July 4, 2013 / 5:37 AM / in 6 years

焦点:ポルトガルの政治危機、ユーロ圏周辺国の構造問題を露呈

[ロンドン 3日 ロイター] - ポルトガルが政治危機に陥ったのは、国際支援機関から緊縮策を求められたことが直接的な原因かもしれないが、同国政府は経済構造の改善に努めなければ高い代償を払うことになるだろう。

7月3日、ポルトガルが政治危機に陥ったのは、国際支援機関から緊縮策を求められたことが直接的な原因かもしれないが、同国政府は経済構造の改善に努めなければ高い代償を払うことになるだろう。写真はコエリョ首相。ベルリンで撮影(2013年 ロイター/Tobias Schwarz)

コエリョ首相率いるポルトガルの連立政権は、連立離脱を議論する民衆党(PP)に命運が握られている。同党が離脱すれば、与党は過半数を割り込むためだ。

一般的なポルトガル人のように、民衆党は、国際支援機関からの780億ユーロ(1020億ドル)の支援プログラムに伴う一段の歳出削減に反発している。

仏Natixisのチーフエコノミスト、Patrick Artus氏は、ポルトガルの経済だけでなく、税基盤が縮小し続けていることを懸念。「これはユーロ圏の最も大きな問題の1つだ。周辺国において、マクロ経済の基盤が縮小していて、どうやって過去の債務を返済するのだろうか」と疑問を呈する。ギリシャで既に見られているような景気後退のスパイラルだ。

同氏は、ポルトガルが欧州から債務の返済を先送りしてもらっているにもかかわらず、公的債務の対国内総生産(GDP)比率の安定化には程遠いと指摘。「通常の支払能力の定義に当てはめるならば、ポルトガルは明確に行き詰っている」と述べた。

ポルトガルには経済成長が不可欠だが、経済協力開発機構 (OECD) によると、同国の潜在成長率は年0.5%に満たない。

1999年のユーロ導入後も同国の経済パフォーマンスはさえなかった。生産性は盛り上がらず、競争力が悪化する中、1999年から2008年の実質GDP伸び率は平均で1.3%にとどまり、1人当たりのGDP伸び率は2001年から11年まで横ばいだった。

Artus氏は、ポルトガルのスタグネーションの由来を経済構造に求めている。同国は1999年のユーロ導入以来、東欧や中国とローエンドの業界で競合し、製造業界の生産能力は15%超落ち込んだ。

ポルトガル人は3人に2人が15歳か16歳で学業を終え、労働者のスキルはあまり高くなく、労働生産性の伸びのトレンドは平均で年1%ほどとなっている。

硬直的なモノ・サービス市場なため、ポルトガルでは賃金の下落にもかかわらず、物価は高止まりしたままだ。

OECDは最近の報告書で「生産性や競争力復活のための包括的な構造改革は、経済のリバランスや持続的な経済成長の回復に極めて重要だ」と指摘している。

<長期的なリスク>

楽観主義者はポルトガルの輸出が好調だと指摘する。だが、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)で欧州ソブリン格付け部門ディレクターを務めるアイリーン・ジャン氏は、海外から多額の直接投資をひきつけることに失敗しており、先行きの大きな改善は見込みにくい、と指摘する。

同氏は「支援プログラムにおいて最初の2年間に導入された構造改革が実行され、再び経済の潜在力を引き上げるために直接投資を呼び込み、経済の柔軟性を高めることがポルトガルの希望だ」と述べた。

スペインに住むエコノミスト、エドワード・ヒュー氏は、ポルトガルの隣国スペインについて、危機的な状況は幾分和らいだものの、回復したと言うには時期尚早だと指摘する。

ポルトガルのケースは、ギリシャと大して変わらず、両国ともに発端から債務の再編が必要だったと指摘する。

それどころか、ポルトガルは過度に急速な財政再建を選択。必要以上の不況を招いたほか、海外への移民が相次ぎ、長期的なリスクが生じている。

ギリシャの場合、国際通貨基金(IMF)は過度に楽観的な経済見通しをしていたと認めたが、同氏は、ポルトガルに関しても同じような事態になるのではと予想している。

<第2の支援も>

シティグループによると、ポルトガルでは緊縮策への政治的な支援が危うくなり、2014年中盤で現在の支援プログラムから順調に脱するとの見通しが後退。第2の支援パッケージが必要になる可能性が高まった。

シティはノートの中で、「また、ギリシャやキプロスの例をたどり、最終的に何らかの形で政府債務再編が必要となる可能性も高まっている」と指摘する。

ポルトガルの政治混乱は、イタリアと似ている。イタリアでは、モンティ前首相は、レッタ首相率いる連立政権への支持を撤回する可能性もあると警告した。

経済状況も、ユーロ導入から問題を抱えているという点で似たり寄ったりだ。イタリアは、OECD加盟34カ国の中で、2000─11年に1人当たりのGDPが唯一下落した。

ポルトガルと同じく、イタリアは金融危機以降、GDPが約10%縮小。Artus氏によると、これが債務の対GDP比率を安定させる能力を損ねるとみられる。

同氏は「通常の景気後退では、GDPは縮小してから潜在的なGDP水準に戻る。今回の危機では、潜在GDPがGDPの水準に縮小しており、潜在GDPの縮小はずっと続く。経済が縮小すれば、過去の巨額の債務に対応することが困難だ。イタリアとポルトガルはそうした面で非常に似ている」と指摘する。

( Alan Wheatley記者, Global Economics Correspondent;翻訳 川上健一;編集 吉瀬邦彦)

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