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焦点:JPモルガンとゴールドマン、デジタル技術で英消費者金融に挑戦

[ロンドン 12日 ロイター] - 英国の消費者金融市場はこれまで幾多の外国勢が進出を目指しながらも、結局は撤退の憂き目を見てきた。そこに対し、米大手銀行JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスがデジタル技術を武器に、足場を確保しようと挑戦している。

英国の消費者金融市場はこれまで幾多の外国勢が進出を目指しながらも、結局は撤退の憂き目を見てきた。そこに対し、米大手銀行JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスがデジタル技術を武器に、足場を確保しようと挑戦している。写真はJPモルガンのロゴ。ロサンゼルスで2010年10月撮影(2021年 ロイター/Lucy Nicholson)

JPモルガンとゴールドマンは、それぞれ米国で展開するリテールブランドの「チェース」と「マーカス」が世界的に展開できるかどうか試す場所として英国を選んだ。ただアナリストによると、既存のプレーヤーにがっちりと固められた顧客層を幾つかの事業で奪わなければならないという課題が存在する。

成功の鍵は、より洗練されたテクノロジーと、既存組よりも魅力的な取引条件を顧客に提供することができるかにかかっている。現在、英リテール市場を牛耳るのは、ロイズ・バンキング・グループ、ナットウエスト・グループ、バークレイズ、HSBCホールディングス、バンコ・サンタンデール、ネーションワイド・ビルディング・ソサイエティの6行だ。

そしてアナリストの見立てでは、市場に食い込むのは難しい。なぜなら顧客と既存プレーヤーとの結びつきは非常に強固だからだ。顧客からすればわざわざ預金を移したり、別の口座を開設したりするのは面倒なだけだと思ってもおかしくない。

グッドボディの銀行アナリスト、ジョン・クロニン氏は「英国で地盤を築くために費やす時間の長さは過小評価されやすい。何年もかかるのに」と話す。

JPモルガンは既に、オンラインの資産運用助言を手掛けるナツメグを7億ポンドで買収。そのテクノロジーは新型コロナウイルスのパンデミック中に膨らんだ貯蓄を取り込む態勢に役立つ。

ゴールドマンも2018年にマーカスの預金事業を開始して300億ドルを集めたことを踏まえ、来年には自動資産管理のようなサービスを提供する計画だ。

メトロやモンゾといった新興デジタル銀行も英国市場に参入したが、まだ既存大手勢の牙城を崩せず赤字が続く。ドイツのN26は2年で事業を引き揚げてしまった。

デジタル銀行のコンサルティング会社11:FSの調査責任者サラ・コシアンスキ氏は「英国での(リテール)サービスは不足していない。サービスを提供する既存プレーヤーは数多く、誰がそんな場所に向かっていこうとするだろうか」と述べた。

<試金石>

JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)は先月、世界的な事業展開に向けたテストケースとして英国を利用していると述べた。「英国は始まりであり、うまく回るようなら他の案件も検討する」という。

ダイモン氏はデジタル商品の投入により、JPモルガンが支店維持コストなしにリテール戦略を最大限機能させられると強調した。

JPモルガンは米国最大の銀行で、3月末時点の預金量は1兆ドルを超える。昨年の収入に占めるリテール事業の割合は42%に達し、全米では今年の夏が終わるまでに50州のうち48州で支店を設ける計画。ただリテール事業をさらに成長させるには、米国外に手を広げる必要もある。

ゴールドマンにとっても、消費者金融事業はソロモンCEOが掲げる経営改革の柱の1つになっている。ソロモン氏は、変動の大きいトレーディングや投資銀行の収入への依存度を下げたい考えだ。

まだ立ち上げから日が浅い消費者金融事業であるだけに、昨年の収入に占める割合は5%弱どまり。第1・四半期に預金量がようやく1000億ドルを超えたばかりだ。JPモルガンなどと比べると小規模だが、よりコストの安い資金の調達や新たな収益源を得るべく急成長を続けている。

英国市場を目指す両行の動きについてモルガン・スタンレーの銀行株アナリスト、ベッツィー・グラセック氏は「双方とも米国でやっている取り組みを反映したものだ。彼らは貯蓄から投資、借り入れまでを全ての消費者に提供しようとする意欲がその論理的根拠になっている」と指摘した。

アナリストは、両行が英国を選んだ理由として、決済システムが確立されていることや、しっかりした規制の枠組みや、アフルエント層(準富裕層)と優秀な人材の存在を挙げる。

銀行に規制関連情報を提供するキューブのベン・リッチモンドCEOは「英国は、フィンテックの仕組みが発展しているので魅力的な市場だ。専門的な人材も豊富な上に増え続けている」と述べた。

また英国は、銀行の顧客が自分の金融データを完全にコントロールできる「オープンバンキング」の面でも先行しているので、取引銀行の乗り換えが比較的容易とも言える。

<コストに見合う成果か>

とはいえ英国市場には厳しい部分もある。英大手4行は昨年、超低金利が響いて合計収入が12%減少。顧客がデジタル取引に流れ、訪問客が少なくなった支店を減らしてコストを圧縮している。

一方でモンゾやスターリング、レボルトといったデジタル銀行の業績も全面的に好調というわけではない。

それでも一部のアナリストは、JPモルガンとゴールドマンが預金から住宅ローンまで相当な市場シェアを獲得できる道はあるとみている。フォレスターのシニアアナリスト、オーレリー・ロスティス氏は「新参組は競争相手よりコストを抑え続けることでやっと勝負になる。JPモルガンとゴールドマンは、ゼロから技術を構築するか、フィンテック買収を通じて新たな能力を得られるほどの資金力があるという点で、優位にあるかもしれない」と語る。

グッドボディのクロニン氏が、参入余地があるとみるのは住宅ローンだ。業界団体のデータによると、昨年は上位10社が市場の85%を占めた。「特にコストを抑制し続けることができるなら、住宅ローンのリターンは非常に妙味を持つ可能性がある」という。

ウェルズ・ファーゴの銀行アナリスト、マイク・メイヨ氏は、最終的にはこれらの取り組みにはそのコストに見合う価値が求められると主張。例えばJPモルガンが17年に全米でデジタル銀行を設立してたった1年で、想定したような成果を発揮できなかったことを理由に店じまいしたケースに触れた上で「彼らはテクノロジー投資のリターンを証明しなければならない」と警告した。

(Anna Irrera記者、Iain Withers記者)

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