September 3, 2014 / 5:38 AM / 5 years ago

第2次安倍改造内閣と自民党役員人事:識者はこうみる

[東京 3日 ロイター] - 第2次安倍改造内閣と党役員人事の布陣は、派閥領袖などベテランを要のポストに置く、重厚で実務型の陣容となった。谷垣禎一氏を幹事長に起用することで、党内融和・挙党態勢を再構築する狙いがあるとみられる。

 9月3日、第2次安倍改造内閣と党役員人事の布陣は、派閥領袖などベテランを要のポストに置く、重厚で実務型の陣容となった。都内で撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

識者の見方は以下の通り。

●消費再増税に向けメッセージ

<大和証券・チーフエコノミスト 永井靖敏氏>

内閣改造人事では、官房、財務、外務などの主要閣僚がそろって留任。政策の連続性が保たれるとの観点で、波乱なく、かつ無難な布陣だ。地方創生相として石破茂氏を閣内に取り込んだことで、党内分裂を回避することができたことも政治的に大きい。市場に安心感が生じるのではないか。

内閣・党役員人事をみると、女性の登用が目立つ。党役員人事では、政策立案の要となる政調会長に稲田朋美氏を起用した。幹事長に総裁経験者の谷垣禎一氏が就くことで、党3役のバランスを取ったのだろうが、その手腕は未知数。経済産業相に就任する小渕優子氏と同様、首相は政策遂行にあたって扱いやすい人を起用した印象だ。

厚労相にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革に熱心な塩崎恭久氏が就く。GPIFのポートフォリオ変更では、厚生労働省の意向が素早く反映されることになるのではないか。

目先の政策課題として注目されるのは、消費再増税に向けた判断だ。麻生太郎副総理兼財務相の留任に加えて、財務相経験者で、かつ財政再建の必要性を唱えている谷垣氏の幹事長就任で、少なくとも消費再増税に向けたメッセージを送ったとみていいのではないか。

●景気回復に石破氏の役割大きい

<エース経済研究所社長 子幡健二氏>

塩崎氏の厚労相での入閣に加え、地方創生相に石破氏を起用した点が、やはりマーケットにとっては意味がある。景気回復の遅れが懸念されている中で、秋の臨時国会における補正予算案では、地方経済の活性化に優先的に配分されることが期待できる。実際に石破氏の入閣の話が出てから建設株が動いた。自民党としては、選挙対策という意味合いもあるのだろう。一枚岩らしく形にはなった。

一方、谷垣氏が自民党の幹事長に起用されたことで、消費税率を10%に引き上げる方向性がより強まったとされるが、この点については市場はそれほど重視していない。むしろ景気回復に向けた石破氏の役割が注目されていくだろう。

もっとも足元ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が日本株を買い増す前に、海外の年金基金などが先取りして日本株を買おうとする動きが出ているようだ。これを察知した短期筋が円売り、株買いに動いたことが、昨日日経平均が上昇した背景にあるとみられている。日経平均については目先の調整が入る可能性はあるが、9月中は昨年末に付けた高値の1万6300円を試す展開になりそうだ。

●円安期待を高める布陣

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏>

第2次安倍改造内閣は、円安への期待を高める布陣に見える。経済政策面ではアベノミクスの考え方に非常に近い塩崎恭久元官房長官が、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を所管する厚生労働相に就任した。国債中心の運用を株式や外貨資産に振り向けるGPIFの改革の実現可能性が高まったと、市場は受け止めている。これまでも話題になってきたテーマではあるが、塩崎氏の入閣によって期待が一層強まり、円安要因になっている。

一方、麻生太郎財務相が留任し、財務相経験者である谷垣禎一法相が自民党幹事長に就任した。幹事長は、政府の政策に直接絡まないとはいえ重要ポストだ。こうした布陣からも、予定通り消費税再増税の方向にあるということだろう。再増税に向けては、デフレ脱却のための施策を強化する必要があり、その意味でも塩崎氏が入閣した点は大きいといえる。

