November 4, 2013 / 2:01 AM / 6 years ago

コラム:中国経済に本当に必要な「前例のない改革」

国際政治学者イアン・ブレマー

11月1日、中国の政治エリートたちは巨大化した同国経済の中で動きがとれなくなっており、習近平国家主席には経済改革だけでなく政治改革も加速が求められる。写真は9月撮影(2013年 ロイターAlexei Kudenko/RIA Novosti)

米国のような西側民主主義では、一国の指導者が何かを成し遂げるのに最適な時期は1期目の1年目と考えられている。選挙が終わったばかりで、野党はまだまとまっておらず、政権への期待もある。フランクリン・ルーズベルトが大統領就任100日でニューディール政策を制定させたのは今でも語り草だ。

一方、中国のような一党独裁の政府では事情が異なる。巨大な官僚体制の舵を取るのには時間がかかるからだ。重要なのは権力移行に伴うリスクを最小限に抑え、コンセンサスをゆっくりと築き上げることだ。しかし、習近平国家主席はこうした世間一般の考えが間違いであることを示しつつある。就任わずか6カ月で、すでに前任者の胡錦濤氏をはるかに超えることを達成しようとしている。

中国の指導者らは習氏の国家主席就任に当たり、政策を実行しやすい環境を用意した。共産党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会は、メンバーが9人から7人に減った。習氏は就任後数カ月で改革への道筋を付けた。銀行システムの抜本的改革と不良債権の洗い出しに取り組み、汚職対策を通じて国営企業や地方政府の幹部らの説明責任を高めた。また、報酬制度の改定や大気汚染の規制導入によって、製品の安全性や環境を改善させた。さらに、上海に自由貿易試験区も設置した。

やるべきことはまだ多いが、習氏はこうした仕事に取り組む意欲を見せる。政治局常務委員で党内序列4位の兪正声氏は先に、11月9─12日に開催される中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)で「前例のない」政策変更などを討議すると述べ、さらなる改革を進めると明らかにした。

では、前例のない改革とは一体どういうものだろうか。私が考えるのは、例えば金利自由化や人民元の交換性向上を合わせた施策や、資本勘定の自由化といった金融面での具体的な公約だ。加えて、中国独特の戸籍(戸口)制度の変更が発表されるのではと考える。これにより、農村部から都市部へ2億5000万人の移動が促進される。

また、特に地方レベルでの税制改革への取り組みも非常に重要だ。地方政府の債務は急拡大しており、税制改革は事態の改善と財政破たんのリスクを軽減する。

このほか、大気汚染に関する規制は既に発表されているが、さらなる環境対策が期待される。複数の研究によると、石炭燃焼による中国の大気汚染は、平均寿命を5歳ほど縮めている。習氏が、石炭から環境負荷の低い代替エネルギーに切り替える必要性をこれまで以上に明確に表明しても驚きではない。

こうしてさまざまな点を挙げてきたが、三中全会で提案される可能性が限りなく小さいものが1つある。それは政治改革だ。

中国ではこのところ、反体制的な政治家やメディアへの取り締まりを強めており、重慶市の元トップ薄熙来氏をめぐる事件もその一例だ。中国の指導者らは、ゴルバチョフ元ソ連大統領を戒めの教訓としているように見える。つまり、大胆な経済改革と同時に政治改革を進めるべきではないということだ。毛沢東思想の手法である「自己批判」を習氏が最近復活させたことは、同氏が政治面では西洋的な自由主義者でないことを明確に示している。これは、共産党という枠から逸脱しない改革だ。

ただ、中国の政治エリートたちが巨大化した同国経済の中で動きがとれなくなる状況で、政治改革はどうしても必要になっている。米経済誌フォーチュンが発表した2012年の世界企業500社番付では、中国の国営企業65社がランクインした。こうした企業を動かすのは最も影響ある政治家たちで、政府はそうした企業をただ民営化することはできない。なぜなら、事業と政府は一体だからだ。しかし、それら企業も中国が国際的に競争力を持ち続けるために、効率化を進め、汚職を減らさなくてはいけない。

経済改革は大きな挑戦であり、習氏が現時点では抑えている政治的変革を求める声はいずれ高まるとみられる。それはリスクに違いないが、得られるメリットもはっきりしている。政府が介入せずとも持続可能な、効率的で活力に満ちた経済だ。

習氏は既に前指導部よりも多くのことを、はるかに短期間で成し遂げた。しかし、習氏は今、改革のペースが遅すぎれば加速を求める怒りの声が上がる一方、速すぐれば経済が不安定化しかねないという難しい局面に立たされている。来たるべき三中全会では、同氏が進めようとする改革のスピードについて何らかのヒントがあるだろう。

[1日 ロイター]

*筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of theFree Market」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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