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コラム

コラム:弱い日本の消費、年度後半は二極化へ 低所得者に負担増

[東京 8日 ロイター] - 日本国内における夏場の消費は、新型コロナウイルスの感染拡大などによって弱かったことが8日に発表された総務省の8月家計調査でわかった。この先は緊急事態宣言の解除や「Go To」政策の復活で急回復するとの見方と、先行き不安やジリジリと上がり出した物価への警戒などで鈍い足取りになるとの声が交錯している。

日本国内における夏場の消費は、新型コロナウイルスの感染拡大などによって弱かったことが10月8日に発表された総務省の8月家計調査でわかった。写真は8月、都内で撮影(2021年 ロイター/Clodagh Kilcoyne)

筆者は、リベンジ消費が可能な富裕層と相対的に年収が低い層との間に消費行動の二極化が起こり、最終的に消費全体の伸びは小さく、年後半から年明けの国内経済は、米欧との成長率格差が鮮明になると予想する。

<8月消費はマイナス3%>

8月家計調査では、2人以上の世帯の実質消費支出が前年比3.0%減少となった。

ロイターの事前予測調査の同1.5%減よりも弱く、季節調整済み実質消費支出も前月比3.9%減と4カ月連続のマイナス。国内総生産(GDP)の5割超を占める消費のエンジンは失速中といえる。

このまま消費が今年度後半に冷え込めば、政府・日銀が描いているコロナ感染者の減少とともに内需が活発化するというシナリオとは、かけ離れた軌跡を描きかねない。

<消費楽観論に3つの材料>

ただ、政府・日銀のシナリオを支持する市場の声は、今のところ多数派を形成しているように思われる。この楽観的なシナリオを支えているのは、1)コロナ感染者の減少とワクチン接種の進展、2)緊急事態宣言の解除による規制緩和と「Go To」政策の復活などへの期待、3)この2年間使われずに積み上がった約20兆円の「強制貯蓄」を元手にしたリベンジ消費の登場──という要素だ。

消費が回復する条件は整いつつあり、秋が深まるにつれて旅行、飲食、その他のイベント関連など対面型サービスの需要が急テンポで回復。年末には、昨年に我慢してきたクリスマス関連の消費も加わって、消費が急速に回復して内需拡大の「火をつける」可能性があるとのシナリオだ。

<「Go To」 に手が出ない層の実感>

一方、悲観的な見方の背景には、1)冬場に新型コロナの第6波が襲来して、緊急事態宣言が復活する、2)ガソリンや食料品がジワリと値上がりした分を節約する心理が強まる、3)自動車など耐久消費財が品不足で買えない──などの要因を指摘する声がある。

このうち、コロナの第6波が重要なファクターになりそうだ。仮に第6波が来れば、楽観論の中心的な部分が崩れ、悲観的な見方が現実になる可能性が高まるだろう。

だが、仮に第6波が来なくても、消費回復シナリオには重大な「欠陥」があると指摘したい。それは、富裕層と相対的に所得が低い層のかい離が進み、富裕層の消費拡大が起きても、消費全体を力強く拡大させるには力不足という事態に直面する可能性があるからだ。

例えば、「Go Toトラベル」が今年11月から復活したとして、利用できるのは余裕のある生活をしている人々だけで、アルバイトを掛け持ちしながら収入の確保に懸命な人々には無縁の政策と言える。

国税庁の2019年分「民間給与実態統計調査」によると、正規社員の平均給与は年間436万4000円、非正規社員は174万6000円と2.4倍の差がついている。所得階層別では、年収300万円以下が給与所得者全体の37.8%を占める一方、年収800万円以上は9.6%にとどまる。

<ジワリと上がり出した物価>

所得が低い階層の人々にとって、足元で起きているエネルギー価格や食料品価格の上昇は、数字以上に「値上がり」の実感を高め、節約心理を強めることになるのではないか。

全国よりも公表が早い東京都の9月消費者物価は、総合指数が前年同月比0.3%の上昇、前月比では0.5%の上昇だった。このうち携帯電話の利用料金の値下げ分が、マイナス0.94%ポイントあり、この恩恵にあずからない人々にとっては、物価上昇の実感は1%台になっているのではないか。

また、電気代が4.8%、火災・地震保険料が11.1%、ガソリンが17.5%の上昇となっており、それぞれを支払った人にとっては「かなりの値上げ」という印象になっただろう。

つまり、毎月の収入から貯蓄に回すお金に余裕がない場合、生鮮食品を除いたコアCPIが前年同月0.1%上昇でも、負担感がかなり出てきたと思われる。

<自動車減産も消費にマイナス>

好景気にわいている局面では、富裕層の消費が全体をリードし、伸び率を高めることが多かったが、現在の状況の下では、個人消費のトータルの伸びは年末にかけても加速することはないのではないか。

また、自動車の生産が、半導体不足というボトルネックに直面し、注文してから納車まで3カ月以上かかることが常態化しているため、富裕層の消費の一角を占める自動車販売自体が思うように伸びないことも、消費の足を引っ張る要因として影響しそうだ。

日本の消費は、大方の想定よりも弱いという前提に立って、岸田文雄首相が経済対策を指示したのであればよいが、首相周辺や霞が関のスタッフの「進言」を真に受けて、消費はいずれ、自然に回復すると見ているなら、2022年になって米欧との成長率格差を見せつけられ、ぼう然とするリスクが高まると強く訴えたい。

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