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コラム:オバマ米大統領とノーベル平和賞の「資格」
2013年9月13日 / 05:17 / 4年後

コラム:オバマ米大統領とノーベル平和賞の「資格」

2009年12月、オバマ米大統領はノーベル平和賞を受賞した。それを一番驚いたのは、誰であろうオバマ大統領自身だったのではないか。現職米大統領のノーベル平和賞受賞者は少なく、オバマ氏を含めわずか3人しかいない。

9月11日、 シリアに対する軍事攻撃を検討しているオバマ米大統領だが、ノーベル平和賞の過去の歴史に十分な注意を払っているようにはまるで見えない。ベルリンで6月撮影(2013年 ロイター/Kevin Lamarque)

オバマ大統領は今、シリアに対する軍事攻撃を検討しているが、ノーベル平和賞の過去の歴史に十分な注意を払っているようにはまるで見えない。

過去の同賞受賞者には、赤十字社を創設したアンリ・デュナン、ソーシャルワークの先駆者ジェーン・アダムズ、第2次世界大戦後の欧州復興を主導したジョージ・マーシャル、米公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、ミャンマーの民主化指導者アウン・サン・スー・チー、南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領らがいる。

米大統領で初めてノーベル平和賞を受賞したのは、第26代のセオドア・ルーズベルトだ。ルーズベルトはノーベル平和賞を昔ながらのやり方、つまり、苦労を重ねて手にした。1906年の同賞受賞に至る道は、国際紛争の平和的処理を目的にハーグで設立された常設仲裁裁判所を強化するという決断から始まった。

米国とメキシコは、世界への手本として同裁判所に紛争を持ち込んだ。他の国々も同裁判所での平和的解決を求めるようになると、ルーズベルトは同裁判所創設の理念拡大を世界に呼びかける好機と考えた。しかし、日露戦争を戦っていたロシアがそうした考え方を拒んだ。

同裁判所の強化に日本とロシアも参加させたいと思うルーズベルトは、多くの人が不可能だと思っていたことを決断する。日露戦争停戦の仲介だ。ルーズベルトは日露両国の仲介役としてポーツマスでの講和会議を斡旋(あっせん)し、数週間後に講和条約の締結にまでこぎつけた。

その功績で、彼はノーベル平和賞を受賞した。

またルーズベルト自身、傑出した陸軍士官だった。スペインとの米西戦争では、「ラフ・ライダース」と称された第1合衆国義勇騎兵隊を率いて英雄となった。自分自身が実際に戦火をくぐり抜け、大統領としては武力紛争の回避に努めたのだ。

ルーズベルトがノーベル平和賞を受賞してから約100年後、オバマ大統領が同じ栄誉に浴した。米大統領としてまだ任期1年目だったが、ノーベル委員会は「国際的な外交と人々の協力を強化することに並外れた努力をした」とたたえた。

その称賛は時期尚早ではなかったか。シリア問題における過去数週間の対応を目にし、一部の人はノーベル平和賞の授与は早計だったと断じている。それに反論を唱えるのは難しい。

オバマ大統領は国民向け演説で、シリア問題は外交的な選択肢がすべて尽きたとし、軍事介入を準備する以外に道はないと語った。本当にそうだろうか。ロシアが提案した化学兵器の国際管理という単純かつ論理的な譲歩案にシリア政権が飛びついたのを見ると、その思いは強まる。

オバマ大統領は、世界平和の調停者としては知られていないロシア政府に、ルーズベルト的な仲介役を任せるのだろうか。プーチン大統領が武力紛争を回避した救世主となるのを黙って見届けるのだろうか。

それで構わないという声もある。オバマ政権の外交政策の重要課題からシリアは遠く離れているという理由からだ。

ワシントン・ポスト紙とABCが先に実施した世論調査では、米国民の64%がシリアへの軍事攻撃に反対していることが分かった。同調査結果について言及した記事の1つは、オバマ政権のシリアへのメッセージは「玉虫色」と評した。

われわれが目にしているのは、軍事行動を目前に控えた局面での驚くほどのリーダーシップの欠如だ。戦争の瀬戸際にある米国の大統領として、過去にはなかったことだ。

戦争は、間違っても軽々しく扱ってはならない。軍高官は自分たちが前線に立つわけではなく、作戦を立てるだけだ。政治家は戦わず、作戦も立てず、戦争への税金投入を承認するだけだ。戦地に赴くのは兵士だ。世界を守るため、長年にわたって米国の若者があまりに多くの血を流してきた。

米国の政治家は誰1人それを忘れるべきではない。特に、オバマ大統領はそれを肝に銘じておくべきだ。

[11日 ロイター]

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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