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焦点:アジアのヘッジファンドが苦戦、昨年は損失や閉鎖相次ぐ

[香港 21日 ロイター] アジアのヘッジファンドにとって2011年は厳しい年となり、顧客が逃げて資産規模は縮小し、閉鎖の動きも加速した。多くのファンドが「ロングオンリー」戦略に傾いていることの弊害も明らかになった。

2月21日、アジアのヘッジファンドにとって2011年は厳しい年となり、顧客が逃げて資産規模は縮小し、閉鎖の動きも加速した。写真は2010年、香港で撮影(2012年 ロイター/Tyrone Siu)

2008年以来のゆっくりとした回復軌道が昨年脅かされたことで、アジアのヘッジファンド業界は生まれ変わる必要のあることが浮き彫りになった。アジアでは欧米に比べて市場の取引高が少ないため、欧米ヘッジファンドの戦略を真似るのは難しい場合がある。

調査会社ユーレカヘッジによると、昨年のアジアのヘッジファンドは9月から12月にかけて4カ月連続で資金流出超となり、資産規模はピークだった2007年12月の1760億ドルから520億ドル減少した。業界の拡大に賭けていた新規参入ファンドや、プライムブローカーなどヘッジファンドへのサービス提供業者は困難に見舞われている。

2008年以来初めて閉鎖数が新規参入数を上回り、3億ドルを運用するサデウス・キャピタルなどの著名ファンドや、創業10年以上の歴史があり一時は18億ドルを運用したボワイエ・アラン・インベストメント・マネジメントも閉鎖した。

投資家は成績の悪いファンドを罰し、ファンドマネジャーも厳しい一年を経て今後の計画を考え直すとみられるため、今後数カ月間で閉鎖はさらに増えそうだ。

ユーレカヘッジの推計では、アジアのファンドは10社中7社程度で純資産価値(NAV)が過去のピーク、いわゆる「ハイ・ウォーター・マーク」を下回っている。ヘッジファンドは、ハイ・ウォーター・マークを上回った場合に成功報酬を徴収できる。通常は運用手数料が2%なのに対し、成功報酬は20%。

調査会社ヘッジファンド・インテリジェンスのアジア担当ヘッド、アラドナ・ダヤル氏は「業界が転換点を迎えていることの表れだ。新規参入のハードルはかつてないほど高く、閉鎖へと続く下り坂は急で滑りやすい。事業の持続可能性が一番の懸案事項だ」と話した。

ダヤル氏の推計では、昨年はアジアを対象としたヘッジファンド67社が閉鎖したのに対し、新規参入は58件にとどまった。

2011年末までの3年間で見ると、ユーレカヘッジのアジア・ヘッジファンド指数とMSCIアジア指数.MIAS00000PUSとの月次リターンの相関係数は0.92だった。完全に相関している場合の係数1に近く、ヘッジファンドが投資家の資金を大きく膨らませることができなかったことが分かる。

香港のファンド・オブ・ヘッジファンズ、ビジョン・インベストメント・マネジメントのダニエル・ワン最高投資責任者(CIO)は「彼らはショートも振るが、ロングに傾く傾向がある。ポジションを中立やネットショートにするのはまれだ」と言う。

アジアでは借りられる株が少なく出来高も小さいため、米国などの市場に比べてショート戦略を採るのが難しい。

データ・エクスプローラーズによると、アジアで借りられる株の残高は約6648億ドルと、欧州の約5分の1に相当し、米国の10分の1に満たない。

<2011年も厳しい年に>

昨年は欧州債務危機、米景気回復の遅れ、日本の原発事故といった悪材料が重なり、ヘッジファンドは全体で約4%の損失を出した。

ユーレカヘッジによると、アジアに投資するヘッジファンドは平均8.5%の損失。年間で損失を出したのは過去4年間で2度目だ。

この結果、投資家がファンドから資金を引き揚げ、多くのファンドが閉鎖に追い込まれた。

シンガポールのRSRキャピタルが閉鎖したほか、英ウェセックスはアジア太平洋ファンドを、シンガポールのコモド・キャピタルは旗艦グローバル・マクロ・ファンドのKCアジアを、それぞれ閉鎖した。

ヘッジファンド・コンサルタント会社、GFIAの創業者ピーター・ダグラス氏は「今年はファンドマネジャーによるファンド閉鎖や独立、大手ファンドへの転入など、縮小の動きが一段と進むだろう」とした上で、銀行の自己勘定取引部門が縮小しているため、銀行を辞めたトレーダーによるヘッジファンドの設立も多そうだが、「どの程度資金を調達できるかは疑問だ」と述べた。

バークレイズ・キャピタルの予想では、2012年に世界のヘッジファンド業界に流入する新規の資産は約800億ドル。また、投資家は既存資産約3000億ドルをヘッジファンド内外で動かして再配分しそうだという。

シンガポールのキングズミードなど、新規顧客を引き付けるために手数料を引き下げているヘッジファンドもある。

<資産規模が重要>

ユーレカヘッジによると、アジアのヘッジファンド業界は2008─09年のショックからまだ完全に立ち直っていない。当時は400億ドル以上の資金が同業界を離れ、約300のファンドが閉鎖された。

資金の一部はセンリガン・キャピタルやアゼンタスなどの新規参入ファンドに再投資された。これら2つのファンドは、2008年以降のアジアのヘッジファンド業界としては数少ない10億ドル超の規模を持つ。

しかし依然として大半は小規模ファンドで、欧米機関投資家の資金を呼び込むには十分な規模とインフラを備えていない。

投資家は今後、アジアに投資している世界規模の著名ファンドを好みそうだ。

最近閉鎖したアジアのヘッジファンドの最高投資責任者は「現在のような時期には、大手は一段と大きくなる。特にグローバル規模のファンドはそうだ」と話す。

新規参入を準備中のファンドも幾つかある。しかしバンク・オブ・アメリカBAC.Nのアジア太平洋地域ファイナンシング・セールス・ディレクター、ジェームズ・ファロン氏は「後ろ盾があって最低2000─2500万ドル規模で出発できるのでない限り、多くのプライムブローカーはさほど興味を示さないだろう」と述べた。

(Nishant Kumar記者)

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