December 30, 2014 / 3:47 AM / 4 years ago

視点:景気楽観論は禁物、アベノミクス再起動を=若田部昌澄氏

同氏の見解は以下の通り。

<要点はリフレ・レジームの再確認と進化>

消費税増税が人々の予想に与えた負の影響は無視できない。アベノミクスはかなり振り出しに戻ってしまった感がある。内閣府が12月16日に発表した7―9月期の需給ギャップは、マイナス2.8%に拡大。この状態が1年続けば、およそ14兆円の需要不足になる。こうした状況を受けて、さすがに「供給不足経済」との意見も影を潜めた。

2015年度は設備投資、輸出が伸びる、あるいは原油安が好影響をもたらすという意見もある。しかし、昨今の国際通貨基金(IMF)による世界経済成長率予測の下振れをみても、中国、ユーロ圏などからの外需に楽観はできない。現状で恒久増税である消費税増税(5%から8%へ、2014年4月実施)の負の影響は根強く、少なくとも2015年度の前半は国内総生産の6割を占める消費が浮上してこない可能性が高い。

解決策は、アベノミクスの再起動と改善である。その要点はリフレ・レジームの再確認と進化だ。しかし、再起動には工夫が必要である。

当初アベノミクスが登場し市場が大きく反応した理由には、安倍政権が、民主党政権、旧日銀的思考法と決別し、経済成長促進的な構えを打ち出したことが大きかった。それによって、いわゆる政策のレジームが、デフレ容認的なものからリフレーション的なものへと転換した。

このリフレ・レジームは日銀が追加緩和を行い、安倍首相が消費税増税の引き上げを延期したように、動揺をきたしつつもまだ生き残っている。しかし、初期のレジーム転換と同じ効果をもつ再起動が可能かどうか。これが喫緊の争点だ。

アベノミクスの「3つの矢」になぞらえて言えば、日銀の追加緩和、給付・減税を中心とした10兆円規模の財政政策、着実な成長政策の実行、の3点が中心になる。

日銀が2014年10月31日に行った追加緩和については、その効果をもう少し検証する必要があるが、現状で予想インフレ率が下げ止まったところであり油断はならない。必要とあれば追加緩和を辞さない態度が必要であり、これは現日銀執行部のもとでは堅持されるだろう。

だが、当面は財政政策のテコ入れが必要になるだろう。政府は総額3.5兆円程度の経済対策を閣議決定したが、額においても予想に与える影響という点においても不足していると考えられる。しかも、出し方に工夫が必要だ。

効果という点では、建設分野に限っては供給制約が顕在化しており、公共事業のみに頼る財政支出では限界が来ている。給付・減税を中心とし、家計の懐に直接行き渡る政策を実行すべきだ。低所得者対策を優先すべきとは考えるが、仮に一律に国民1人当たり5万円を配っても約6兆円である。少子化対策と組み合わせて出産祝い金を増額するというのもありうる。

成長政策については、あらためて成長促進の姿勢を打ち出し、実効性のある政策をひとつでも多く実行すべきだ。環太平洋連携協定(TPP)の交渉妥結は、相手国のあることではあるが、良いシグナルとなるだろう。

リフレ・レジームの進化の先には、政府と日銀の名目成長率目標4%(実質成長率2%+インフレ率2%)の設定とその法制化、インフレ目標を明示した日銀法改正、給付付き税額控除と年金改革を中心とする所得再分配政策の強化、新規参入を歓迎する成長政策(オープン・レジーム)といった政策イノベーションがありうる。

*若田部昌澄氏は、早稲田大学政治経済学術院教授。1987年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院経済学研究科、トロント大学経済学大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学、ジョージ・メイソン大学、コロンビア大学客員研究員を歴任。専攻は経済学史。「経済学者たちの闘い」「改革の経済学」「危機の経済政策」など著書多数。

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの特集「2015年の視点」に掲載されたものです。(here

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