February 13, 2015 / 2:34 AM / 5 years ago

コラム:債券の変調が示唆する景気回復と原油底入れ=木野内栄治氏

[東京 13日] - 「株式市場は債券市場の愚かな弟」と言われる。確かに、株式市場は先読みが過ぎて見通しを間違うことがあるが、日ごろ慎重な債券市場の利回りが大きく上昇した場合、景況感は底入れし回復トレンド入りとなることが多い。

国内景気の底入れは、実は国際原油市況の底入れにもつながりやすい。株価の一段の上昇を促そう。

株式市場はファンダメンタルズなどを半年前後先行して織り込むと言われる。一方で、債券利回りは景気動向などを織り込む際に、株式よりも慎重だろう。結果、株価と債券利回りは景気のボトム圏では底値の時期がずれやすい。

例えば、2009年3月の「景気の谷」の時期では、日経平均のザラ場安値が08年10月なのに対して、日本10年債利回りの底は08年12月と、2カ月程度、債券利回りが底入れするのは遅かった。

景気の認定日付は多少前後するものの、谷の近くにおいては、こうした株価と債券利回りの2カ月程度の底入れのずれはしばしば観測される。例えば、1993年11月の株式の底に対して94年1月に債券利回りは底入れ、2003年4月の株式の底に対して同年6月に債券利回りは底入れした。

言い換えると、今回のように株価に対して債券利回りのボトムが遅れた状態は、景気が好転したサインだと言える。

2014年は4―6月期、7―9月期と日本の国内総生産(GDP)は二期連続でマイナス成長なので、一般には景気後退期と言われるだろう。しかし、債券利回りの上昇は、成長率の拡大局面が当面継続することを示唆している。

<景況感は回復する可能性大>

株価に遅れた債券利回りの底入れという現象以外にも、筆者は日本の景況感が回復する兆候があると考えている。

まずは景気指標の改善が期待できる。例えば、景気ウォッチャー調査の現状判断DIは1月分までで2カ月連続で改善し、今後も改善が見込める。なぜなら、同指標は統計発表以来、2月分は2度、3月分は1度しか前月比で悪化したことがないからだ。

そのような季節的な動きで景気の底入れを予想するなと言われそうだが、日本の景気の基準日付の谷は戦後の15循環のうち、1度を除いて14回が下半期であり、そもそも季節性が強い。

細かく見ると、10―12月期が景気の底であることが9回で、これらは10月段階で米景気が回復過程にあるときに限られる。米国のクリスマス消費が良いとなれば世界的に製品の作りこみが始まり、日本の景気も底入れするのだろう。

1―3月期が景気の底であったケースは5回で、前年の10月段階で米景気が後退しているケースが多い。クリスマス消費向けの作りこみが世界的に伸びなくても、多くの場合は生産ほどには消費が落ち込まないので、結局、在庫整理が進んで景気は底入れすることが多い。近年では中華圏の旧正月消費の影響も加わっているだろう。

なお、一度だけ上半期に景気の底入れとなったことがあるが、そこでは直前に米景気が底入れしている(1958年)。いずれにせよ、日本の景気は海外消費に対する思惑などを受けて、ほとんどが下半期に底入れしてきた。季節性は重要だ。

また、原油価格の下落は、家計における暖房費負担の減少を通じて、冬場の消費を刺激しやすい。年間を通じた産油国からの所得移転は、日本では主に下半期に効果が出やすいことになる。今回の原油価格の下落は、米国のクリスマス消費に好影響を与えるには波及時間が足りなかったようだが、1月以降の米消費や中華圏の2月の旧正月消費を刺激すると期待される。よって、今後は日本の景況感は改善していくことが期待できよう。

<原油価格の底値は11月から1月が多い>

原油価格の下落によって、世界の消費が冬に刺激されるならば、景況感の改善を受けて原油価格の底値は冬に多いはずだ。実際、原油価格が大きく下落した後の底値の月は、1993年が12月、98年が12月、2001年が11月、08年が12月と冬場が多い。今回のように短い期間での原油価格の下落では1月安値も散見される。

