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岩田日銀副総裁インタビューの一問一答
2013年6月24日 / 14:12 / 4年後

岩田日銀副総裁インタビューの一問一答

[東京 24日 ロイター] - 日銀の岩田規久男副総裁は24日、ロイターとのインタビューに応じ、日銀が4月に導入した異次元緩和に伴う予想インフレ率の上昇と実質金利の低下などを受け、効果が実体経済にも波及し始めているとの認識を示した。

6月24日、日銀の岩田規久男副総裁は、ロイターとのインタビューに応じ、日銀が4月に導入した異次元緩和に伴う予想インフレ率の上昇と実質金利の低下などを受け、効果が実体経済にも波及し始めているとの認識を示した。都内で同日撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

日銀が掲げる2%の物価安定目標の達成に「全力で取り組む」と強調するとともに、名目成長率目標を達成するために必要なマネタリーベースの伸びを推計するマッカラム・ルールなどに基づけば、2%達成は「2015年4─6月期になる計算だ」と試算した。

──「量的・質的金融緩和」(異次元緩和)導入後の効果の波及度合いをどのようにみているか。

「2%の物価安定目標をできるだけ早く達成することに日銀がコミットしている、という重要な柱がある。これを大前提にして量的・質的金融緩和でマネタリーベースを増加させていくことで、予想インフレ率が高まっていく」

「(予想インフレ率の上昇で)実質金利が下がれば、ある程度の時間はかかるが、設備投資や住宅投資が増える。株価と円相場にも影響を与え、株と外貨資産の価値が上がる2つの資産効果が消費を押し上げる。円高修正によって、輸出も増えてくる。このように設備投資、住宅投資、個人消費、輸出という民間需要が拡大し、需給バランスが改善していく。需給バランスが改善すれば生産が増えるので、雇用も増えてくる。その結果、少しずつ賃金や物価が上昇する。そうなれば予想インフレ率が一段と上がり、実質金利が下がって設備投資などを刺激するという効果を繰り返す好循環の過程に入っていく」

──緩和効果に対する現状の評価は。

「予想インフレ率の上昇によって、マインドが改善する効果はすでに出ている。消費が先行して動き、生産もすでに増加している。有効求人倍率が上昇し、雇用も改善するとの見通しの中、いろいろなところで緩和効果があらわれ、前向きな行動がでてきている。現状は実体経済に影響を及ぼす芽が出始めている段階といえる」

──市場や経済主体の期待は変わりつつあるか。

「デフレが15年も続き、当初は政策を実施してもすぐに予想インフレ率は上がらないと思っていた。ところがフタを開けてみると予想インフレ率は非常に早く反応した。ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は株や為替との相関が非常に高い。今後、財務省が物価連動国債の発行を再開することで市場が厚くなり、信頼性が増す」

「金融政策で予想に働きかけることを不安視する声もあるが、金融政策は基本的に予想に働きかけるもの。予想を否定する金融政策はありえない。黒田総裁就任前の日銀は、意図せずにデフレ予想に働きかけていたといえる」

──物価安定目標達成のカギを握る予想インフレ率の動向をどうみるか。

「BEIは調整過程にあるが、次第に戻ってくると思う。インフレ率は、民間アンケートなどでは以前は下がるという見通しだったものが、上がるという予想に変わってきている。効果は次第に浸透してくる」

──2年程度で2%の物価安定目標を達成できる見通しと時期は。

「2%を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に達成することが最も重要であり、全力をあげて取り組む。物価が足元で上がり始めるとフィリップス曲線が上方にシフトし、もう少し物価が上がり、賃金も上がるとの予想が出てくる。そうなれば、2年程度で達成する可能性は高まっていく」

「2%の見通しについて、四半期ベースでいつ頃に達成するかを特定することは難しい。マッカラム・ルールなどに基づくと、(2%到達には)今の緩和ペースで2年程度、2015年4─6月期になる計算だ。しかし、マッカラム・ルールも過去のデータに基づいており、今後の世界経済の動向など不確実性は伴う」

