洋法に対する順守と敬意があるべきだとはっきり言ってきた」と述べた。

しかし、インドの「東方政策」と自国の経済成長を支えるためのエネルギー確保の必要性は、共同軍事演習の増加など、地域での軍事行動拡大にもつながっている。

インド海軍のトップであるジョシ参謀長は今月に入り、南シナ海での海洋資源探査などを保護するため、必要であれば艦隊を派遣する用意があると語った。

インドは、領有権問題が議論される海域でベトナムと石油・ガスの探査を行っており、将来的には、マラッカ海峡を通じた液化天然ガス(LNG)調達も増える可能性が高い。

ただ、東南アジア研究所(シンガポール)の上級研究員イアン・ストーリー氏は、インドはベトナムとの結びつきは強いものの、ASEAN加盟国の多くに影響を与えることはまだできていないと指摘。「インドは口では言うが、行動が伴わないというのが共通認識だ」とし、「東南アジアで存在感を発揮するようになるのは当分先だ」と語っている。

(原文執筆:Frank Jack Daniel記者、翻訳:宮井伸明、編集:本田ももこ)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up