また、世界の景気次第である日本の景気が底入れするとなれば、世界景気の持ち直しで原油の価格が底入れしやすい。実際、日本の景気の底は1993年10月、99年1月、2002年1月、09年3月だ。上記の原油価格の底入れ時期とほぼ同じであることが確認できる。

そして、これらは日本の債券利回りの底の時期とも概ね一致しやすい。前述のように、債券利回りの上昇や季節性が日本の景気の底入れを示唆する中では、原油価格の底入れも期待できることになる。

さて、今回の原油価格の下落には欧州銀行によるポジション外しも影響していた可能性があり、年末で需給悪は峠を越えたと見ている。

欧州でも銀行の資産運用は債券が主だ。債券ポートフォリオのリスク量を小さくできれば、その分運用金額を増やすことが可能で、最終的に受け取り利息合計金額を最大化する手法がとられているケースが多いと思う。そのリスク量を小さくする手法のひとつとして、日々の価格変動(バリューアットリスク)を抑えるために債券価格と逆連動となる商品の先物を組み込むことが有効だ。

特に、欧州銀行は商業銀行業務と証券業務を併設するユニバーサルバンク形態なので、伝統的にデリバティブズを利用したこうした手法に長けている。欧州勢を中心に形成されるバーゼル規制に最適化し、ヘッジファンドのかたちでビークル(器)を外出ししながら、こうした運用手法は拡張してきた。

しかし、米国の「ボルカールール」が、こうした運用に一定の歯止めをかけようと切り込んだかたちとなった。結果、昨年末にポジションの縮小が相当起きたように見える。

報道によれば、仏ソシエテ・ジェネラルの日本における証券業務会社であるニューエッジ・ジャパン証券は、商品先物業務を縮小することを決めた。日経平均先物同様に、同社は東京商品取引所でもトップ級のシェアを有する。また、クレディ・スイスは、ヘッジファンド向けサービス業務の縮小を検討し始めたと報じられた。同時に、欧州最大のヘッジファンドであるブレバン・ハワード・アセット・マネジメントは商品ファンドを清算すると伝えられた。

こうした原油などの商品先物の需給悪化は昨年末に峠を越えた可能性が高い。なお、後述するように、今年6月にも影響が少々示現する可能性もある。

<来年半ばにも債券相場は正念場へ>

債券利回りの上昇局面入りを確認する価格水準は、26週移動平均線(0.443% 2月10日現在)程度だろう。同移動平均線は消費増税前の景気の山である2014年初以来、金利の上値を押さえている重要な抵抗線だ。景気回復となれば上抜けることが期待される。

時期を考えると、期末・中間期末である3月と9月は債券利回りが上昇しやすい。中でも、月の前半に上昇しやすく後半は低下しやすい傾向がある。月の前半は国債入札による需給悪が作用し債券利回りは上昇し、後半は日銀の買い入ればかりが目立って利回りは低下しやすいのだろう。今回は景気回復基調に支えられて、3月上旬に日本の10年国債利回りは0.443%程度を上抜けることになると考えている。

ボルカールール導入は今年7月なので、前述の欧州銀行に関しては、6月の中間期末前には再度ポジション縮小を行う懸念がある。原油に関しては6月には建て玉の多い6月限の受け渡しが始まるので、昨年12月同様に生産者のヘッジ売り単価の一段の下落が問題となりやすい。6月5日には石油輸出国機構(OPEC)定例総会も予定されている。6月下旬頃からのイスラム世界の断食月(ラマダン)入りまでは思惑が交錯しよう。

しかし、この時期までに「原油価格下落は景気回復要因」とのコンセンサスが生まれている可能性が高い。ガソリン価格の低下を通じて夏季休暇シーズンのドライブ消費などを刺激するだろう。これまでは原油価格下落による不安感から債券利回りは低下してきたが、年央には原油価格下落は債券利回りの低下要因ではなくなってくる可能性もある。

さらに、2016年の半ば頃からは、原油安に伴うインフレ率低下の影響がなくなる場面がやってくる。この場面が債券相場の本当の正念場となろう。言い換えると、それまでは景気回復基調の中でも金融緩和圧力がくすぶるという、株式投資に安心感がある場面だと見ている。

*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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