──実体経済や物価の見通しが下振れた場合の政策対応の必要性は。

「リスクは上下両方にあり、下振れも上振れもある。いつでも監視し、対応する用意はできている。具体的には、政策委員会で討議して決める事だが、われわれは手段を持っている。経済・物価が下振れたかどうかは中長期的な判断で、特に予想インフレ率が長期的に低下し、安定した2%に中長期的に到達しないような場合を考えている。短期的に下振れることはいつでもあり得るため、中長期的なトラック(経路)に乗っているかどうか、それによって実質金利が下がるかどうかだ」

──中長期的な予想インフレ率が低下した場合の政策手段は。

「資産買入れの対象としては、国債市場が一番大きいため、買う余地があるし、経済主体に対して中立的だ。個別株式などの買い入れは、特定の経済主体に直接的な影響を与えてしまうという面がある。もっとも、いろいろな政策手段をその時の経済状況をみながら選択すべきで、今から何を買った方がいいということはない。ただ、一般的には、まずは国債を買うことが基本だと考えている」

──リーマンショックなど危機が発生した場合の政策発動余地は。

「危機対応手段はもちろんある。リーマンショックのような大きな金融のショックで流動性危機が発生すれば資金需要が急増するため、信用秩序の維持の観点から、短期的な流動性対策を危機が収まるまで行うことはあり得る。危機対応はいつでも準備しており、監視・モニタリングもしている。信用秩序の維持と物価の安定は日銀の2つの目的なので、信用秩序が崩れるときは通常の金融政策とは別途対応するということだ」

──日本の株式・為替市場の動きが激しい。金融政策の影響の有無をどう考えるか。

「基本的には海外発の面が強い。金融政策は市場に理解されるのに時間がかかり、日銀の金融緩和もいわゆる異次元ということで市場は消化にとまどっている。だんだん市場も理解が深まってくる。大きな政策を実施する場合、市場とのコミュニケーションを行っていかなければならない。金融政策当局がブレることはあってはならない」

「日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は変わらず、足元だんだん良くなる傾向にある。このため、短期的な市場動向への対応を目的とする政策は必要ないと思う。もっとも、金融政策に対する中長期的な反応ということであれば、適切な対応を考える必要がある」

──異次元緩和後の金利動向をどうみているか。

「金利に対しては2つの違う働きの効果が働いている。国債を大量に買い入れたため、名目金利やリスクプレミアムは下がる。一方、予想インフレ率が上がることで名目金利が上昇する要素もある。金融政策の結果、予想インフレ率が上昇し、実質金利が下がっているかどうかが一番大事だ。そうでなければ株や為替、実体経済に対する影響が出てこない。(現在の実質金利は)BEIでみるとマイナスだ」

──債券市場安定に向け、6月の金融政策決定会合で見送った固定金利オペの長期化の必要性は。

「長期金利のボラティリティ(変動率)が上昇したが、国債買い入れオペでさまざまな工夫をしており、大分変動率も収まってきている。市場もだんだん落ち着いて来ていると思う。いつまでも変動率が大きい状態が続くならば(オペの工夫や)他の政策手段も考えるかもしれないが、現時点では必要ない」

──世界経済の動向をどのようにみているか。「一時より安定している。わが国の実体経済は改善している。今後は実体経済を反映して株・為替・金利は動いていくと思う」

──前例のない大規模な金融緩和政策の出口戦略。

「まだ初めて2-3カ月しか経っていない。まず入り口をうまく誘導するのが大切。出口は米国の方が先でFRBも苦労しており参考になる。ただ現時点で出口戦略について言う必要はない」

──副総裁就任前に2年程度で2%の物価目標が未達の場合の辞任を示唆したが。

「まずは説明責任を取るということだし、より大切なのは、説明責任を果たせるような政策を実施するということだ」

──日銀法改正議論を現時点でどのように捉えているか。

「それは政府・国会で適切な議論が行われるべき問題であり、わたしが現在の立場で外部に発言することは適切でない」

──副総裁として実務を担ってみての感想。

「日銀内のさまざまな部局を時間の余裕があるときに見て回っている。外部にいたときは金融政策の観点でしか日銀をみていなかったが、信用秩序の維持がなければ物価の安定もできない。そのためにはさまざまな人々の仕事、下支えがある。例えばオペについても、外部にいたときは簡単だと思っていたが、実務はそのような簡単なものではないとわかった。日本銀行の実務に対する理解を深めつつある状況だ」

伊藤純夫 木原麗花 竹本能文 編集 宮崎大)

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