for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:米欧金融政策への思惑でたまる「円高マグマ」

田巻 一彦

11月6日、米欧金融政策への思惑で円安が進みにくくなっている。何かショックが起きれば、市場の想定を超えて円高に進む可能性も。写真は2010年10月撮影(2013年 ロイター)

[東京 6日] -物価上昇率の低下を背景に欧州中銀(ECB)に追加緩和の圧力がかかる一方、米国でも物価上昇率が米連邦準備理事会(FRB)の目標を大幅に下回って推移しており、量的緩和政策縮小(テーパリング)着手が大幅に先送りされる可能性が高まっている。

こうしたマクロ環境の下で、短期的に円安が進みにくい地合いが形成されている。ショックが発生した場合は、市場の想定を超えて円高に進むマグマが溜まっているようにみえる。

<大幅低下したユーロ圏のCPI>

市場では、7日の欧州中銀(ECB)理事会で追加緩和を期待する声が出るなど、欧州経済が直面しつつあるディスインフレ現象への危機感が台頭しつつある。

ただ、シュタルク前ECB専務理事は5日、ユーロ圏にデフレリスクは見られないとの認識を示し、追加緩和を織り込もうとするマーケットの動きをけん制した。

<米でもテーパリング先送り観測が台頭>

一方、米国でも物価上昇率はFRBの目標の2%を大きく下回った水準で推移。9月の食品とエネルギー価格を除いたコア個人消費支出(PCE)価格指数は前年比プラス1.2%、9月CPIも同1.2%と低位で安定した格好だ。

この点に関連し、セントルイス地区連銀のブラード総裁は、物価上昇率は依然としてFRBの目標を大きく下回っており、テーパリングに着手する前に物価上昇率の拡大を確認する必要があるとの見解を表明した。

また、FRBのパウエル理事は4日、米金融政策は当面、かなり緩和的となる公算が大きいとの見方を示している。

<突出した日銀の緩和姿勢、市場の印象に変化>

今年4月以降、「黒田緩和」で突出してきた日本の緩和姿勢が、足元における米欧での物価上昇率の低下基調を背景に、米欧との差が縮まった印象を市場に与える役割を果たしているように見える。

日銀の緩和姿勢に何ら変化はないばかりか、不測の事態が発生し、リスクが高まった場合は、適切に対応する姿勢も明確にしている。日銀としては最善の対応をしていると言えるが、米欧日の金融政策スタンスをマーケットは相対的に捉える。そこが大きなポイントだ。

<急速に後退する円安の期待>

その結果、マーケットでは短期的な円安進展への期待感が、急速にしぼんでいるようだ。100円が壁として意識され、105円方向にドル高/円安が進むという声が後退。ドル/円は97─98円台でこう着感を強めている。

今年5月までの、円安トレンドを強く信じていた市場のセンチメントと比べ、足元の市場参加者の思惑は、かなり変化しているようだ。特にヘッジファンドなどの海外勢は、円安/日本株高に沿った売買を取りやめ、円資産関連の取り引きに関しては様子見を決め込むところが多くなっているようだ。

このことは、想定外のイベントが発生し、マーケットがリスクオフ心理に傾いた場合、予想以上に円高が進む可能性があることを示唆していると考える。アベノミクスの発動以来、市場では「円高は進まない」との認識がコンセンサスとなってきたが、水面下ではどうやら「円高のマグマ」が溜まり出しているようだ。

<アベノミクス再進撃の切り札は何か>

昨年末からのアベノミクスの展開で、攻めの姿勢を示して円安/株高を演出してきた安倍晋三政権は今、米欧から影響を受けても決め手がないという状況に直面しつつある。言い換えれば、政権発足以来の進撃がいったん、停止しつつあると指摘できる。

再進撃を開始するための切り札は何になるのか──。海外勢をはじめ多くの市場関係者は、すでにテーブルに乗っているカードでは満足しないだろう。市場の満足度は、為替の水準と株価で測れるのではないか。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

*見出しを一部変えて再送します。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up