April 15, 2015 / 7:20 AM / 3 years ago

コラム:日経平均2万円からの株式投資戦略=丸山俊氏

[東京 15日] - 日経平均株価は今月10日の取引時間中に15年ぶりとなる2万円を回復。しかし、採用銘柄が毎年入れ替わること、とりわけ2000年に大幅な入れ替えがあったことを考えると、過去の水準と単純に比較することは厳に慎むべきだろう。

実際、2000年の大幅入れ替えの影響を考慮した旧日経平均株価はとっくに2万円を超えていると推定される。

それはそれとして、1月下旬以降の相場上昇は、利上げを模索し始めた米国から、量的緩和を強化した日本と量的緩和に踏み切った欧州への資金シフトがけん引役だった。ドル高とそれに伴う原油安は日本・欧州の企業の投資意欲や消費者心理を刺激し、長期金利の一段の低下は投資家の利回り追求を後押しした。

株式益利回りと債券利回り、株式配当利回りと債券利回りの大幅な乖(かい)離は株式が債券に比べて大幅に割安であることを示唆している。これが景気後退局面であれば利益・配当の減少を心配しなければいけないが、景気回復局面に入った日本・欧州では利益・配当の増加に対する期待が株式の魅力を高めている。

特に日本経済は増税後の反動減緩和や原油安、昨年度を上回る賃上げによる実質所得の押し上げによって個人消費が回復し、円安を追い風に製造業を中心に設備投資がある程度戻るとの期待が高い。国内景気回復と企業収益改善により、グローバル株式の中でも低株価変動率と低収益変動率の性質を兼ね備え、さらに株主還元の強化によって高配当性向になれば利回り追求に最も適した投資先になり得るポテンシャルを2015年の日本株は有しているし、実際にそうした見方が今の日本株を根強く支えている。

さらに海外投資家が長年求めてきたコーポレートガバナンスの改善に日本企業がようやく取り組み始めたという手応えは、公的・準公的機関の株式投資と並び、今や日本株が投資パフォーマンスにおいて他を抜きん出ると期待される大きな理由の1つである。

<官製株高への過剰な期待は禁物>

もっとも、目先では、米ドル・米株の調整が欧州株や日本株の調整に発展する可能性には注意が必要だ。ドル高や原油安の影響により米国企業決算が減収減益に陥る見込みであるほか、米国の第1四半期国内総生産(GDP)成長率が前期比1%台(年率換算)にまで落ち込む可能性が否定できない。

足元での米景気減速は、悪天候や港湾ストの影響だけでなく、利上げを模索し始めた米国で商業銀行が貸出態度を厳格化させていることが影響している可能性がある。市場が利上げ時期の後ずれを好感する局面から、米景気減速やデフレ圧力を懸念する局面にシフトした場合、相場に波乱が起こる恐れがある。

海外投資家の買い越し金額(ネット)を見ると2月の株高は明らかに先物主導であり、その大半が3月の精算日でロールオーバーされているため、そろそろ利益確定のタイミングを見定める頃合いではないか。その際、懸念されるのは現物市場で最大の買い手は公的マネー(=信託銀行)ではなく、主に裁定取引を行っている自己勘定部門であることだ。このため、何らかのきっかけで先物価格が急落した場合、裁定買い残解消に伴う自己勘定部門の現物株売りが一段と株価を下押しする可能性に注意したい。

もちろん、株価が下がれば公的マネーが下支えてくれるとの思惑はあるだろうが、それでは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や日銀が買い支えていたにもかかわらず昨年12月中旬から今年1月中旬にかけて日経平均株価が1500円以上も下落したのはなぜか、という疑問に答えることは難しい。公的マネーが株価を下支えしていることは紛れもない事実だが、「アナウンスメント効果が効いている」程度に冷静に捉える必要があろう。

ちなみに、GPIFや準公的年金基金(3共済:国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団)は10月1日から資産構成の目標値を共有し、運用を一元化する。しかし、最近の株高と昨年10―12月期以降の積極的な資産入れ替えによって、例えばGPIFの国内株式保有比率は足元ですでに23%に接近していると推定される。仮に9月末に向けてベンチマーク比率(25%)を達成しようとすると買い余力は3兆円程度しかないものと思われる。

問題は、公的年金基金の資産構成見直しが一巡した後、日銀以外に誰が日本株を買うのかである。市場ではすでに国内株式の保有比率引き上げに動いている「かんぽ生命保険」に加えて、資産運用の分散が課題の「ゆうちょ銀行」に対する期待が高いようだ。ゆうちょ銀行の保有資産はGPIFを大きく上回る205兆円に達し、その大半は国債で運用されているため、資産規模から言えば株式買い増し余力は大きいように映る。

