[東京 4日 ロイター] - 岸田文雄首相は4日、伊勢神宮(三重県伊勢市)参拝後の記者会見で年内に衆議院解散に踏み切る可能性を問われ「税が上がる前に選挙があることも日程上、可能性の問題としてあり得る」と述べた。タイミングについては「いずれにせよ解散総選挙については専権事項として時の総理大臣が判断するもの」として明言を避けた。
岸田首相は昨年末のテレビ番組で、防衛増税を実施する前に衆院の解散総選挙があり得るとの認識を示していた。
首相は会見で、現在の衆院議員の任期満了は2025年10月までであり、それまでに衆院選はいつでもあり得ると指摘。一方、防衛費確保のための税制措置は24年以降の適切な時期に実施するとしているとし、日程上、増税前に衆院選が行われることはあり得ると説明した。
<先送りできない課題に正面から挑戦>
昨年後半は安倍晋三元首相の国葬の是非で世論が二分されたほか、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係や「政治とカネ」を巡る問題で閣僚が相次ぎ辞任するなど、内閣支持率が急速に低下した。
岸田首相は、今月下旬に通常国会の召集を控え、未来の世代に先送りできない課題に正面から挑戦し、一つ一つ答えを出していくと述べた。重点課題として日本経済に新しい好循環を起動していくこと、少子化対策に挑戦すること、主要7カ国(G7)議長国・国連安保理非常任理事国として世界の平和と繁栄に主導的役割を果たしていくことの3つを上げた。
5月には首相の地元である広島県でG7首脳会議(サミット)を主催する。首相は9日からフランス、イタリア、英国、カナダ、米国を歴訪することを明らかにし、特に米国のバイデン大統領との会談で「日本外交・安全保障の基軸である日米同盟の一層の強化を内外に示し、緊密な連携を改めて確認したい」と語った。
<「この30年間、想定されたトリクルダウン起きず」>
首相は政権の看板政策「新しい資本主義」について、日本経済が新たな方向に踏み出すための処方箋だと強調。「賃上げと投資という2つの分配を強固に進め、持続可能で格差の少ない力強い成長の基盤を作り上げていく」と語った。
首相は「この30年間、企業収益が伸びても期待されたほどに賃金は伸びず、想定されたトリクルダウンは起きなかった」と指摘。賃金が毎年伸びる構造をつくるため、今年の春闘についても「インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」と要請した。
(杉山健太郎)
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