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視点:日本経済に「空前の好環境」、株価2万5000円へ=武者陵司氏

[東京 5日] - 衆院選圧勝で、先進国では類を見ない安定政権を確立した安倍首相。「道半ば」というアベノミクスの推進を約束するが、その効果は実体経済に顕在化するのか。武者リサーチの武者陵司代表が、2015年の日本経済と株式市場を見通す。

 1月5日、武者リサーチ代表の武者陵司氏は、2015年は過去2年間で企業部門に蓄積されてきた富がいよいよ他部門への好循環という形で顕在化してくると予想。提供写真(2015年 ロイター)

<富の好循環が顕在化へ>

日本経済は2015年、最上級の良い年を迎える。第1に、端的に言えばアベノミクスの成果が誰にも否定できない形となって現れてくる。つまり、過去2年で企業部門に蓄積されてきた富が、いよいよ他部門への好循環という形で顕在化してくる。

そして第2に、様々な外部要因が、かつてない好条件になっている。円安によって売値が大幅に上がった一方、原油安でコストが大きく下がり、マイナスの実質金利で資本コストもかつてなく低くなっている。加えて、米国経済が本格的に回復し、中国は別にしても、世界の生産数量の増加が期待できる環境にある。

生産数量という観点から見れば、これまで市場シェア争いで苦しめられてきた韓国企業などとの競争においては、為替レートが変化したことで日本企業が極めて有利になっている。また、中国からの輸入数量は貿易指数で見ると11月に対前年伸び率で約9%減となるなど、このところかなり減ってきている。

つまり、売値の上昇、コストの下落、数量の増加という過去何十年さかのぼってもないほどの好環境が今まさに出現していると言える。

一方で、原油安がこれだけ進み、為替が円安に振れていけば、日銀が掲げる2%の物価目標は達成が難しくなるという議論もある。しかしその部分は、議論を正確にしておく必要があるだろう。物価目標は現行の生鮮食品を除いた「コアCPI(消費者物価指数)」から、エネルギーも除いた「コアコアCPI」にすれば良いと筆者は考える。コアコアで見れば、原油安の影響はむしろ、物価を押し上げる可能性が大きい。なぜなら、原油が安くなれば所得を他の分野に使えるため、エネルギー以外のところでは需要数量が増えて需給がひっ迫し、価格は上がるはずだからだ。原油安は言ってみれば減税と似たような効果があるため、特にコアコアで考えるならば、原油安によってデフレが深刻になるという議論は杞憂なのではないか。

<企業起点に日本再評価>

日本企業は2015年、史上最高の利益を出すだろう。これまで低いと言われてきた日本企業のROE(株主資本利益率)は急速かつ大幅に改善するとみられる。2015年は企業に潜在的に蓄えられているパワーがさく裂する年になるはずだ。

企業収益の大きな増加が期待できることによって、世界の日本を見る目が劇的に変わることになる。今までの日本に対する見方は、デフレから抜け出そうとカンフル剤を打って元気が少し戻ってきたという程度。しかし、企業収益の劇的な改善を目の当たりにすることで、日本のビジネスモデルに対する評価が変わってくる。日本が誇る技術や労働の質がもたらす経済の繁栄に、世界の人々の目が向くようになる。

貿易構造の面から日本企業の今の姿を見てみよう。現在の円安局面では、円ベースでの輸出単価が大幅に上昇している一方、輸出数量はまったく伸びていない。これが意味することを端的に言うなら、日本企業はもはや価格競争をしていないということだ。過去は円安になれば価格を下げて海外の競合他社からシェアを取りにいくビジネスモデルだったが、今は日本でしか作れない品質や技術で勝負するモデルになった。言い換えるなら、グローバル分業の中で、日本だけが提供できる優位性に特化するビジネスモデルに転換したということだ。

