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焦点:高学歴でも就職難、欧州危機が生んだ「失われた世代」
2013年6月26日 / 09:53 / 4年後

焦点:高学歴でも就職難、欧州危機が生んだ「失われた世代」

[ブリュッセル 25日 ロイター] - スウェーデンの大学でエコツーリズムと文化史を学んだLinnea Borjarsさん(25)は、卒業から1年を迎えようとしているが、いまだに職に就けず苦悩の毎日を過ごしている。

6月25日、EU域内では失業だけでなく、フルタイムの職を望みながらパートタイムで働く状態などを意味する不完全雇用が深刻な問題となっている国が多い。写真は会計学を勉強した求職中の男性。アテネの雇用センターで14日撮影(2013年 ロイター/Yorgos Karahalis)

卒業後、Borjarsさんは人権と観光をテーマに活動している非営利団体「フェアトラベル」で、インターンとして働き始めた。当時はここでの経験が正規雇用につながると期待していた。

しかし、そのような幸運に恵まれることはなかった。

契約が切れると、無給のインターンのまま働くことを条件に契約更新のオファーを受けたが、Borjarsさんはこれを拒否。以後、職探しに奔走したものの、2回の面接にたどりつくのがやっとだった。履歴書に書かれた優秀な学業成績やインターンの経験も効果はなかった。

「私は役立たずだと感じるようになった」。先月、若者が暴動を起こした場所から程近い地域に住むBorjarsさんは肩を落とす。その暴動でも厳しい就職難に抗議の声が上がった。

Borjarsさんの置かれた状況は、欧州経済危機がもたらした影響の深さを物語る。欧州連合(EU)域内では失業だけでなく、フルタイムの職を望みながらパートタイムで働く状態などを意味する不完全雇用が深刻な問題となっている国が多い。

EUが発表する失業統計には、ハンバーガーショップで働く大卒者や、より長時間の勤務を希望するパートタイマーのバリスタらは含まれていない。ただ、専門家からは不完全雇用の労働者人口の増加が著しく、無視できなくなっており、これが潜在的に大きな経済損失になっているとの声が聞こえる。

<不完全雇用>

不完全雇用がどこに組み込まれているのかを理解するには、EUの統計がどのように構成されているかを見る必要がある。昨年12月の統計によると、労働人口2億4000万人のうち2500万人が求職活動中の失業者とされ、失業率は11%となった。

それに含まれない1100万人については、失業中ではあるものの、求職活動をやめたか、すぐに働き始めることができないとされ、失業者とみなされなかった。この1100万人を含めれば、失業率は15%に跳ね上がっていた。

一方、より長時間の勤務を望みながらも機会がなくパートタイムで働いている900万人超は就業者とされた。仕事が必要としている以上の学歴や経験がある(オーバー・クオリファイド)労働者についての数字はないが、経済協力開発機構(OECD)の推計では、EU域内の総労働人口の4分の1以上に当たる6500万人に上るとされている。

希望に反してパートタイムで勤務する労働者については、オランダやベルギー、オーストリアなど、ジョブ・シェアリングの伝統がある国でも、そういったシステムが一般的ではない南欧や北欧でも増加傾向にある。現在、EUの労働人口に占めるパートタイマーは10年前の16%から20%に増加している。

<ダブルパンチ>

「スペインの状況は最悪だ。私の働くスターバックスでは、週10時間勤務の従業員を募集している」。こう嘆くのは、マドリードの大学で化学を学んだラウラ・イグエラスさん(24)。「ドイツやオーストリアに友人がいるが、エンジニアや化学者として働いている。スペインでは、スターバックスで働けるだけでラッキーだ」と皮肉を込めた。

欧州議会のシュルツ議長はロイターとのインタビューで、第2次世界大戦後これほど高学歴者の多い世代は初めてだと指摘。その上で「親は子の教育に多額の資金を投じてきた。その子どもが働く年齢になって、社会から『居場所はない』と突き付けられている。ロストジェネレーションだ」と述べた。

英国では、公共部門をはじめとして賃金が凍結された結果、時短で働く50歳以上の労働者が減少。若い労働者は労働時間を奪われる格好となり痛みを伴った。

米ダートマス大学のデービッド・ブランチフラワー教授は、「今ではこの2つのグループに大きな格差がある。経済危機の前は平等だった」と説明。「若者はダブルパンチを受けている。職に就けず、就いても十分な労働時間が確保できない」

<生活保護>

スウェーデン・ヨーテボリ大学のBjorn Gustafsson教授は、不完全雇用の労働者が「低賃金、低い生活水準によって貧困になり、収入を生活保護などに頼ることになる」と警告する。

欧州では大卒者の増加に伴い、企業側は求職者に対し、より実地経験を求めるようになった。このことで、理論的な大学プログラムと労働市場のミスマッチが深まり、自分が持つ学歴を必要としない職を受け入れたり、勉学を他の場所で続けたりする大卒者が増えた。

ストックホルムでは、Borjarsさんが大学院の願書を提出した。ただ、その効果については疑問を抱いたままだ。「ジレンマを感じている。大学の単位が増えても、就職しやすくなるとは限らない」と顔を曇らせる。

クロアチア出身のGoran Majlatさん(26)は、米ミネソタ大学でビジネスを専攻し2011年に帰国。海外留学経験があるMajlatさんでも就職難に直面し、7カ月間失業状態が続いた。クロアチアの若年層失業率は35%だ。

「うつになり、家から出ることもできなかった。車を運転するにもコーヒーを飲むにもお金が必要だ。最悪だった」と失業期間を振り返るMajlatさん。結局、地元ホテルのベルボーイとして働き始めたが間もなく解雇された。

Majlatさんは、再び9カ月間の失業期間を経て、販売員として仕事を再開し、その傍らでヨット会社で観光客の対応をする仕事にも就いている。後者の仕事について「魅力はないが簡単だ」と話すMajlatさんは、「仕事があればラッキーだ。どんな仕事でも」と前を向いた。

(原文執筆:Anders Melin記者、翻訳:野村宏之、編集:本田ももこ)

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