September 20, 2013 / 4:01 AM / 6 years ago

コラム:米量的緩和縮小、年明けに大幅先送りの可能性も

田巻 一彦

9月20日、米FRBの量的緩和縮小が見送りとなったが、バーナンキ議長の会見を注意深く点検すると、縮小開始が年明け以降へと大幅に先送りされる可能性も否定できない。写真は18日撮影(2013年 ロイター/Gary Cameron)

米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和縮小が見送りとなったが、バーナンキFRB議長の会見を注意深く点検すると、縮小開始が年明け以降へと大幅に先送りされる可能性も否定できない。

次期FRB議長にハト派的な金融政策を志向する人物が決まれば、「量的緩和縮小」という政策の方向性自体が再検討される余地も出てきたと考える。背景には、中国を含めた新興国の経済情勢に対するFRBの予想外に大きな懸念がありそうだ。

<注視すべき「possibly」の意味>

17─18日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場が予想していた「量的緩和縮小」の開始という方向転換は見送られ、その後のマーケットに衝撃が走った。

確かに見送りという結果は予想外だったが、さらに驚いたのはバーナンキ議長の会見で示された見解の中身だ。

バーナンキ議長は年内の緩和縮小の可能性について、1)財政の悪影響が弱まり成長が時間をかけて加速していくのか、2)労働市場の伸びが続くのか、3)インフレ水準が目標に再び近づくのか、という3点について、指標で確認できるのか、向こう数回のFOMCで見ていく、とかなりハードルを上げた。

そのうえで「確認できれば、恐らく年内のある時点で最初の1歩を踏み出す」と述べた。

年内の緩和縮小の可能性について、「possibly」と表現したのは、過小評価できないだろう。

もともと市場が「量的緩和縮小」の年内開始を織り込みだしたのは、5月22日のバーナンキ議長の発言が発端だった。「状況改善の継続を確認し、持続可能と確信できれば、今後数回の会合で資産買い入れを縮小することは可能だ」との発言後は、新興市場からの資金流出も誘発した。

FOMCメンバーの中で、ハト派と見られていた複数の地区連銀総裁が、縮小に積極的な発言を繰り返し、市場は9月の縮小開始というシナリオの織り込み度合いを高めてきた。

<次期議長にハト派起用なら、大幅先送りの可能性>

一連の流れを見ていると、18日のバーナンキ議長の発言は、市場の一部で広がっている「縮小時期の小幅先送り」ではなく、大幅な先送りにつながる可能性がある。

米欧では、来週にもオバマ米大統領が次期FRB議長候補を提示するとの報道が多くなっている。有力候補と言われているイエレンFRB副議長が仮に指名されなくても、ハト派的な人物が指名された場合、緩和縮小の方向性自体が大幅な修正を余儀なくされる展開も十分にありうるのではないか。

例えば、バーナンキ議長が指摘した3つの条件が年内にそろわず、年明けにずれ込んだケースでは、ハト派の新議長の下で新しい枠組みを議論して提示してくるシナリオもあると予想する。

その意味でも、新議長にハト派的な人物が指名されるかどうか、というのはかなり重要になってきたと指摘したい。

<量的緩和継続なら、円安進展に壁>

仮に量的緩和が市場の予想を超えて長期化しそうだとみられるようになれば、世界的に株価が上昇し、米、独、日などの国債価格もサポートされ、長期金利は抑制基調になる展開が予想される。

一方、外為市場でドルは対主要通貨に対し、上値の重い展開が続くのではないか。ドル/円が100円を超えて円安方向に傾くというシナリオの実現性は、先送りされる公算が大きいだろう。

<FRB判断の背景に新興国経済への懸念も>

このようにFRBの量的緩和長期化が水面上に出てくれば、グローバルな資金フローの見通しは、大幅な修正を強いられる。

FRBが金融政策の方向性をよりハト派的に修正しようとしている要因については、大きく2つあると考える。

1つは米経済の成長力に対する見方の修正だ。バーナンキ議長は18日の会見で「成長に関して、われわれはこれまで余りに楽観的だった」と指摘した。潜在成長率の見通しとの関連で、生産性の減速は想定していなかったとも述べており、経済の成長エンジンの出力が、期待ほど強まらないことに不安感を持ち出している可能性がある。

さらに大きな要因は、中国を含めた新興国の経済情勢だと類推される。会見でバーナンキ議長は新興国に関連し「米国、また他の先進国の長期金利の変動が、新興国市場に一定の影響を及ぼし、一定の資本流出入につながるのは事実だ。特に、為替レートを固定しようとしている国がそうだ」と述べた。

新興国からの資金流出は、インドやブラジルなどで通貨と株価の下落をもたらし、それを防ぐために景気が落ち込んでいるにもかかわらず、利上げを決断せざるを得ないという「負のスパイラル」を誘発しかねない事態を生んでいた。

新興国がつまずけば、世界経済全体に動揺を与え、米経済にも大きな下押し要因として働きかねない。特にシャドーバンキングという火薬庫を抱える中国の動向は、米政策当局にとっても無視できない要因であると思われる。

FRBが「量的緩和縮小」を先送りしている間に、新興国が時間を稼いでマクロ状況を改善させることができれば、それはFRBにとっても望ましい展開であるだろう。

一方、アベノミクスを展開中の日本にとって、米量的緩和の長期化は日本株のサポートにはなるものの、円安が進まなくなる要因になるとも想定でき、損得勘定は単純ではなさそうだ。

いずれにしても、次期FRB議長の人選で先行きの展開を占うことが可能になるだろう。

[東京 12日 ロイター]

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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