その1つの象徴的な例がスマホだろう。スマホの組み立ては台湾や中国、やがてはインドでもできるようになるが、どの国で組み立てようと、製造のための素材や部品や機械は日本から買わなくてはならない。スマホ以外の分野でも、日本企業は要素技術を独占し始めている。これがなぜ可能になったかと言えば、長年にわたる誠実な技術開発の努力と、品質的な優位性確立への取り組みがあったからだ。

日本の要素技術は海外で付加価値を生み出すための種となっている。言うならば、今の日本が実現しているのは、過去の近隣窮乏化策とは真逆のグローバル繁栄モデルだ。

<リスクは政策の変更>

では、そんな日本経済にとってリスクはどこにあるか。今の世界経済を押し上げているのが政策であることを考えれば、政策の変更が最大のリスクではないかと筆者は考える。

米国ではかつての大恐慌時には需要抑制政策が約4年にわたって続けられたが、リーマンショック時には米連邦準備理事会(FRB)が直ちに量的緩和(QE)を打ち出して需要創造政策を展開した。米国経済が良くなったのは明らかにQEが実施されたからであり、日本が良くなりつつあるのも日銀の異次元緩和があったからであり、欧州も今後良くなるとすればその最大の要因はQEだろう。

つまり経済を押し上げているのは超金融緩和であり、それが仮になくなれば、状況が一変する可能性はある。日本は幸いにして衆院選で与党が圧勝して政策が維持される見通しが立ったが、例えば、欧州中央銀行(ECB)の政策が保守的なドイツの意見によって縛られたり、あるいは米国でリフレ政策の転換が打ち出されたりするようなことがあれば、実際に起こる可能性はかなり小さいとはいえ、それが最大のリスクとなる。

それ以外のリスクとしては、新興国の問題も決して軽視すべきではないだろう。中国の「爆食経済」が終わり、資源ブームや商品ブームという長期サイクルが完全に下向きになっていることで、所得が資源国から先進国へとシフトしている。資源国ではこの逆風下で、過去の資金潤沢局面に膨れ上がった債務や投資が経済の足を引っ張る原因になりかねない。

これが最も顕著に現れているのが今のロシアだろう。プーチン政権は完全に行き詰り、崩壊の可能性すら出てきたのではないか。こうした流れは長い目で見れば、世界の市場がより合理的なメカニズムで運営される方向に行くという意味で良いことだが、短期的には金融市場に非常に大きな混乱をもたらす可能性がある。

ただ、1980年代初頭の中南米累積債務問題のような不良債権問題がロシアなどで起きるとしても、そうした問題は事前から意識されていることでもあり、かつてのような不意打ちにはならないだろう。すでにルーブルが急落するなど、危機が深刻化する前にサーキットブレーカー的な遮断メカニズムが働くことで、世界全体に金融危機が広がるということにはならないとみられる。

<日本株のフェアバリューは3万円>

繰り返しになるが、2015年は、これまでの日本に蓄えられてきたさまざまな要素が大きく花開く年になろう。一方で、市場にはまだ、日本への異常とも言える悲観論が残っており、日本株は依然として割安水準にある。株式のバリュエーションが非常に低いということは、これから起こるのは大きなアップサイドのサプライズであることを意味している。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式比率引き上げなどの需給面も勘案すれば、株価は年明け早々に1万9000円から2万円、2015年中に2万5000円に届くと予想する。長期金利見合いの適正価格(フェアバリュー)からすれば、株価は3万円になっても不思議ではない。

*武者陵司氏は、武者リサーチ代表。1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。87年まで企業調査アナリストとして、繊維・建設・不動産・自動車・電機エレクトロニクスなどを担当。その後、大和総研アメリカのチーフアナリスト、大和総研の企業調査第二部長などを経て、97年ドイツ証券入社。調査部長兼チーフストラテジスト、副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーを歴任。2009年より現職。

*本稿は、武者陵司氏の個人的見解に基づいて書かれています。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの特集「2015年の視点」に掲載されたものです。(here

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