[ワシントン 17日 ロイター] - 米議会予算局(CBO)は17日、 米財政の長期見通しを発表し、債務水準を安定させるためには向こう10年間に2兆ドルの追加的な歳出削減が必要との見解を示した。新年度予算や連邦債務の法定上限引き上げ問題で政府、与野党の攻防が続く中、厳しい見通しが示された。
CBOは、現在、国内総生産(GDP)比73%の米公的債務は財政健全化に向けた策を講じなければ、25年後の2038年までに100%に膨らむと予想。現在実施している広範な歳出削減をやめた場合には、さらに深刻な事態を予想している。
CBOのエルメンドルフ局長は記者会見で、景気回復や1月に実施した富裕層増税のおかげで短期的には赤字が削減されるものの、ベビーブーマーの引退に伴う社会保障費の増加をカバーするには十分でないとし、「結局、昨年と変わらない。連邦政府財政は、永久に維持することができない状況が続いている」と述べた。
CBOは、債務を大幅に削減するには追加的な歳出削減が必要と指摘。向こう10年でさらに4兆ドルの歳出削減を行えば、2038年に公的債務は31%となり、過去40年の平均(約38%)を下回ると試算している。
財政赤字については、今年のGDP比約4%から2015年には2%と維持可能な水準に低下するものの、その後再び上昇すると予想。税制や歳出に関する法律が改正されなければ、2023年までに約3.5%、2038年までに6.4%に上昇するとしている。公的債務も同様で、2018年にGDP比68%に低下するものの、その後上昇に転じると予想している。
<強制削減廃止すればギリシャより深刻>
与党民主党は、さまざまな分野に影響を及ぼしている、強制的な歳出削減の停止を最優先課題としている。
CBOが今回示した長期予想は、強制削減による10年間で約1兆2000億ドルの歳出削減を加味したもの。代替策がないまま強制削減措置が廃止されれば、赤字の見通しは著しく悪化する。
CBOが示した、強制削減、その他予定されている歳出削減が実施されなかった場合のシナリオによると、公的債務は2038年までにGDP比190%に達する。これは、現在のギリシャ(約160%)をも上回る。
長期にわたるより重い債務負担は経済成長を阻害し、利払いにあてる歳入の割合が増え、金融危機のリスクが高まるとCBOは指摘している。
エルメンドルフ局長は、連邦債務の法定上限が引き上げられなければ、10月末から11月中旬の間に政府のデフォルト(債務不履行)が始まる恐れがあると指摘。債務上限が引き上げられなければ、10月半ばには新たな借り入れができなくなるとの財務省の見込みは「妥当と考えられる」と述べた。
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