June 19, 2013 / 2:57 AM / in 6 years

焦点:航空産業に新時代、受注拡大で製造現場に変革

[パリ 18日 ロイター] - 世界の航空機メーカーが自慢の最新鋭機を披露する航空ショーが17日、フランスのパリ郊外で始まった。最新機に耳目が集まる一方で、メーカーの製造現場ではコスト削減や工期短縮を目指したさまざまな策が講じられている。

6月18日、フランスのパリ郊外で始まった航空ショーで各社の最新鋭機に耳目が集まる一方、メーカーの製造現場ではコスト削減や工期短縮を目指したさまざまな策が講じられている(2013年 ロイター/Pascal Rossignol)

飛行性能を向上させる新設計の計画的導入は、航空業界に工場のオートメーション化や新技術の導入、コスト削減に向け過去10年以上で最大のチャンスをもたらしている。

今後5年以内には、航空機のエンジンパーツは3Dプリンターで作られ、塗装はロボット、リベット接合は機械で行われるようになっている可能性がある。米ボーイング(BA.N)民間航空機部門のレイ・コナー最高経営責任者(CEO)は、「次の大きな変革は製造現場にもたらされるだろう。さらなるオートメーション化で、いかに速く効果的に航空機を製造できるかがポイントだ」と語った。

航空業界は自動車と比べ、オートメーションの導入が遅い。ボーイングと欧州航空防衛大手EADS傘下のエアバスEAD.PAが1年間で製造するのは約1200機と製造量は比較的少なく、多額の投資を正当化するのが難しい。さらに複雑な製造過程や規制なども相まって、航空機は「手作り」で行われている部分が多い。

しかし記録的な受注の高まりを背景に、航空業界は低コストで多くの機体を製造する方向に舵を切り始めている。ボーイングの試算では、今後20年で3万5000機以上、4兆8000億ドル(約455兆円)相当が引き渡される公算だという。

厳しい価格競争で航空機メーカーは利益確保が厳しくなる中、コスト削減は利益率を改善するために残された唯一の手段だ。航空部品の6─7割はサプライヤーから調達しており、メーカーはサプライヤーに工夫を求めるなどして対応に当たっている。

政府の予算削減のあおりを食う軍用機部門もまた、工場運営の効率化を実施している。コンサルタント会社アリックスパートナーズのデービッド・フィッツパトリック氏は「今後5─15年で航空業界には大きな嵐が吹き荒れるだろう」と予言してみせた。

<3Dプリンター>

米オハイオ州シンシナティでGEアビエーションは、燃費効率を15─20%向上させる次世代機に向けたエンジンの開発を進めている。試験を行っている3Dプリンターは、薄いニッケル合金を何層も積み重ねて部品を作っていく。

GEの狙いは、3000度の高温にも耐えられる燃料ノズルチップを「印刷する」こと。エンジンは2016年からエアバスA320に搭載される予定で、それに間に合わせたい考えだ。

ノズルは大きな金属の塊から削り出して製造するが、その際に原材料の90%は無駄となる。3Dプリンターを使えば、加工の手間やそうした無駄を省けるため、コストや時間を劇的に削減することができる──GEと仏サフラン(SAF.PA)の合弁会社CFMインターナショナルのガレス・リチャーズ氏はこう説明する。

さらに重要なのは、ノズルの設計をする上でエンジニアたちに金属加工などの制約が及ばなくなる点だ。GEアビエーションのデービッド・ジョイスCEOは、「この製造技術は無くてはならないものだ。これがなければ設計することもできなかったからだ」と3Dプリンターがもたらした利点を強調した。

<塗装ロボット>

第2次世界大戦時から稼働している米シアトル近郊のボーイングの工場では、737型機が生産されている。ここではトヨタの生産方式の流れる組立ライン(ムービング・ライン)を取り入れ、2000年以降は1カ月当たり38機を製造している。これはかつての3倍に当たる数字だ。製造能力が上がったことで、工場スペースの効率利用や1機当たりのコスト削減も達成した。

2014年半ばまでには1カ月当たり最大42機の製造を目指す予定で、次世代の737マックス製造に向けた工場の再編も同時に行う方針だ。737マックスは17日のパリ航空ショーでも契約が交わされ、これまでの受注は1441件となった。

ボーイングによれば、シアトル北部にある大規模な工場では、777型機用にもムービング・ラインを導入しており、製造量は2006年以降で約19%増加しているという。

そして今、777型機の翼の塗装では、自動車用に使われていたロボットアームが活躍している。生産ラインのマネジャーであるジェイソン・クラーク氏によると、人間の手からロボットに代わったことで塗装の厚みにムラが少なくなったほか、大幅なコスト削減が見込まれるという。最終的には、航空機の塗装が全てロボットの手に委ねられる日が来るかもしれない。

<エアバスの「マルチタスク」>

一方、塗装は全て人間が担当しているというエアバスは、仏トゥールーズ工場の組立ラインで生産プロセスに磨きをかけている。エアバスの製造現場では静止ラインを使っており、ほとんどの機体は4列に並ぶラインで組み立てる。こうすることで1本のラインに問題が出ても生産そのものが停止される心配はない。

同社は、同時に多くの仕事をこなす「マルチタスク」に力を注いでおり、この戦略で組立時間の3割削減を達成した。

例えば翼は従来、胴体の中心部分に初めに取り付け、それから別の胴体部分を付け、最後に内部システムを起動させて作動状態をチェックするというやり方が取られていた。しかし同社は、初めに胴体部分を完成させてしまえば、システムの起動チェックと翼の作業を同時にできることに気づき、この効率化で作業時間の短縮に成功した。

マーケティング・コミュニケーション部門の責任者アラン・パルドー氏は「われわれは常に、作業を同時進行で素早く進めるための方法をさらに見つけようと力を尽くしている」と語った。

(原文執筆:Alwyn Scott、翻訳:梅川崇、編集:宮井伸明)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below