[ソウル 20日 ロイター] - 北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は20日、同国が米国に対する防衛力を強化し、「一時的に停止された全ての活動の再開」を検討すると伝えた。核爆弾と長距離ミサイルの実験を自粛していることに言及しているとみられる。
金正恩朝鮮労働党総書記は、米国の敵視政策への対抗措置を含む「当面の仕事と重要な政策課題を討議し決定する」ため、19日に党政治局会議を招集した。
KCNAは米韓合同軍事演習や周辺地域における米最新鋭戦略兵器の配備、米国および国連の制裁を引き合いに出し、「米国の敵視政策と軍事的脅威は、緊張緩和に向けた全般的な潮流を維持するためのわれわれの誠実な努力にもかかわらず、これ以上見過ごすことのできない危険なラインに達している」としている。
政治局は「一段と強力な物理的手段を直ちに強化」するよう求めつつ、「われわれが自発的かつ優先的に行った信頼醸成措置」を再考し、「一時的に停止された全ての活動を再開する問題を速やかに検討する」ことを命じたという。
政治局は「米国の帝国主義者との長期的対立に備え、より徹底した準備を行うべき」と結論づけた。
バイデン米大統領は就任1年に合わせて開いた19日の記者会見で、北朝鮮について言及しなかった。
ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)の報道官は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)や核兵器の実験を再開した場合、どのような対応をするのかとの質問に「仮定の話」にはコメントしないとした上で、朝鮮半島の完全な非核化が目標であることに変わりはないと発言。
「具体的な成果を出すため、引き続き、前提条件なしで真剣かつ持続可能な外交に関与する用意がある」とし、北朝鮮の兵器開発の進展を防ぐため、国際社会と協調して取り組みを継続していくと述べた。
韓国国防省は、今月相次いでいる北朝鮮のミサイル発射実験は「重大な脅威」だとし、即応態勢を続けつつ、北朝鮮の冬季演習を注視していると発表した。対北朝鮮関係を統括する韓国統一省は、朝鮮半島は南北対立の過去に戻るべきではないとし、対話と外交が唯一の道だと呼び掛けた。
正恩氏は2019年末にも、非核化交渉再開に向けた歩み寄りの求めに米国が応じなかったことを受け、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験の停止にとらわれる根拠はもはやなくなったと発言していた。政治局会議による今回の決定はさらに一歩踏み込んだ対応とみられる。
米シンクタンク、ウィルソン・センター(ワシントン)のジーン・リー研究員は「戦争のような雰囲気をつくることを狙った揺さぶりが一段と増えるだろう。挑発のための実験もさらに実施される可能性がある」とし、「正恩氏は追加の兵器実験を正当化するあらゆる機会を利用するだろう」と述べた。
ソウルにある北朝鮮大学の梁茂進教授は、北朝鮮が故金正日総書記の生誕80周年を迎える2月、故金日成主席の生誕110周年を迎える4月に長距離ミサイルなどの兵器実験を行う可能性があると指摘。「2017年に見られたような挑発と制裁の応酬が再び繰り広げられる可能性がある」と語った。
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