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コラム:豪ドルは買いか、100円突破へ「3つの根拠」=植野大作氏
June 20, 2014 / 2:58 AM / 4 years ago

コラム:豪ドルは買いか、100円突破へ「3つの根拠」=植野大作氏

[東京 20日] - 入梅後の外国為替市場で、豪ドル円相場が重要なテクニカルポイントの攻略に取り組んでいる。

今年4月以来、豪ドル円相場は幾度も96円台を回復しては伸び悩み、昨年春先の高値(105.433円)から夏場の安値(86.410円)までの下落分の半値戻しにあたる95.922円を挟んで一進一退の攻防戦を展開した。

5月下旬に一時93円台まで差し込む場面もあったが、6月に入ると再び買い戻され、95―96円台での神経質な攻防が続いている。

ここを一気に上抜けできれば、「半値戻しは全値戻し」という強気の格言が現実味を帯びてきそうだ。ただ、豪ドル円相場の復調シグナルが、もしも「ダマシ」だった場合には、このところの上値トライの反動も出て、一時的にせよ差し込みが深くなる可能性もある。豪ドル円のトレード愛好者にとって、気を抜けない正念場の局面が訪れていると言えるだろう。果たして今後、豪ドル円相場は本格的な失地回復を遂げることができるのだろうか。

結論から先に述べると、昨今観察される上値探査の動きには、相応の環境変化の裏付けが備わっている。よって、当面は、下値が堅く、上値が軽くなりやすそうだ。目先の攻防ラインとして注目されている95.922円のテクニカルポイントをしっかり上抜けして勢いがついた場合、昨年5月以来となる「三桁の水準」を試す展開もあり得るだろう。

以下、そのように考えている理由を簡単にまとめておきたい。当面の豪ドル円相場が堅調に推移しそうだと思われる根拠は三つある。

<際立つ豪州の高金利>

第一は豪州準備銀行(RBA、中央銀行)による利下げ期待の後退だ。今月3日の理事会でRBAは9会合連続で政策金利の据え置きを決めた。豪州の政策金利である翌日物オフィシャル・キャッシュレート(OCR)は、昨年8月に過去最低となる2.5%まで引き下げられたが、ここにきて下げ止まり感が広がっている。

RBAが重視する基調インフレ率(消費者物価前年比の刈り込み平均値と加重中央値の平均)が今年1―3月期ですでに前年比プラス2.65%と、政策目標圏(2.0―3.0%)の中心値である2.5%を若干ながら上回る水準に上昇しているほか、豪州経済が地道な景気回復の軌道を歩んでいることが背景だ。

過去において、豪州の政策金利トレンドは名目経済成長率との相関が高かったが、同成長率は直近ボトムを記録した2007年7―9月期の前年比プラス2.0%界隈から反発、今年1―3月期時点では同プラス4.9%程度にまで回復している。名目経済成長率が約5%近辺にまで回復している状況で、政策金利が過去最低の2.5%で維持されている状況は、過去の経験則に照らして、やや低過ぎるとの見方が広がり始めている。

この先、「豪州の物価上昇率が大幅に低下してユーロ圏のようなディスインフレ懸念が強まる」「豪州経済が想定外の悪化リスクに巻き込まれて腰折れ懸念が発生する」などの環境異変が生じない限り、過去最低水準の更新を目指した追加利下げの可能性は低そうだ。

こうした状況を反映し、豪州の金融市場で昨年秋頃まで続いていた短中期ゾーンの逆イールド現象が解消されつつある。現在、豪州の2年国債利回りは2.6%前後で推移、翌日物OCRの2.5%より高い水準をキープしている。米国の財務省証券で同じぐらいの利回り収入を得ようとするなら、満期10年程度のゾーンを買わなければならないが、豪州国債なら2年満期までのリスクテイクで賄える状況だ。

ちなみに、現在の日本国債のイールドカーブをみると、最大満期40年までデュレーションを延ばしても1.7%台の利子収入しか得られない。日本人目線で眺めれば、豪州の高金利は一層際立っていると言えるだろう。

RBAによる追加利下げ期待が根強く残存していた昨年秋頃までは、豪州の政策金利の相対的な高さは「利下げ余地の大きさ」に読み換えられていた。豪州の高い金利は魅力だが、豪ドルを買ってしまった後で利下げを実施されると為替で負ける怖さがあって、上値を追って買いにくい状況が続いていたが、利下げ観測が収まってしまえば、市場参加者の目線が豪州金利の絶対水準の魅力に向かいやすくなる。

値上がりし続けている最中に買うのはさすがに勇気が要るが、小規模な差し込み局面での押し目買いは、少し前に比べて入りやすくなっている。相対的な高金利通貨としての魅力の復活が、昨今の豪ドル相場堅調の主因になっていると言えるだろう。

