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コラム:解散総選挙でアベノミクス復活へ=村上尚己氏
2014年11月21日 / 01:57 / 3年後

コラム:解散総選挙でアベノミクス復活へ=村上尚己氏

[東京 21日] - 先月のコラムで「消費増税断行」は世界が警戒するリスクであることを論じた。その後、安倍政権は消費再増税先送りを決定。霞が関発で広められた節のある「増税不可避」との考え方に乗って、前政権の負の遺産である増税強行を続けるリスクが大きいと認識したのだろう。安倍政権の判断は、今後の日本と世界経済にとって望ましいことだ。

17日に発表された7―9月期国内総生産(GDP)1次速報値は前期比年率1.6%減と、2四半期連続のマイナス成長となった。こうした経済指標を受けて、「アベノミクスの頓挫」などという論評がメディアで再び増えている。12月14日に予定されている総選挙では、「アベノミクスの失敗」を掲げて選挙に挑む野党が出てきそうである。

「アベノミクスが失敗した」「恩恵を受けたのはごく一部で格差が広がっただけ」などは、根拠が不確かな主張である。2013年に実現した金融緩和強化によって、同年に日本経済は個人消費主導で2%成長を果たした。アベノミクス発動により、日銀の金融政策を根本から変えたことで実現したのである。

消費主導で景気回復が始まり、減少する一方だった雇用者が2013年春先から増え(失業率は大きく低下)、そして名目賃金もほぼ20年ぶりの高い伸びとなっている。アベノミクスを変えず金融・財政政策による総需要拡大を止めず続けていれば、2%インフレ目標実現が現実味を帯びていただろう。そして、これまでのデフレ下では難しかった「満足できる職の機会を多くの人が得ることができる」経済状況に着実に変わっていただろう。

<再増税延期で「失われた20年」再来を回避>

返す返すも、4月に実施された8%への消費増税は残念だった。総需要不足が続いているにもかかわらず、景気回復のエンジンだった個人消費を落ち込ませる大型緊縮政策に転じ、日本経済は2014年度にマイナス成長に陥ったとみられる。

ようやく増え始めた実質賃金が消費増税により「ガタ落ち」したのだから、消費が失速したのはやむを得ない。経済正常化を目指していたはずの安倍政権が、アベノミクスの本筋から離れてしまい大型増税に転じた帰結が今年の経済停滞である。

「アベノミクスの失敗」などという声は、こうした現実を踏まえていない主張だ。経済政策の失敗をもたらしたのは、増税政策だ。それを、金融緩和政策に結び付けるのは筋違いの議論のすり替えではないだろうか。

また、金融緩和政策のみで経済成長は難しい、などといった議論も耳にする。実際に起きていることは、2014年度になって消費増税の失敗で景気が失速したが、その落ち込みを和らげているのが日銀による金融緩和である。金融緩和による実質金利低下、円安株高、そして企業業績の底上げが日本経済を支えている。

仮にアベノミクスの軸である金融緩和強化が実現せずに、今年のような大型増税が実現していたら、日本経済は深刻な景気後退に陥っていただろう。5%への消費増税後から始まったデフレ不況と公的債務残高の拡大といった、1997年以降と似たような状況が生じ、「失われた20年」が再び今年から始まっていた可能性があったということだ。本当に恐ろしい話である。

なお、「現在の日本経済は完全雇用に近く、経済停滞は供給制約がもたらしている」「景気刺激的な金融・財政政策の効果が限られている」という議論も一部で聞かれる。ただ実際には、大型増税という総需要押し下げ政策で成長率がマイナスに転じたことを踏まえれば明らかだが、日本経済の問題は総需要不足であり、そして依然デフレ脱却は道半ばである。今回の安倍政権の政策転換で、2017年3月まで今後2年半にわたり、景気刺激的な金融・財政政策によって需要を底上げし、経済成長率を高めることは十分可能である。

18日の首相会見における「消費増税先送りは重要な決断だから国民に信を問う」「アベノミクスについて賛否あるが、選挙戦を通じてそれを国民に判断してもらいたい」というのは、ストレートで率直なメッセージだった。総選挙をめぐり目先は思惑が揺れ動くだろうが、少なくともアベノミクスに対する評価を理由に与党が大敗するリスクはかなり限定的だろう。

*村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタインのマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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