July 20, 2017 / 9:24 AM / 3 years ago

日銀総裁会見:識者はこうみる

[東京 20日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は20日の金融政策決定会合後の記者会見で、物価目標達成時期を先送りした理由について、企業や家計の物価見通しが足元の水準に大きく左右されやすい点を「十分勘案していなかったと言わざるを得ない」と述べ、「何回もの先送りは残念」と振り返った。

 7月20日、黒田日銀総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、物価目標達成時期を先送りした理由について、企業や家計の物価見通しが足元の水準に大きく左右されやすい点を「十分勘案していなかったと言わざるを得ない」と述べ、「何回もの先送りは残念」と振り返った(2017年 ロイター/Issei Kato)

●本音では2%目標の引き下げを望んでいる可能性も

<マーケット ストラテジィ インスティチュート代表 亀井幸一郎氏>

日銀の黒田総裁はきょうの会見で、「日本の適合的な物価形勢を十分に勘案してこなかったと言わざるを得ない」と述べた。この発言を聞いて、本音では2%の物価目標を引き下げたいのではないか、との印象を持った。

一方、市場が関心を向けていたETFの買い入れについて、黒田総裁は、副作用はない、株価水準や変動にコミットしているわけではない、と現状維持路線を強調した。

しかし、日銀によるETFの購入残高は約17兆円に上る。確かに、株価の時価総額に比べて小規模かもしれないが、中央銀行で株式をこれほど大規模に購入しているのは日銀だけだ。中央銀行の資産の健全性という観点からも、どのように現行の購入スキームを始末していくのか、市場は、その道筋のヒントが得られるかもしれないと期待していたが、結果的に「無回答」になったのは残念だ。

今夜は欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の会見があり、市場の関心は既にそちらに向いている。

ドラギ総裁は、ユーロ圏経済のデフレ圧力はリフレに変わり、従来の金融政策を維持すると緩和的になり過ぎる可能性があると指摘した。市場は、ECBがテーパリングを模索しているとのシナリオに乗ってユーロ買いを進めてきた。

短期的にみれば、ユーロロングが積み上がった状態になっているので、ドラギ総裁が市場の期待どおりの発言をすれば、いったんユーロロングの利益確定売りが流入しやすいとみている。

●追加緩和の可能性に含み持たせたのはプラス

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア投資ストラテジスト 鮎貝正弘氏>

今回の金融政策決定会合の数日前に、日銀内でETF(上場投資信託)の買い入れの持続可能性に懸念の声がある、というような報道が出ていたため、一部ではETFの買い入れ額を減らすのではないかという思惑もあった。きょうの黒田東彦日銀総裁の会見はこういった思惑に多少対応した内容だった。

現状維持で緩和継続ということが市場に安心感を与えた。黒田総裁は将来の追加緩和の可能性にも含みをもたせ、足元の為替はややドル高・円安が進んでいる。

日銀は会合後に発表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、目標とする物価2%の到達時期を「19年度頃」に先送りした。13年4月に黒田総裁が就任してから6回目の先送りとなる。日銀の見通しはあまりにも甘すぎることは市場は織り込み済みで、延期が日銀の信用を失わせることはない。きょうの会見で黒田総裁が物価上昇目標の当初見通しが間違っていたと公の場で認めたことは一歩前進なのかもしれない。

市場は現在の日銀の政策の持続性に疑問を持っている。現状の政策を永遠に続けていけないことは誰しも分かっている。何らかの要因でマーケットがクラッシュしたり急激な外的ショックがあったりした場合、追加策をどの程度とれるのかという疑問がどんどん膨らんでいくという状況に変わりはなく、それに対する日銀の回答は全くない状態だ。

●物価目標の解釈柔軟化が必要

<SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト 岩下真理氏>

日銀は展望リポートで、物価下振れ要因を説明する上で、「企業の賃金・価格設定スタンス」の慎重さという新たなワードを取り上げた。賃金コストの吸収はいずれ限界に達し、企業の価格設定は次第に積極化するとの見方をしている。今後も企業に働きかける日銀のコメントが続くだろう。

黒田総裁は会見で、日銀として6回目となる物価見通しの下方修正に関連して、欧米中銀の見通しも先送りされているとアピール。しかし、欧米は今年になって、2%近辺まで物価が上昇しており、日銀の状況とは大きく異なる。現在の為替と原油価格の水準が続いた場合、日銀は物価見通しを再度引き下げる可能性も否定できない。

できるだけ早いタイミングで、政府・日銀の共同声明で明記した物価目標2%について、目標を変えないまでも、その解釈を柔軟化させる必要があるのではないか。

また、黒田総裁は、物価2%に向けたモメンタムが維持されているとし、さらなる総括検証に否定的な考えを示した。しかし、国債市場の機能低下やマイナス金利の副作用を考慮すれば、イールドカーブコントロール政策導入から1年経過となる9月以降、総括検証すべきと提案したい。

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