<オセアニアクロスの割安感>

第二は、歴史的底値圏に到達した「オセアニアクロス」の割安感だ。RBAによる既往の利下げ局面で豪州とニュージーランド(NZ)の政策金利差が消滅したことなどを背景に、豪ドルNZドル(キウイ)相場は大幅に下落、1月24日には一時1豪ドル=1.0493キウイと05年12月以来の水準に差し込む場面もあった。

その後はさすがに買い戻されたが、1.10キウイ台では伸び悩んでいる。年明け後の豪ドルNZドル相場が彷徨している1.04―1.10キウイ台の水準は、過去四半世紀に及ぶ長期チャートでみると、オセアニアクロスのほぼ最低取引水準だ。

1990年代以降のチャートフェイスを眺めてみると、豪ドルNZドル相場は、「1豪ドル=1.05―1.10キウイ前後を大底、1.35―1.40キウイ台を天井とする非常に大ぶりなレンジで5―6年周期の循環を繰り返す」という特徴を持っている。

3月以降のニュージーランド準備銀行(RBNZ)理事会で3回連続の利上げが実施されたことで、足下の豪NZ政策金利差はマイナス圏(豪州のほうが低い)に差し込んでいるが、過去において2%ポイント程度の大幅マイナスに下振れしたときですら、豪ドルNZドル相場が「1.05キウイ前後の壁」を明確に下抜けして走ることはなかった。

現在の豪ドルNZドル相場の水準をエントリーポイントとして、「オセアニアクロスでの豪ドル売り」にベットできるのは、ごく短期間での買い戻しを想定して参入してくる超高速回転売買筋ぐらいだろう。歴史的な安値圏にあるオセアニアクロスの売りポジションを作るだけでも勇気が要るのに、当該ポジションと心中する覚悟で長く持ち続けるには「人跡未踏の深い谷間に潜り込んでいっても決して挫けない精神力」が必要だ。

当面のオセアニアクロスについて、一時的な差し込みや上値の重い状況が観察されたとしても、さすがに一層の豪ドル安・NZドル高が不可逆的に進行するイメージは描きにくくなっている。そのような状況下、主要通貨圏で先行して利上げを実施しているニュージーランドで発生する通貨高圧力が、隣国の豪ドルにも憑依(ひょうい)しやすい状況になり始めている。

<株価動向に敏感な豪ドル円>

第三は、グローバルな株価の堅調だ。世界景気の地道な回復が続く中、足下の世界総合株価指数はときにロシア、中東絡みの地政学リスクなどを意識して過熱感を調整しつつも、すう勢的には右肩上がりのトレンドを維持、足下では過去最高値圏にまで上昇している。

豪ドルという通貨は、世の中で楽観的ムードが広がるときに買われやすい「リスクオン・カレンシー」の王様だが、「リスクオフ番長」の異名を持つ日本円との組み合わせになる「豪ドル円」という通貨ペアは、05年頃からは、株価動向に非常に敏感な特徴を有している。

近年の豪ドル円相場と世界総合株価指数の動きを重ねてみると、昨年春の強烈無比な豪ドル高・円安局面に示現した1豪ドル=105円台までの吹き上がりはかなりのスピード違反で買われ過ぎの印象もあったが、昨年夏場から今年初めにかけて断続的にみられた90円割れ水準への差し込みは、逆に売られ過ぎだった感も否めない。

今後、たとえば「中国景気腰折れで世界経済大混乱」などの「テールリスク」が暴発して世界的に株価が崩落していくような状況になった場合は、90円割れの定着、あるいは80円割れへの急落もあり得る。しかし、世界総合株価指数が現状程度のレベルを維持している限り、豪ドル円相場の失地回復を妨げる障害にはならないだろう。株価が一層上昇していくケースでは、豪ドル円の上値探査の余地が広がる可能性もありそうだ。

以上の要因を総合的に勘案すると、今春以降に観察される豪ドル円相場の失地回復の兆候は、きちんとした環境変化の裏付けに支えられている。良くも悪くも「値動きが良い」のが豪ドル円相場の持ち味なので、このまま一次関数のように直線的に値上がりすることはなさそうだが、適度な往来を繰り返しつつも、徐々に変動レンジが切り上がっていくのではなかろうか。

ちなみに、筆者は米ドル円相場について、「いずれ1米ドル=110円台の攻防をみる」と考えている。今後そうした見方の蓋然性が高まる場合、豪ドル米ドル相場が現在の1豪ドル=0.93米ドル台より多少軟化した場合でも、1豪ドル=0.90米ドル台をキープしていれば、「110円/米ドル×0.90米ドル/豪ドル=99円/豪ドル」界隈が取引レンジ下限のイメージとなる。

豪州経済の回復が続いて金利下げ止まり感が広がる中、世界的規模の景気崩落現象にでも巻き込まれない限り、1豪ドル=100円前後の水準がいずれ視野に入ってくる可能性はあるだろう。当面は「三桁の水準」を目標にした押し目買い戦略で臨みたいと考えている。

*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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