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コラム:韓国がはまった外需依存とウォン高の悪循環=村田雅志氏
May 9, 2014 / 6:02 AM / 4 years ago

コラム:韓国がはまった外需依存とウォン高の悪循環=村田雅志氏

[東京 9日] - 今年1―3月期の韓国の国内総生産(GDP)は昨年10―12月期と同じ前期比0.9%増と市場予想を上回り、前年比では3.9%増と3年ぶりの高い伸びとなった。GDPからみた韓国景気は堅調といえる。

ただ韓国経済は、以前から指摘されているように外需に大きく依存したままである。経常収支黒字は1―3月期に過去最大を更新。GDP成長率に対する寄与度を需要項目別にみると、外需は前期比1.2%増と全体の伸び(同0.9%増)を上回った一方で、GDPの46%を占める家計消費は同0.2%増にとどまった。

家計消費が伸び悩む背景には賃金上昇の弱さがある。昨年10―12月期の家計可処分所得は前年比1.3%増にとどまった。失業率は3%台と低水準での推移を続けているが、賃金上昇につながっていない。

韓国経済が外需主導である以上、内需企業は家計への利益分配を強める余裕はないだろう。また、売り上げ拡大傾向にある輸出企業でも同様と思われる。輸出物価は3月時点で前年比4.2%の低下。同月のウォンの対ドルでの上昇ペースは約3%のため、輸出企業は外貨建てでも価格を年1%程度のペースで引き下げていることになる。輸出企業は外貨建てでの価格引き下げで販売数量の拡大を促しているといえ、こちらも家計(労働者)への利益配分を高める意向は持ちにくいと思われる。

<輸出拡大が止まれば景気失速>

家計消費が弱いままだと、韓国のディスインフレは当面、続くことになる。4月の消費者物価指数(CPI)は前年比プラス1.5%と韓国中銀が定めるインフレ目標レンジ(2.5―3.5%)の下限を大きく下回ったままだ。しかし韓国中銀は、雇用が拡大傾向にあることから、将来のインフレを懸念。同中銀の李総裁は、今後インフレが徐々に高まるとの見方を示しており、市場関係者の多くは今年後半から来年にかけて利上げが実施されるだろうと見込んでいる(5月9日の金融政策決定会合では政策金利は市場の予想通り2.50%に据え置かれた)。

韓国当局はウォン高を阻止すべくウォン売り介入を続けてきたが、今後は介入姿勢を軟化させる可能性も出てきた。国際通貨基金(IMF)は4月、ウォンが最大8%過小評価された水準にあるとの推計を示し、韓国当局がウォン上昇に対し介入する頻度が高いとする報告書を公表した。

また、韓国中銀は4月末、国会に提出した金融安定報告書で、ウォンが対円で上昇すれば輸出比重の高い一部の製造業の収益性が多少悪化する可能性はあるが、全般的に収益性の下落幅は大きくなく、否定的影響は制限的との見方を示した。

北朝鮮との地政学リスクを除けば、中国景気の急激な悪化やウクライナ情勢の緊迫化といったイベントリスクの高まりでウォンが売られる展開も期待しにくい。主要格付け機関3社による韓国ソブリン債格付けはシングルAプラスからダブルAマイナスと新興国の中ではシンガポールや香港に次ぐ高い格付けを有している。市場のリスク回避姿勢が強まれば、ウォンはむしろ安全資産として選好される可能性すらある。

経常収支黒字が過去最高を更新する一方で、ディスインフレは継続。金融当局は利下げどころか利上げを視野に入れつつある状況のなか、韓国当局による通貨安介入が手控えられ、イベントリスクに対しても比較的強固であるならば、韓国ウォンは上昇基調が続くとみるべきだろう。

5月に入り、ウォン相場は節目とされる1ドル=1030ウォンを下回り、1020ウォン台と2008年8月以来のウォン高水準に達した。次の節目は1000ウォンちょうどとなるが、米債利回りの低下などでドルが軟化する場面ではウォンは1ドル=900ウォンと07年末以来のウォン高水準を目指す展開も考えられる。

足元でのウォン円相場は100ウォン=10円近辺と年初来のウォン高・円安水準に上昇しているが、仮に1ドル=102円程度の水準が維持されるのであれば、100ウォン=11円を超えるウォン高・円安水準に達することになる。

仮に筆者の見方通りウォン高が進展した場合、韓国輸出企業は輸出競争力を維持すべく、賃金を抑制する姿勢を強めると予想される。これは家計消費がさらに抑制されることにつながり、韓国経済の外需依存度はさらに強まることになる。

そして懸命な努力の結果、経済が拡大を続ければ、ウォンはさらに上昇する。この悪循環から抜け出すには経済構造を外需依存型から内需主導型に脱却するしかないが、それは短期間でできることではない。

結局、ウォン高が是正されるのは、韓国輸出企業がウォン高に耐え切れず、輸出拡大が止まるときだろう。その場合、韓国景気は一気に失速することになる。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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