先にカリフォルニア州ランチョミラージュで2日間にわたり行われた米中首脳会談では、両国の「新たな形」での協力が謳われた。しかし実際には、両国の「覇権争い」がこの先一段と激化する可能性の方が高い。
首脳会談前のオバマ大統領と習近平国家主席のあわただしい動きを見れば、両国の視線が同じ方向を向いていることは一目瞭然だ。ただ、目標到達に至るまでの過程では、それぞれ異なる課題を抱えている。
彼らの視線の向かう先はラテンアメリカ(中南米およびメキシコ)であり、そこで目指すのは貿易や投資機会の拡大だ。経済改革によって数百万人が貧困から脱し、新たな中間層が生まれているラテンアメリカは、米国と中国がともに必要とする天然資源に恵まれ、政治は概ね安定し、貿易には前のめりな姿勢を見せる。
最近の両国首脳らの外交日程をおさらいしてみよう。オバマ大統領は先月にメキシコとコスタリカを訪問した。バイデン副大統領はコロンビアとトリニダード・ドバゴ、ブラジルに出向いた。オバマ大統領は先週にはチリ大統領の訪問を受け、10月にはブラジル大統領の訪米も予定されている。
一方、習主席は、バイデン副大統領と入れ違いでトリニダード・トバゴ入り。コスタリカとメキシコにも公式訪問し、貿易および協力関係の促進を訴えた。
米中はともに、より自信を深めつつあるラテンアメリカを目の当たりにしたはずだ。ラテンアメリカは新たに身に付けた強さを武器に、複数の貿易相手と交渉し、相手国からより有利な条件を引き出すことができるようになった。米国が対ラテンアメリカ貿易で中国に対するリードを保つには、さらなる努力が必要だ。中国には、ラテンアメリカで使える「うなるほどの金」があるからだ。
ラテンアメリカにとって歴史の大半を通じて最大の貿易相手国だった米国は、今もその地位を保っている。自由貿易協定(FTA)を積極的に推し進め、ラテンアメリカとの年間貿易額は8000億ドル以上で、実に中国の3倍以上を誇る。
しかし、一期目のオバマ政権の外交姿勢は「ラテンアメリカ軽視」と広くみなされていた。一方で中国は、この地域に急速に食い込んだ。
2000年当時は取るに足らないほどだった中国とラテンアメリカの貿易額は、2012年には約2600億ドルにまで膨らんだ。ブラジルから鉄鉱石と大豆を大量に輸入する中国は、2009年には米国を抜いて同国の最大の貿易相手国となった。
他にも興味深い数字がある。例えば1995年には、ブラジルの外国直接投資(FDI)の37%は米国が占めていたが、この数字は2011年には10%にまで下がったという。
米国がここにきて再びラテンアメリカに熱を上げている理由は、少なくとも部分的には、中国がアフリカで見せた経済的成功をラテンアメリカでも繰り返すのではないかという恐怖感だ。アフリカでは、中国は自分たちを善意あるパートナーとして売り込んでいるが、これは内政干渉を繰り返してきた西側諸国の歴史とは対照的だ。
中国と米国はそれぞれ、ラテンアメリカにどうアプローチするかという課題に直面している。
米国には、歴史的な地域への干渉や、政治と経済を結び付けようとする姿勢への根強い反感が突きつけられている。また、数々の国内問題や地球規模の問題、アジア重視に舵を切った外交政策も、米国がラテンアメリカで「言行一致」を守るのを妨げる要因になるかもしれない。実際、これまではそうだった。
対照的に中国は、ラテンアメリカでは、概してイデオロギーの重荷は背負っていないと見られている。中国のアプローチは、ほとんど通商面だけに絞られている。
中国が特に関心を寄せるのは、地域で2番目に大きな市場であるメキシコだ。これまで中国は、米国市場向け工業製品の輸出でメキシコとライバル関係にあった。しかし今は、メキシコが国内石油産業への門戸を外資にも開くかもしれないとの期待を背景に、インフラや鉱業、エネルギーへの投資などでメキシコ政府への協力を模索している。
前途に障害はある。メキシコのペニャニエト大統領が習主席に示した懸念の1つは、貿易収支全体では黒字を達成したにもかかわらず、対中貿易では巨額の赤字となっている点だ。しかし、中国はさらなる輸出増大への意欲を隠さない。中国はメキシコとのFTA締結にも熱心だが、メキシコ側は時期尚早との姿勢を崩していない。そして中国は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)にも関心を示している。
一方で、メキシコの対米貿易は発展が続いており、2010年代にはカナダを抜いて米国の最大の貿易相手国になるとの試算もある。
米中両国はまた、ラテンアメリカに「重荷」も持ち込む。米国政府は依然として相手国に圧力をかけようとしており、例えばブラジルには、イランなどの国に対して影響力を行使する責任があると繰り返している。また、中国による投資は「ガバナンスや反汚職、環境問題で良い慣行が持ち込まれるとは限らない」と懸念する声もある。
ラテンアメリカは米国に頼り過ぎるのを避けたいのと同様、今は中国への過度の依存も敬遠している。中国経済の減速が見えてきたのを考慮すればなおさらだろう。
(13日 ロイター)