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焦点:米緩和縮小を見越したアジアからの資金流出はごくわずか
2013年9月13日 / 05:32 / 4年前

焦点:米緩和縮小を見越したアジアからの資金流出はごくわずか

[シンガポール 13日 ロイター] - アジアの金融市場では、米連邦準備理事会(FRB)の資産買い入れ(量的緩和)縮小に対する懸念が出ている。だが過去4年間に流れ込んだ外国からの投資資金がこれまでほとんど流出していない点からすれば、そうした懸念は誇張されすぎているかもしれない。

FRBが早期の緩和縮小を示唆したことを受け、アジアの債券、通貨、株式は4月以降売りを浴びてきた。6月には新興国市場は惨憺たる状況となり、アジアでは株価が軒並み数年来の安値に沈み、インドルピーなど一部通貨は最安値をつけた。それでも伝聞情報と統計の両方とも、アジアから去ったお金は極めて少ないことを示唆している。

外貨準備だけでみると、中国からフィリピンまで新興アジアのトップ10諸国には、FRBが大規模な量的緩和を行ってきた2008年11月から今年4月までの期間に、2兆1000億ドル相当の資金が流れ込んだ。それ以降で流出したのは約860億ドルと、流入総額の4%程度で、金融市場の主要基準からみればかなり些細な規模といえる。

中央銀行の介入や通貨価値の変動などを含む外貨準備は、資金移動を見積もる上で最適な指標ではないかもしれない。

しかし他の資金移動を判断する指標も同じ結論を示している。ドイツ銀行の推計では、6─8月にアジアの自国通貨建て債券市場から外国人投資家は約190億ドルを引き揚げたにもかかわらず、年間ではなお50億ドルの流入超であり、09年初め以降の流入額である2030億ドルとは比べ物にならない。

ロンドンの投資会社SLJマクロ・パートナーズの共同創設者、スティーブン・ジェン氏は「10年に及ぶ新興国市場への大規模な資金流入が10週間で巻き戻されるはずがない」と述べた。

もっともジェン氏は、新興国市場の資産が長年の金融緩和局面で先進国市場よりも安全とみなされていたので、先進国市場でそれなりの回復が起きれば新興国市場からのさらなる資金流出につながると認めている。

同氏は今週の顧客向けノートで「新興国市場への資金流入が『突然止まる』リスクはなお大きい」との見方を示した。

<あわてて逃げ出す動きなし>

FRBの量的緩和は08年11月から10年3月が第1弾、10年11月から11年6月が第2弾で、資産買い入れ額はそれぞれ2兆1000億ドルと6000億ドル、昨年9月から無期限方式で始めた第3弾は毎月850億ドルの債券を購入している。

こうした大量の流動性と欧州でも実質ゼロ金利になったことが相まって、国際金融協会(IIF)によると高利回りの新興国市場には09年以降で総額3兆0500億ドルが流入した。このうち公的部門の資金は2310億ドルだけで、大部分は理論的には特定の国に献身的に資金を振り向け続ける性質のものでないため、FRBが金利正常化を始めれば逃げ出す可能性がある。

とはいえ資金はなかなか逃げ出そうとしていない。また1994年、1999年、2003年という過去のFRBの金融引き締め局面から手掛かりを得ようとしているアナリストは、重要な違いを見落としているという事実に突き当たる。

第1に、FRBは単に資産買い入れ額を減らすと言っているだけで、以前のような利上げとは同列に論じられない。FRBは実質ゼロ金利を15年半ばまで継続するとしている。

第2に、だれも緩和マネーがどれくらい早く消えてなくなるか、あるいは緩和縮小に伴う米国経済の回復ぶりがどのような姿になるかに確信が持てないでいる。

最後に、米国債の利回り上昇は緩やかだ。10年債利回りは4月以降で110ベーシスポイント(bp)上がっているといっても、なお2000年の水準の半分にも達せず、1993─94年のピークだった8%には遠く及ばない。

モルガン・スタンレーの推計では、5月末以降に新興国市場ファンドから流出した資金は240億ドルで運用資産の10%近くだが、これらのファンドに09年以降に流入した資金額からすればほんの一部だ。

<株式よりも債券に打撃>

新興国市場資産の売りは、米長期金利の上昇が引き起こしたとの見方が投資家の間では根強いため、株式は痛手が比較的小さい。

米金利が上がればドルで資金調達した資産の保有コストが上がり、米国債と連動するアジアの高利回り債は打撃を受ける。ドル高と資金流出が進む結果としてアジア通貨は値下がりしてきた。

しかし米金利上昇に経済成長の高まりが付随する場合は、世界的な需要増と企業収益改善を意味するので、株式には好材料になり得る。

MSCIのアジア新興国株価指数.MIAPJ0000PUSは5月末以降で11%下落したものの、08年終盤からの上昇率の153%をいくらか削り落としただけだ。インドネシア株の指標であるジャカルタ総合指数.JKSEも、08年11月から今年5月までの上昇率が380%だったのに対してそれ以降の下落率は24%。

対照的にインドネシアの国債は、本来株式よりボラティリティが低いはずなのに、今年に入って350bpも利回りが上昇(価格は下落)し、08年からの値上がりの3分の1が失われた。JPモルガンの新興国市場債券指数.JPMEMBIGLBLは年初来で10%下げた。

アジア債券は、ファンドマネジャーが投資家の解約に直面しているため、さらに売り込まれる恐れがあるとの声も出ている。

ドイツ銀は「新興国の自国通貨建て債券ファンドは解約請求の動きが広がる可能性が見込まれ、これらの債券市場を圧迫しつつある」と指摘した。

(Vidya Ranganathan記者)

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