実際、ゆうちょ銀行は向こう3年間で14兆円をリスク資産に投資すると最近になって発表した。しかし、その大半はおそらく外債となるだろう。

なぜなら、ゆうちょ銀行の自己資本は約8兆3000億円(2014年10月)であり、自己資本比率は43%と世界一と言っても過言ではないほど健全な銀行である。しかし、上場株式を保有した場合のリスクウエイトは300%であるため、仮に上場株式を2兆円買い入れると自己資本比率は33%に、上場株式を10兆円買い入れると17%に落ち込む。今後、M&Aや貸出ビジネスにも参入していくとすれば、ゆうちょ銀行が買うことのできる上場株式はせいぜい合計2―3兆円程度ではないかと思われる。

なお、自民党内では日本郵政グループの企業価値向上を図る目的で、「ゆうちょ銀行」(現在1000万円)「かんぽ生命」(同1300万円)の加入限度額をそれぞれ引き上げる検討が始まった模様であり注視していきたい。

<バブルなら株価はどこまで上がるか>

結局、日経平均株価2万円後の株式投資については、目先の反動に注意しつつ、公的マネーの買いには過度の期待を抱かず、加えて以下の点の見極めが必要となろう。

まず、成長期待の高まりがリスクテイクを促した当時と異なり、現在の低成長・低インフレ・低金利がリスクテイクをどの程度促すのかは不確かだということだ。

例えば、食品株や医薬品株が割高にもかかわらず際立って好調なのは、先進国の長期金利が一段と低迷する中、世界経済の成長に自信は持てないものの利回りを必要とする投資家がいるからである。つまり、株価変動率(ボラティリティ)が小さく、利益変動も小さく、配当性向が高いという債券と株式の中間的な性質を持ち合わせている食品株や医薬品株をあたかも債券に投資するかのように買っているのだ。

生活必需品である食品や医薬品は販売価格を引き上げても需要が大きく落ち込む心配もないため、円安インフレへの抵抗力は強く、海外市場の成長性も十分だ。割高でも買われる食品株・医薬品株と、割安でも放置される商社株や自動車株といった景気敏感株の二極化は、投資家のリスクテイクがいまだ局所的であることを示している。

また、そもそも利回り追求は「低金利」という大前提が崩れれば終わりであること、世界経済の低成長下ではいくら利回りが高くても収益が安定あるいは成長していなければ見向きもされないこと、日本株が利回り追求の受け皿になるには配当性向を一段と引き上げる必要があることを忘れてはいけない。

日本企業の配当性向は依然として30%足らずであり、欧州企業の約60%と比べるとその開きは歴然である。現状は配当性向がようやく30%に達してホッと一息をつけるかなといったところであり、40%以上の配当性向目標を掲げている企業は一握りでしかない。横並び意識が強い日本社会で、日本株式会社や業界を代表するような会社、例えばトヨタ自動車(7203.T)が率先して配当性向を40%に引き上げるといったブレイクスルーが待ち望まれる。

また、取締役の選任や報酬決定に権限を持たない社外取締役が、米国のように株主の代理人として経営を監視できるのかも気がかりな点だ。株主総会で選任されているはずの社外取締役で株主の代理人という意識を強く持つ人材は多くないように思われる。

つまり、稼いだ利益がせめて他の先進国並みの水準で株主に還元され、そしてコーポレートガバナンスの改善を確認できる材料が実際に積み重なってこないと、日本企業の資本に対する評価は高まらないのではないかというのが率直な感想である。

最後に言い添えれば、先進国共通の低インフレ・低金利環境が続く限り、低株価変動率、低収益変動率、高配当性向のリスク資産に対する利回り追求が果てしなく続き、市場全体のリスクプレミアム低下を通じて、やがてバブルを引き起こす可能性は否定できない。

そのときの株価水準を見通すことは困難だが、仮に投資家の要求収益率(エクイティリスクプレミアム:ERP)が2004―2007年の世界好況期並みの水準である4.5%まで低下すると現在の収益予想から逆算される日経平均株価の理論値は2万3000円となり、同期間の最低値並みの水準である4.0%にまで低下すると2万7000円となる。

*丸山俊氏は、BNPパリバ証券の日本株チーフストラテジスト。早稲田大学政治経済学部卒業後、三和総合研究所に入社し、クレディ・スイス証券を経て2011年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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