消費税を10%に引き上げれば、日本の物価が再び上がる。購買力平価の面からは円安方向にシフトする。予定通り来年10月に増税となれば、それによる物価水準押し上げ効果で、ドル/円は現時点から1.50─2.00円程度の円安圧力を受けるとみる。

●消費増税確度高まる、第3の矢の印象薄く

<ニッセイ基礎研究所 経済調査室長 斉藤太郎氏>

経済政策は全く変更はないだろう。今までの布陣で特に改造する必要性はなかったし、主要経済閣僚も変わっていないので。また、「第3の矢」(成長戦略)を今まで以上に推進しようとの意気込みも、印象は薄い。いずれにしても、今回の内閣改造の意味というのは、来年予想される解散・総選挙に向けての政権安定のための布陣強化ということに尽き、政策の意味合いは全く感じない。

ただ、谷垣幹事長が起用されたことで、10%への消費税引き上げの確度は高まったと思う。もともと見送りという選択肢は取り得ないとみていたが、さらに増税の色が濃くなったという印象。

塩崎氏の厚生労働相起用は、マーケット的にはGPIF改革で株価上昇材料だろうが、日本経済にとって本丸の問題は社会保障改革であり、塩崎氏がこの問題にどのように取り組むつもりなのかは見えていない。

小渕氏の経済産業相起用も、よくわからない。女性起用という趣旨だろうが、いきなり主要閣僚に入れてきたなという印象。しかも彼女がこの企業関連の行政で表に立って何かを推進するという経験は聞いたことがないので、未知数だ。

西川氏の農水相起用も、TPP交渉を重視しようというものだろうが、TPPは既にかなり道筋がついているので、あらためて違う路線の人物を入れることも考えにくく、こうなったのだろう。

●挙党態勢作りが狙い、増税反対抑え込みへ

<政治アナリスト 伊藤惇夫氏>

自民党の新3役・内閣改造の顔ぶれから浮かび上がる安倍晋三首相の狙いは、ひとつは挙党態勢を作ること。幹事長に就く谷垣禎一氏は、考え方では首相と一番距離がある。その人を幹事長に据えることで挙党態勢を作り上げる狙いがある。

また、対中関係改善にかなり強いメッセージを発信しているとみえる。谷垣氏だけでなく、総務会長に就く二階俊博氏も中国との関係は良好だ。3役のうち2人が親中派ということは、中国との関係改善に意欲を示した強いメッセージと受け止めた。

消費増税をめぐる問題では、谷垣氏は財政再建論者で、民主党の野田佳彦元首相との約束もある。法務相時代には消費税率は予定通り(10%に)上げるべきだと明言している。安倍首相としては非常に悩み多い課題だが、首相もやらざるを得ないと思っていると思う。仮に消費税率を上げないとなると、日本は財政再建を放棄したのかと海外の目が厳しくなるからだ。

株価を一番大事にしている安倍政権にとって、増税先送りは株価にかなり大きなダメージを与えるだろう。法人税減税と引き換えに財務省と取引した面もあると思う。谷垣氏を幹事長に据えることで、党内の引き上げ反対派を抑え込み、党と内閣の意志を統一させて踏み切る可能性が高い。

内閣支持率は、今回の内閣改造で、一時的には多少上がると思う。もっとも人気取りの顔ぶれではないので(上がるとしても)ごくわずかだろう。

サプライズ人事ならそう遠くない時期に解散もありえると注目していたが、これで、当分、安倍首相の視野に解散は入っていないと言える。

衆院解散・総選挙の時期は、内閣支持率次第だが、今の段階では、来年の通常国会の終盤が最も可能性が高い。(来秋の)自民党総裁選前に実施し、万全の態勢で総裁選に臨む。(衆院選で)信認を受けた総裁として、降ろすわけにはいかなくなる。

*内容を追加して再送します。

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