[東京 15日 ロイター] - 岸田文雄首相は15日、通常国会閉会に伴って記者会見し、日銀の金融政策に関して「今は引き続き、物価安定目標を持続的・安定的に維持するために努力を続けてもらうことを期待している」と述べた。
岸田首相は金融政策は為替に大きな影響がある一方、金利を通じて中小・零細企業の経営にも影響があると指摘し、日銀は様々な影響を総合的に判断して金融政策を決めると理解していると語った。
足元の物価高騰については「国民生活・事業活動に大きな影響を与えていることを重く受け止める」と強調。対策を講じるため、政府に「物価・賃金・生活総合対策本部」を立ち上げると表明した。
<小麦など価格高騰続けば価格抑制策>
岸田首相は、ロシアによるウクライナ侵略が世界各国で国民のふところを直撃している、「まさに有事の価格高騰だ」と強調した。
対策として、小麦の輸入価格が10月以降も急騰した状態なら引き続き価格抑制措置をとる。飼料の高騰に対しては官民基金から生産者に補填金を交付し肉やソーセージの価格上昇を抑制。秋に向けて肥料の価格高騰にも手を打ち、農産物の生産コストを最大1割程度引き下げる価格抑制策を実施することも表明した。
補正予算で確保した5.5兆円の予備費の機動的活用をはじめ、物価・景気両面の状況に応じた迅速かつ総合的な対策に取り組み、断固として国民生活を守り抜くと語った。
今後の予算編成と財源のあり方は「政策課題によって様々だ」と説明した。増額を明言している防衛費については「国民の命や暮らしを守るには何が必要か、それを維持するにはどれだけの予算が必要か、そして予算規模によって財源のあり方も変わってくる」と述べた。
<参院選の勝敗ライン、与党で過半数>
7月の参院選の勝敗ラインについては「非改選議員も含めて与党で過半数」とした。参院選では「選挙公約の重点項目の一つとして憲法改正をしっかり掲げる」との考えを示した。
また、岸田首相は今月末にスペインで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に日本の首相として初めて出席すると正式に表明した。NATO首脳会議の際に日韓首脳会談を行うかどうかについては「何も決まっていない」と述べた。日韓関係については「このまま放置できない」と指摘した。
ドイツで開かれる主要7カ国(G7)首脳会議やNATO首脳会議で、力による一方的な現状変更は世界のどこであれ認められないことを訴えると説明した。
<「内閣感染症危機管理庁」を設置>
昨年の出生数は過去最少の81万人となり、少子化対策は喫緊の課題だと指摘し、首相の判断で出産育児一時金を大幅に増額、安心して妊娠・出産できる環境づくりを進めると述べた。
新型コロナウイルスについて、6月中の感染状況を見極め、改善が確認できれば7月前半から全国対象に観光需要喚起策を実施するとした。
政府の感染症対応力を強化するため、内閣官房に「内閣感染症危機管理庁」を設置するとともに、専門家組織の国立感染感染症研究所と国際医療研究センターを統合し、日本版のCDC(米疾病対策センター)を創設する。岸田首相は「有事と平時それぞれメリハリを効かせた態勢をつくる」と説明した。
電力需給安定のため、供給面では再生可能エネルギーの徹底的な拡大と、安全を確認して地元の理解を得た原発の再稼働を進めると強調。需要面では、省エネと節電を積極化させるための措置を早急に公表するとした。
18歳の女子学生に飲酒させたと週刊誌に報じられ自民党を離党した吉川赳衆院議員に関し「離党したからと言って責任が消えるものでない」と指摘、「説明責任が果たせないなら議員としての進退に直結する」と述べた。
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