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コラム:欧州経済、悲惨な夏の後に待ち受ける正念場の秋=カレツキー氏
2014年10月6日 / 05:27 / 3年後

コラム:欧州経済、悲惨な夏の後に待ち受ける正念場の秋=カレツキー氏

[3日 ロイター] - 2日の欧州中央銀行(ECB)理事会に対して市場は厳しい反応を示し、欧州は2012年の危機に匹敵する正念場へと近づいた。7─9月期が終わった今、市場はユーロを2012年9月以来の安値まで押し下げ、状況がひどく悪化したとの審判を下している。

 10月3日、2日の欧州中央銀行(ECB)理事会に対して市場は厳しい反応を示し、欧州は2012年の危機に匹敵する正念場へと近づいた。昨年1月撮影(2014年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

同期の欧州株式市場はユーロ圏危機のどん底以降では最悪。問題は悲惨な夏の後にしのぎやすい秋が訪れるか、あるいは夏の豪雨が破壊的な嵐に発展するかどうかだ。

ECBが2日に何ら決然とした行動を起こさなかったことを踏まえると、答えは今後数カ月間の3つのイベントに掛かってくる。10月26日のウクライナ最高会議(議会)選挙、10月末にECBが完了する銀行ストレステスト(健全性審査)、そしてフランスとイタリアの財政計画への判断だ。両国の財政計画は10月8日にミラノで開く「成長サミット」で概要が示され、月末には欧州委員会が詳細を公表する。

これらのイベントが欧州経済と金融市場の双方にとっていかに重要な意味を持つかを理解するには、夏の景気停滞の原因を検証する必要がある。しばしば欧州経済の元凶とされる一般的な競争力やダイナミズムの欠如だけではない。ユーロが対ドルで現在より10%高い水準で天井を付け、ユーロ圏株式市場が米株式市場との対比で現在より18%高かった5月初め以来、具体的に何がおかしくなったのかを考えねばならない。

突然の景気悪化を説明できそうな要因は3つある。第1は臆病な金融政策に対する失望であり、このことは2日のECB理事会への市場の反応によって確認された。ECBは6月初め、南欧の信用収縮を和らげるためにマイナス金利その他の措置を発表したが、ほどなくしてユーロ圏の銀行が貸し出しを縮小し続けていることが明らかになった。銀行が貸し出しを増やせるだけの資本を欠いていることが、少なくともその一因である。

第2に、ドイツの政治家らがこの夏中、フランス、イタリア両政府に減税計画を撤回するよう圧力を掛け続けたことだ。減税を実施すれば財政赤字がユーロ圏の目標を超える恐れがあった。

第3にウクライナ情勢が挙げられる。ロシアが3月半ばにクリミアを併合した時点で情勢はいったん沈静化したかに見えたが、5月のウクライナ大統領選と、7月17日のマレーシア航空の航空機撃墜を受けて事態は急転。対ロシア制裁も相まって消費者の景気信頼感は急激に悪化し、ユーロ圏の一強たるドイツで企業の設備投資が落ち込んだ。

まずウクライナ情勢だが、現在は停戦状態が維持されている。さらに良いことに、現実派のポロシェンコ大統領と好戦的なヤツェニュク首相の間に横たわるかに見えた亀裂が、実は26日の選挙後にロシアと合意を結ぶことへの根本的な反対というよりは、選挙前の政治的ポーズの色彩が濃いことが次第に分かってきた。そうであるなら、ウクライナで戦争が激化することへの不安がドイツほかの欧州経済に影を落とすことは、間もなくなくなるだろう。

欧州の財政政策の見通しも今後数週間で好転するはずだ。来週のミラノ成長サミットはイタリアのレンツィ首相が主催し、その狙いはほかでもない、メルケル・ドイツ首相を説得して全欧州レベルの一定の財政刺激と仏伊の減税に合意させることにある。見返りとしてより集中的な構造改革を約束するかもしれない。仮にメルケル首相が緊縮財政の緩和をおおっぴらに受け入れることを拒否するとしても、欧州連合(EU)の財政規則の解釈が柔軟化される可能性は高い。モスコビシ前仏財務相が欧州委の次期経済・通貨問題担当委員に指名されたのだから。

第3の、そして恐らく最も重要な要因として、ECBのストレステストによって南欧の信用環境が変化する可能性がある。ECBの主な景気刺激手段は「的を絞った長期資金供給オペ(TLTRO)」だ。

しかしこの政策は、銀行が貸出残高を増やせるだけの資本を備えていて初めて機能する。ストレステストの重要性はここにある。テストの明示的な目的は、すべての主要欧州銀の資本が十分であることに疑問の余地を残さないこと。現在の貸出残高だけでなく、現在の信用拡張にも耐えられるだけの資本だ。

主要銀行の資本が十全であるか、もしくは今景気サイクルで間違いなく最後となる信用できる資本調達計画を備えていることを、ECBが市場に納得させられれば、追加資本を提供する投資家は難なく見つかるはずだ。ひとたび銀行が十分な資本を確保すれば、ECBがオペや証券購入を通じて供与する超低利の資金が、特にイタリアとスペインにおいて信用収縮を和らげる可能性が現実味を帯びるだろう。

南欧の信用環境緩和と仏伊の小幅な減税、そして東欧の軍事衝突の減少が組み合わされれば、来年初めの景気回復に向けてしっかりした土台が整いそうだ。

しかし悪いニュースもある。過去数日間で、景気回復ストーリーの3つの主要な構成要素すべてに暗雲が漂った。ウクライナの停戦合意にもかかわらず、西洋諸国は対ロシア制裁を無期限で続けると示唆し、ドイツにとって最強の輸出市場のひとつであるロシア市場を傷付けるとともに、プーチン大統領が次期ウクライナ政権と妥協するインセンティブを取り上げている。

またECB幹部らは9月22日の週に、ストレステストがEU金融システムの大規模な資本再構築をもたらすという市場の期待は「おそらく行き過ぎ」だと釘を刺した。9月29日の週には欧州委員会が、財政の柔軟性を広げるどころか財政規則の解釈を厳格化する可能性があることを示唆した。

政治家は往々にして、大きな行動を起こす前に市場の期待を押し下げようとするものだから、これらはどれも杞憂に終わるかもしれない。しかしもし、欧州各国政府が本当に財政規律を緩めるのではなく強化し、銀行が資本増強を怠り、対ロシア関係がさらに悪化するようなら、欧州は悲惨な夏の後に長く暗い冬を迎えるだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*アナトール・カレツキー氏は受賞歴のあるジャーナリスト兼金融エコノミスト。1976年から英エコノミスト誌、英フィナンシャル・タイムズ紙、英タイムズ紙などで執筆した後、ロイターに所属した。2008年の世界金融危機を経たグローバルな資本主義の変革に関する近著「資本主義4.0」は、BBCの「サミュエル・ジョンソン賞」候補となり、中国語、韓国語、ドイツ語、ポルトガル語に翻訳された。世界の投資機関800社に投資分析を提供する香港のグループ、GaveKal Dragonomicsのチーフエコノミストも務める。

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