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焦点:インフレ下で輝く「デフレの勝ち組」銘柄、値上げの成否で選別も

[東京 19日 ロイター] - 日本でもインフレが進行する中、株式市場ではかつてデフレ下で注目された銘柄群の上昇が目立っている。消費者の節約志向が高まる中で、低価格商品の売れ行きが好調であるためだ。一方で、仕入れ価格の上昇にも直面しており、今後は値上げの成否が銘柄物色の鍵を握るとみられている。

 日本でもインフレが進行する中、株式市場ではかつてデフレ下で注目された銘柄群の上昇が目立っている。写真は東京証券取引所で2018年10月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

<「削られない消費」>

イオンは、2023年2月期第1・四半期の連結純利益が193億円と過去最高となった。業績を押し上げた要因の1つは、値上げが進む中で価格を維持したプライベートブランド(PB)だ。

PBの「トップバリュ」では、特に他社で値上げが進む「食用油やマヨネーズなどでシェアを拡大した」(コーポレートコミュニケーション部)という。消費者の生活防衛意識が高まる中で、堅調な売り上げを維持した。

4月以降の同社株価は8%上昇と、日経平均の4%、TOPIXの2%を上回っている。「様々なモノの値段が上がる中、これまでは他社ブランドを買っていた消費者が、価格の低い同社のPB商品を買う動きが広がるとの期待感がある」と、ミョウジョウ・アセット・マネジメントの代表取締役、菊池真氏は指摘する。

松井証券の投資メディア部長・窪田朋一郎氏は、日本の場合は賃金上昇が十分ではないことから「消費者の可処分所得は変わっておらず、生活防衛的な銘柄群は強い」と指摘する。中でも、食料品や生活必需品は「削られない消費」であり、インフレ下でも逆風が吹きにくいという。

アパレル業界では「ユニクロ」を手掛けるファーストリテイリングの株価が堅調だ。4月以降、39%の大幅な株高となった原動力はやはり業績だ。7月に発表した第3・四半期(3―5月)業績は過去最高。同社の中でも低価格商品を扱うジーユーの売上収益は前期比27%増となっている。

低価格帯の衣料を手掛けるしまむらの7月の既存店売上高は前年比16%増と増収基調で、株価は4月以降14%上昇。300円均一の雑貨事業などを手掛けるパルグループホールディングスの株価も同57%上昇と大きな上昇となっている。

●各社の株価パフォーマンス

企業名 4月以降18日までの伸び率

ファーストリテイリング 39%

イオン 8%

味の素 3%

しまむら 14%

パルグループHD 57%

神戸物産 8%

キッコーマン 13%

セリア 1%

日経平均 4%

TOPIX 2%

<値上げが受け入れられるか>

今後は、コスト高を値上げでカバーできるかが株価の評価のポイントになりそうだ。物流費や資材費の高騰、円安による輸入コストの上昇に各社とも直面しているが、低価格が魅力となっている商品の価格を上げることは売り上げを大きく左右する可能性がある。

キッコーマンは今年2月から醤油を希望小売価格で約4─10%値上げしたが、23年3月期の連結純利益(国際会計基準)は前年比4%増の見通しだ。株価も堅調で「値上げをしても消費者が離れていかないということが数字で確認できた」(ミョウジョウの菊池氏)という。

味の素も21年以降、値上げを複数回発表しているが、23年3月期第1・四半期(4─6月)事業利益は前年同期比4.1%増と増益基調を維持している。株価は年初来高値の水準にある。

GCIアセットマネジメントのポートフォリオマネージャー・池田隆政氏は、インフレ下でも価格抵抗力がある業種や企業は底堅いとし、製粉会社や調味料などを扱う業態は好調だと指摘する一方、「典型的に逆風が吹きやすいのは値上げしにくい100円均一ショップなどを手掛ける業態」との見方を示している。

(浜田寛子 編集:伊賀大記)

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