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アングル:混乱のカザフスタン、ネット遮断で数百万人が「暗闇」

[10日 トムソン・ロイター財団] - カザフスタン政府によるインターネット遮断は、1月10日で6日目を迎えた。デジタル人権擁護団体は、何百万人もの国民が、基本的なサービスを利用しにくく、また国内を揺るがす反政府抗議行動に関する情報へのアクセスも困難な状況に陥っていると話している。

 カザフスタン政府によるインターネット遮断は、1月10日で6日目を迎えた。デジタル人権擁護団体は、何百万人もの国民が、基本的なサービスを利用しにくく、また国内を揺るがす反政府抗議行動に関する情報へのアクセスも困難な状況に陥っていると話している。写真は警備に当たるカザフの軍関係者ら。同国最大都市アルマトイで8日撮影(2022年 ロイター/Mariya Gordeyeva)

世界のネット接続状況を監視する英「ネットブロックス」によれば、先週続けざまに暴動が発生したカザフスタンでは、10日に数時間、接続が回復したものの、まもなく再び遮断された。

ネットブロックスは「今日早い時間帯に、この5日間で初めて、短時間ではあるがネットに接続できたユーザがいた」とツイッターに投稿している。

旧ソ連からの独立以来30年間で最悪の暴動により、カザフスタン最大の都市アルマトイは、数千人の逮捕、複数の公共建造物への放火という事態に陥った。ただ、街路は10日にはほぼ平穏に戻っている。

同国のカシムジョマルト・トカエフ大統領は、クーデターの企てを鎮圧したと語った。

ネットブロックスによれば、当局は5日、ネット接続を完全に遮断したという。背景には、1日に発表された燃料価格引き上げに対する抗議が、現政権とヌルスルタン・ナザルバエフ前大統領(81)に対する全国的なデモに発展する状況があった。

カザフスタンの首都ヌルスルタンの住民で、本名を伏せることを条件に取材に応じた「アイシャ」さんは、事務所で仕事をしている最中にネットが遮断され、自分の国で何が起きているのか知るための情報源が何もなくなってしまったと話す。

「私のテレビは、ネットに接続されていなければ役に立たない。ラジオはニュースをまったくやらず、娯楽番組だけを流していた」

<現金以外は使用不能に>

その数日前には同国西部の都市ジャナオゼンで抗議行動が始まっていたため、当局はすでに国内の一部でネット遮断、ソーシャルメディアへのアクセス制限を開始していた、とデジタル人権擁護団体のアクセス・ナウは指摘する。

スイスに本拠を置くインターネット企業「プロトン」は、抗議行動が始まったばかりの頃、カザフスタンからの仮想プライベートネットワーク(VPN)サービスへの申込みが1000%増を記録したと語った。カザフ国民がネット接続を維持しようと試みたからだ。

だが、VPN接続によりサービス停止を回避する方法も5日には使えなくなった。ネット接続が全国的に遮断されたからだ。

「VPNが有効なのは、標的型の遮断を回避する場合だ。(略) だが、ネット自体に接続できなくなってしまえば話は別だ」と、プロトンで広報を担当するエドワード・ショーン氏は語った。「物理的に接続できなければ、当社のサービスにもたどり着けない」

米国を本拠とするデジタル人権擁護関連の非営利団体(NPO)インターネット・ソサエティで欧州政府関連業務・啓発担当マネージャーを務めるカルム・ボゲ氏は、今回のネットワーク遮断は、これまでカザフスタンで見られた例のなかでも最悪だったと語る。

ネットブロックスによれば、接続は1日数時間だけ断続的に一部復旧したが、国内どこでもというわけではなかったという。

アイシャさんの話では、カード端末やATMも稼働しなくなり、手許に現金がなかった人は食品の購入にも困るなど不便を強いられたという。

さらに、携帯電話の利用枠チャージができず、電波も途切れがちになったため、親族や友人への連絡も難しくなったとアイシャさんは言う。

チェコの首都プラハ在住のボゲさんの場合、カザフスタン出身のパートナーはこの3日間、母国内の家族に連絡が取れず、安否を確認できなかったという。

国内各地の都市では、治安部隊とデモ隊との衝突で数十人の死亡者が出たとみられている。

<国内外の企業も困惑>

インターネットの全面遮断は、いくつか想定外の影響を生んでいる。

先週、ビットコインを支えるグローバルなネットワークの計算能力は急激に低下した。カザフスタンはビットコインのマイニング(採掘)で世界第2位の規模を誇る中心地であり、恐らく同国にあるサーバーがダウンしたと考えられる。

だが前出のボゲさんは、証券取引所の取引からフードデリバリーの注文に至るまで、他にも多くのビジネス活動がネット接続の喪失により機能停止に陥ったと語る。

「遮断はネットワークへの信頼を低下させてしまう」とボゲさんは言う。

「つまり、カザフスタン企業の場合、将来的にビジネスにネットを利用することを躊躇(ちゅうちょ)してしまう可能性がある。また他国のビジネスパートナーにとっても同様であり、カザフスタンへの投資意欲が削がれかねない」

10日、世界各国のデジタル人権擁護団体は連名で、カザフスタン全域で「例外なく」ネット接続を完全に復旧するよう要請した。

この共同要請に参加したアクセス・ナウは声明の中で「ネットの遮断で、より安全な環境が生まれることはない」と述べた。

「(接続遮断は)国家やそれ以外の主体が、人々に対する残忍な仕打ちの責任を免れるための隠蔽(いんぺい)を行う一方で、ジャーナリストや人権擁護活動家が、危機の中で生じている事態を厳しく監視することを極めて困難にしている」

カザフスタン大統領府にコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。

トカエフ大統領は7日に行った演説で、ネット接続が部分的に回復する旨を告知するとともに、ネット遮断は「好きなところに集まり、好きなことを言える権利」があると考える「自称アクティビスト」への対応だと語った。

大統領府のウェブサイトで公開された声明によれば、トカエフ大統領は「ネットへの自由なアクセスは、捏造や誹謗中傷、侮辱的言動、扇動的なアピールを自由に公表できるという意味ではない」と述べた。

10日には、アルマトイで数日ぶりにネット接続が数時間にわたり可能になったことを含め、生活が正常に戻る兆候が見られた。

「アイシャ」さんの話では、ヌルスルタンでは10日、日中はずっと問題なくネット接続が可能だったという。数日間はごくわずかな時間しか接続できず、多くのことを処理しようとしても困難だったことを思えば、歓迎すべき進展である。

「私の時間を管理するのは他の誰かではなく私自身だという、確かな自信が持てそうだ」と彼女は語った。

だが数時間後、彼女の携帯電話は再びつながらなくなった。ネットブロックスは、カザフスタンが再び「ほぼ全面的なネット遮断状態に突入した」と報じた。

(翻訳:エァクレーレン)

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